迷える若者達、そして大人達
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この廃屋で僕たちは生まれ変わる。
不安の時代をシェアする男女4人の群像劇。
大不況下のブルックリン。
名門大を中退したマイルズは、霊園そばの廃屋に不法居住する
個性豊かな仲間に加わる。
デブで偏屈なドラマーのビング、
性的妄想が止まらない画家志望のエレン、
高学歴プアの大学院生アリス。
それぞれ苦悩を抱えつつ、不確かな未来へと歩み出す若者たちのリアルを描く、
愛と葛藤と再生の物語。
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そもそも何でこの本を読もうと思ったのだったか・・・?
多分、どこかの書評で見かけたのだと思います。
私には初めての作家さん。
ミステリでない洋物は珍しいのですが。
ブルックリンにある廃屋寸前の家。
しかしなぜか電気も水道も通じたまま忘れ去られていて、
ならば家賃もかからないので住んでしまおうと、4人の若者達が集まります。
ここを見つけてシェアを呼びかけた、偏屈なドラマーのビング。
画家志望のエレン。
大学院生アリス。
そして、名門大学を中退したマイルズ。
本作は、これら若者の群像劇ではありますが、
一応のストーリーの軸となっているのがマイルズ。
彼には腹違いの兄がいたのですが、その兄が事故死。
そのことに責任を感じているマイルズはその苦痛に耐えかねて、大学を中退。
両親に何も告げずに突然姿を消して、よその土地で単純労働に従事していたのでした。
そんな彼がフロリダの地で愛する人を見つけ、
生きる希望を見出しのはいいのだけれど、
わけあってその地にいられない事情ができて、
ニューヨークに戻ってくることにしたのです。
そこで、ブルックリンのこの家に住むことになる。
作中は、この4人のみならず、マイルズの実の母や父、そして義母の視点にも立っています
老若男女、それぞれの立場は全く別々なれども、この中の誰にも共感してしまう・・・。
若いときばかりでなく、年齢を重ねて人の親になろうとも、
悩みのタネは尽きないですよね。
それぞれの抱える思いがリアルで、
我知らず、どの章もじっくり読み込んでしまいます。
皆が迷いながらも、割といい感じの終章を迎えるのか、
と思えたのですが・・・。
しかし、不意に投げ出されたような終わり方に、ちょっとショックを受けました。
めでたしめでたしなんて人生にはあり得ない・・・のかな。
<図書館蔵書にて>
「サンセット・パーク」ポール・オースター 柴田元幸訳 新潮社
満足度★★★★☆
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