映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ブータン 山の教室

2022年07月25日 | 映画(は行)

学ぶことの価値が光る

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ブータン首都・ティンプーに暮らすミュージシャンを夢見る若い教師ウゲン(シェラップ・ドルジ)。
そんな彼が、ブータンで最も僻地と言われるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡されます。

ヒマラヤ山脈、標高4800メートルにある人口56人の実在する村、ルナナ。
その地にたどり着くまでは、バスで一番近くの町まで1日。
そこからは徒歩でさらに一週間かかるのです・・・。
ヘトヘトになりながらたどり着いたウゲンを、村人は総出で出迎えます。

電気も通じておらずケータイの電波も届かないこの場所。
もうすっかり、こんなところで教師なんてできないと思うウゲンでしたが、
先生の到着を心待ちにし、勉強したいと思う子どもたちの圧倒的な熱意に負けて授業を開始。
そしてウゲンは、村人や子どもたちと過ごすうちに、自分の居場所を見出していくのです。

ウゲンの顔つきが次第にイキイキしたように変わっていく様がみごとでした。

ブータンといえば、国民の幸福度が世界一高いといわれています。
とはいえ、都会に住むウゲンは、この国を出てオーストラリアに移住し、
ミュージシャンとして生きていきたいと思っていたのです。
ブータンとはいっても、いかにも今時の若者という有り様は、
もはや欧米や日本となんの違いもないわけですね。

けれど彼はルナナ村で、これまで想像したこともない世界を見ます。

貧しい村の学校は、かろうじて建物はあるけれど、
黒板も教材もなくて紙すらも不足。
そんな中で、子どもたちは目をキラキラとさせて意欲的に学ぼうとします。
村人たちも教育こそが将来のこの村を変えるかも知れない、と望みを抱いているのです。
だから教師にも精一杯の敬意を表して、大事にもてなします。
まさに教育の原点ですね。

標高4800メートルといったら富士山より高い。
そんなところで一生を過ごすのだなあ・・・。
風景はあきれるほどに雄大で美しい。

いいものを見ました。
けど私はエンドロールの後に、ほんの一コマでいいので、
次の春にウゲンがこの村に戻ってくるシーンが欲しかった・・・。
そうはならないのですか・・・、やはり・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「ブータン 山の教室」

2019年/ブータン/110分

監督・脚本:パオ・チョニン・ドルジ

出演:シェラップ・ドルジ、ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ、ケルドン・ハモ・グルン、ペム・ザム

 

山奥度★★★★★

満足度★★★★.5

 



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