映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

きみの鳥はうたえる

2020年04月04日 | 映画(か行)

早朝の函館の空気感がよく似合う

* * * * * * * * * * * *


佐藤泰志さん原作の映画作品はほとんど見ているつもりだったのですが、
これは見逃してしまっていました。
原作では東京が舞台なのだそうですが、本作では函館に舞台を移しています。
佐藤泰志さんと来れば、やはり函館でなくては・・・!

函館郊外の書店で働く“僕”(柄本佑)は、失業中の友人・静雄(染谷将太)と同居しています。
“僕”は職場の同僚・佐知子(石橋静河)と恋仲になり、
それから3人は夜通しつるんでお酒を飲み、踊り、笑い合うことが多くなっていきます。
一見ただの気の合う友人関係。
けれども、いつしか静雄と佐知子の心も接近していき、
何か微妙なバランスの上に立つ関係となっていきます・・・。

名前の出てこない“僕”は、平気で仕事をさぼり、
店長と関係のある佐知子ともごく気安く付き合い始めます。
一見軽くていい加減でテキトー。
でもつまりこれは実のところ本来のナイーブさを包み隠す殻でもあるようです。
そして又時には暴力性を爆発させたりもする。
本心がわからなくて、ちょっと付き合うにはやっかいなタイプかも。
そんな役柄に、柄本佑さんがまた、ピッタシハマってはおりますが・・・、
やっぱり私は「尾高さん」の柄本さんがいいわ~♡

一方、石橋静河さん演じる佐知子が魅力的。
これ、下手をすると男から男を気ままに渡り歩く尻軽女になってしまいそうですが、そうではない。
しっかりと自分を持って、誰にもこびずに、自分なりの「愛」がある感じ。
これはいい。

夜明けまで遊び歩いて、始発電車の走り始める函館の閑散とした町をよろよろと歩く若者たち。
将来は見えない。
自分の心も人の心も見えない、あえて見ない。
友人たちと遊び歩くことで孤独をなんとか紛らわそうとする・・・
こんな閉塞感でいっぱいなのが、やっぱり佐藤泰志さんワールド!



最後のシーンで佐知子は“僕”に向かって何を言いたかったのか。
いろいろ考えてしまいますね。


ところで本作中の柄本佑さんは松山ケンイチさんの雰囲気にも少し似ていて、
そうすると“僕”と静雄の同居というのはつまり、「聖おにいさん」のキリストと仏陀だ!! 
なはは、それも悪くない。
おにいさんたちが「なんでやきとりなのに豚なんだ」とか言いながら
ハセガワストアのやきとり弁当を食べるシーンなんて想像してしまい・・・
いいわあ~。

<WOWOW視聴にて>
「きみの鳥はうたえる」
監督・脚本:三宅唱
原作:佐藤泰志
出演:柄本佑、石橋静河、染谷将太、萩原聖人

函館密着度★★★★★
閉塞感★★★★☆
満足度★★★★☆

 



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