映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

約束の地

2015年12月10日 | 映画(や行)
時を超えた幻想か???



* * * * * * * * * *

35ミリフィルム、四隅が丸い変形スタンダードサイズ、
長回しのワンカットという風変わりなスタイルの本作、
しかし風変わりなのは見た目だけではない。
内容も一筋縄では行きません。



1882年パタゴニア。
デンマーク人エンジニア・ディネセン大尉(ビゴ・モーテンセン)は、
アルゼンチン政府軍の先住民掃討作戦に参加しています。
ある時、野営地に共に来ていた彼の娘インゲボルグが若い男と共に姿を消してしまいます。
ディネセンは、娘を連れ戻そうと後を追いますが、
共に逃げた若い男が重症をおって倒れているのを発見。
しかし、娘はやはり見つからない。
いつしか馬も失い荒野をさまよい歩くディネセン。
そんな時、一匹の犬に導かれた先で、不思議な体験をするのです・・・。



約束の地とは、この国アルゼンチンの伝説で
幸福が約束された「ハウハ」の地のこと。
誰もがそこを探し求めるけれども、たどり着いたものは誰もいないという。
私、何の予備知識もなく本作を見たので、本作の時代背景がよくわかっていなかった。
本作のリサンドロ・アロンソ監督はアルゼンチンの方ですもんね。
南米で先住民がスペイン人などに追いやられ抹殺されていく、
かろうじてそのような歴史を思いうかべながら見ていました。
いづれにしても「人権」など尊重されることがない野蛮な時代。
しかし、物語は予想を裏切り、そのような歴史を離れて、
ただひたすらディネセンが荒野をよろよろと娘を探しさまようシーンばかりが延々と続いていきます。



いつしか現実と幻想が入り乱れ、時空をも超えていく・・・。
驚かされます。
これはそういう物語だったのか!
結局彼が出会ったのは誰だったのだろう。
インゲは生き続けたのか、そこで命絶えたのか、
そもそもすべてが、現代を生きる彼女の幻想だったのかも。
犬、水たまり、おもちゃの人形・・・。
これらの意味するものは・・・?
よくわからないから、ついいろいろ考えてしまう。
印象深い作品です。



本作、殆ど波の音や風の音、鳥のさえずりや草を踏み分ける音・・・、
そのような身の回りの音があるだけなのですが、
途中星空を見上げて夜を過ごすディネセンのシーンで初めて音楽が流れます。
ほんのひととき、彼を癒やすかのように流れる静かな調べ。
(この音楽はビゴ・モーテンセンの自作自演だそうです!)
音楽が入るもう一つはラストシーン。
ラストシーンでもまた驚かされますよ!!

約束の地 [DVD]
ヴィゴ・モーテンセン,ヴィールビョーク・マリン・アガー,ギタ・ナービュ
ポニーキャニオン


「約束の地」
2014年/アルゼンチン、デンマーク、フランス、メキシコ、アメリカ、ドイツ、ブラジル、オランダ/110分
監督: リサンドロ・アロンソ
出演:ビゴ・モーテンセン、ビールビョーク・マリン・アガー、ギタ・ナービシュ

幻想性★★★★☆
満足度★★★★☆


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