亡き母に会いたくなる・・・
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大好きな祖母を亡くした8歳の少女ネリー。
両親と共に、祖母が住んでいた森の中の一軒家を片付けるため、
数日をそこで過ごすことになります。
少女時代をこの家で過ごした母は先に帰ってしまいましたが、
残されたネリーは森を散策し始めます。
そして、母マリオンと同じ名前を名乗る8歳の少女と出会います。
少女に招かれ、彼女の家を訪れるのですが、そこは、「おばあちゃんの家」でした・・・。
つまり、ネリーが出会ったのは8歳の少女時代の母マリオン。
そして彼女と共に行ったのはその時の家。
そこには、マリオンの母、つまり先日亡くなった大好きなおばあちゃんが、
母マリオンと同じくらいの年代で暮らしているのです。
どのような時空の歪みでそんなことになったのか。
本作はSFではないので、そんなことの説明はありません。
そして、少女は周囲の状況から自分が体験していることを本能的に理解するのです。
私は思う。
自分と同じ年代の母親と会って話をするというのは、
なんという幸せでありましょうや・・・。
母と娘。
どうしても互いの間にはほんの少しのミゾがあったりするものです。
でも、同じ年同士だったとしたら・・・?
ネリーは過去を見て、マリオンは未来を見る。
心の有り様はほとんど同じ。
共に無邪気に遊びながら、真に理解できる相手にようやく会えたような、
そんな気がするのではないでしょうか。
こんな時がいつまでも続かないことは互いに分かっている。
しばらくすれば2人はまた出会うことになるのだけれど、
その時はもう、こうして通じ合うことはないのだろう。
それもわかりながら迎える別れの時間のなんと切ないこと。
ネリーにとっては、おばあちゃんと言葉を交わす最後の時でもありました。
「さようなら」の言葉が温かく淋しく響きます。
私、これを見た後に無性に亡き母と会いたくなってしまって、
淋しく切ない気持ちでいっぱいになってしまいました・・・。
少女時代の母ではなくて、今の私と同年代の母と会ってみたいです。
<シアターキノにて>
「秘密の森の、その向こう」
2021年/フランス/73分
監督・脚本:セリーヌ・シアマ
出演:ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、
マルゴ・アバスカル、ステファン・バルペンヌ
郷愁度★★★★★
満足度★★★★☆
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