「太い」彼女の生き方
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須藤が死んだと聞かされたのは、小学校中学校と同窓の安西からだ。
須藤と同じパート先だったウミちゃんから聞いたのだという。
青砥は離婚して戻った地元で、再会したときのことを思い出す。
検査で行った病院の売店に彼女はいた。
中学時代、「太い」感じのする女子だった。
五十年生き、二人は再会し、これからの人生にお互いが存在することを感じていた。
第32回山本周五郎賞受賞の大人のリアルな恋愛小説!
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まさに、大人のリアルな恋愛小説という触れ込みにふさわしい物語です。
青砥と須藤は中学の同級生。
その時青砥は須藤を「太い」と感じていました。
決して太っているということではなく、スリムな体型。
でも、まだ中学生というのに「自分」を見極めて、
自立している、何か覚悟が決まっているというような雰囲気。
でもその時に好きだと告白した青砥は、あっさり振られたのでした・・・。
そんな二人が50歳になって再会します。
双方バツイチ。
どちらももう恋愛なんて・・・という思いもあって、
時々会って、飲んだり食べたりしながら他愛のない話をするようになります。
そのままで十分という思いが双方にはあったのですが、
関係が変わってきたのは、須藤の病が発覚してから。
これが直腸がんで、ストーマすなわち人工肛門を装着するという、
大変な出来事がかなりリアルに語られます。
妹の他には頼る者もなく、経済的にも厳しい須藤に、
青砥はしっかりと寄り添い、ついにはプロポーズをするのですが・・・。
その先の須藤の行動と運命には、心が揺り動かされます。
まさに「太い」。
凜として強い・・・。
でも、本当はもっと弱くても良かったのでは、と思ってしまったりもします。
強烈な印象を残す、まさに大人の恋愛です。
「平場の月」朝倉かすみ 光文社文庫
満足度★★★★★
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