世界は変えられないけれど、心は変えられる
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恋人に騙され、仕事もお金も居場所さえも失った25歳のエミリ。
15年ぶりに再会した祖父の家に逃げ込んだものの、
寂れた田舎の海辺の暮らしに馴染めない。
そんな傷だらけのエミリの心を救ったのは祖父の手料理と町の人々の優しさだった。
カサゴの味噌汁、サバの炊かず飯。
家族と食卓を囲むというふつうの幸せに触れるうちに、
エミリにも小さな変化が起こり始め…
胃袋からじんわり癒やされる、心の再生を描いた感動作!
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じんわりと、癒やしのストーリー。
恋人も仕事もお金も居場所も・・・、何もかもを失ってしまった25歳エミリ。
折り合いの悪い母親の元にも行けず、
15年ぶりに会う祖父の家に「逃げ」込みます。
寂れた海辺の田舎町。
祖父は何も言わずにエミリを受け入れ、手料理を振る舞ってくれます。
なんとも心許なく、身の置き所もない田舎暮らし。
けれど、家事や食事の支度を手伝ったり、犬の散歩に行ったり、
祖父と共に釣りをしたりする内に、次第にエミリの心にも変化が・・・。
特に、おじいさん愛用の包丁を研ぐところから始まって魚をさばく練習。
実に本格的!
そしてまた、そうして丁寧に下処理して作られる料理のなんとおいしそうなこと。
表題の「小さな包丁」というのは、
おじいさんがその都度丁寧に研いで長年使ったために
小さくなってしまった出刃包丁のことなのです。
出刃包丁とは、それだけ聞くとなんだか物騒な感じですが、
それでこんなにも心を癒す物語を紡げるとは、さすがです。
エミリは自身の母をずいぶんひどい母であり女であると思っていました。
でもこのおじいさんに育てられたわけなのに、何故そんな・・・?
というのが読みながら感じた疑問。
でも、一応そうなってしまった理由も描かれていました。
親子といえども、実のところのことは話を聞かなければわからないものですね。
起きてしまった事象は変えることはできないけれど、
それを受け取る気持ちのありようは変えることができるのです。
何かに行き詰まって落ち込んだときに、
ちょっと一休みしてみれば、別の考え方が見つかるのかも。
<図書館蔵書にて>(単行本)
「エミリの小さな包丁」森沢明夫 角川書店
満足度★★★★☆
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