映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

パーフェクト・センス

2013年02月28日 | 映画(は行)
生きていくために究極に必要なもの



            * * * * * * * * *

まずは嗅覚、そして味覚、聴覚。
人々の五感が一つ一つ失われていくというストーリーです。
だからパニック作品と思えるのですが、これが一味違う。
一つの寓話、あるいはほとんどポエムのようにも思えます。



感染症を研究するスーザン(エバ・グリーン)が、
まず嗅覚を失う人が多発しているという情報を得るのですが、
その原因や対応を研究するまもなく、
あっという間に全ての人にそれが広がってしまいます。
一方レストランのシェフ、マイケル(ユアン・マクレガー)は、
嗅覚も味覚も失われた人々に、
なおも料理を提供しようと、工夫を重ねます。
そんな二人が出会い、心を通わせていくのですが・・・。



人々が五感を失う前に、ある種の感情が非常に増大されます。
例えば、嗅覚を失う前には悲しみが、
味覚を失う前には飢餓感が、
聴覚を失う前には怒りが・・・という具合。
パニックはむしろ人々のその感情の高まりによって引き起こされますが、
感覚を失ってからは淡々とその状況を受け入れ、
静かに元の生活に戻ろうと努力している。
それは不自然のようにも思われますが、意外とそんなものなのかもしれません。
自分一人が、ではなく誰もがというところがミソですね。
じたばたしても状況は変わらない。
ならば私たちは生きていくため、味がしようがしまいが、食べて行かなければならないし、
そのためには仕事もしなければならない。
そういう諦念が静かに漂うのです。
不思議な感慨が湧いてきます。
しかし、人類にはまたさらなる大きな喪失が襲いかかります。
この時にやってくる大きな感情の高まり。
それこそが、この先の試練に立ち向かうために、最も必要な物でした。



そこまで五感が損なわれて、果たして生きていけるものだろうか・・・、
と思いかけて、あの3重苦を乗り切ったヘレン・ケラーを思い出しました。
そんな時、私達はたった一人宇宙にほおり出されたような気がするかもしれません。
でも、すぐそばに誰かのぬくもりがあれば・・・
耐えて行けそうな気がする。
この先の人々は、おそらく助け合いいたわり合うことでしか生きながらえない。
生きていくために究極に必要な物を示されたような気がします。
まるでパンドラの箱の底に残った「希望」を見るようです。



ユアン・マクレガーのシェフ姿が素敵でした。
ジャン・レノよりはいいです・・・。

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「パーフェクト・センス」
2011年/イギリス/92分
監督:デビッド・マッケンジー
出演:ユアン・マクレガー、エバ・グリーン、ユエン・ブレムナー、スティーブン・ディレイン、デニス・ローソン
新感覚度★★★★★
満足度★★★★☆


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