映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

草原の椅子

2013年03月01日 | 映画(さ行)
人の心の中にはそれぞれの草原と椅子がある



            * * * * * * * * *

芥川賞作家宮本輝が阪神淡路大震災で被災したことをきっかけに
シルクロード6700㎞、40日間の旅を経て執筆したという同名小説の映画化です。
私が今作を見たのは、まあそれよりも
佐藤浩市さん主演ということのほうが大きかったのですが(^_^;)



バツイチで大学生の娘と二人で暮らしている遠間(佐藤浩市)は、
カメラメーカーの営業局次長。
仕事に誇りは持っていますが、中間管理職ということで、
上下の板挟みで辛いことも・・・。
まあしかし、普通のサラリーマンですね。
あるとき、おかしなきっかけから、取引先の家電店社長冨樫(西村雅彦)と“親友”となります。
そんな時、娘のバイト先との関係で
母親に虐待され、心に傷を持つ4歳の少年圭輔の面倒を見ることに。
そしてまた遠間は陶器店のオーナー貴志子(吉瀬美智子)に淡い想いを寄せたりします。
ある写真集をきっかけに、彼らは
「最期の桃源郷」と呼ばれるパキスタンのフンザへ旅立つことになります。
果てしなく広がる砂漠。
遠景には雪を抱く7000メートル級の山々。
そこで彼らは何を決意するのでしょうか。



映画はまず彼らがパキスタンについたところから始まります。
一見子連れの夫婦と祖父(?)と思えたのですが、
会話の端々からは、どうもそうではないことがうかがえる。
さて彼らの関係は・・・?
という謎から始まる本編。
彼らの出会いのきっかけもなかなかおもしろいのです。
で、驚いたのは佐藤浩市と西村雅彦が同じ年令・・・というところ。
これは役の上のでもそうなのですが、実際にもそうなのでした。
(双方1960年生まれ現在52歳)
すみません、西村さん。祖父だなんて言っちゃって。

それから、圭輔の母(小池栄子)が非常に怖かった・・・。
どこか壊れているんですよ、心が。
だからこその子供の虐待ではありますが。
鬼気迫る怪演。
こんな母親に子供を返せるはずがない。
けれど、安直なハッピーエンドに向かおうとしないところが、ちょっといいと思いました。
(でも結局は、そうなのか・・・?)
誰しも行き詰まり、決断に悩むことはありますよね。
そんな時に悠久の時を感じる大自然の中で、自分としっかり向きあうのもいいかもしれません。
でも、作中でも言っていましたよね。
結局は人の心のなかにそれぞれの草原と椅子がある、と。
別にパキスタンの山中である必要はないのかもしれません。
私は冨樫の故郷の島でも十分だと思ったのですけどねえ・・・。



ズシンと来るテーマながら、笑えるシーンも散りばめられていまして、
ゆったりと楽しめる作品でした。

「草原の椅子」
2013年/日本/139分
監督:成島出
原作:宮本輝
脚本:加藤正人、奥寺佐渡子
出演:佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子、小池栄子、AKIRA


シリアス・コメディのバランス度 ★★★★★
雄大さ★★★★☆
満足度★★★★☆


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2 コメント

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あこがれは羊飼いの娘です  (パール)
2013-03-01 23:31:25
地元のおじいさん(?)の出演シーンの撮影エピソードを 佐藤浩市さんが語られているのをテレビでみました。映画は観ていません。
原作は読みました。宮本輝さんはとても大好きな作家さんです。宮本作品を読むと、ちゃんと生きていこうと思います。

>悠久の時を感じる大自然 
そんな中で生きていけたらいいなと憧れますが、今年の冬の寒さに文句を言っている情けない私です。
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大自然 (たんぽぽ)
2013-03-02 19:54:35
>パールさま
・・・そうですね。自然は時には猛威をふるい、簡単に人の命を蹴散らしたりもします。
ただいまこちらは猛吹雪。
とんだひな祭りになりそう。
そんな風に人を寄せ付けない自然に、憧れというよりも畏敬の意を感じるのです。
このロケの時の、満天の星が素晴らしかったと私も何かで見たような。
この自然環境を、守って行かなければいけませんね。
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