「開かせていただき光栄です」皆川博子

18世紀ロンドンの混沌

 

開かせていただき光栄です―ＤＩＬＡＴＥＤ　ＴＯ　ＭＥＥＴ　ＹＯＵ―   皆川 博子 早川書房

 

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18世紀ロンドン。
外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。
四肢を切断された少年と顔を潰された男。
戸惑うダニエルと弟子たちに治安判事は捜査協力を要請する。
だが背後には詩人志望の少年の辿った恐るべき運命が……
解剖学が最先端であり偏見にも晒された時代。
そんな時代の落とし子たちが可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む、
本格ミステリ大賞受賞作。
前日譚を描く短篇「チャーリーの災難」と解剖ソングの楽譜を併録。
解説/有栖川有栖

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少し古い作品ですが、本格ミステリ大賞受賞作。
皆川博子さんは、「死の泉」で魅了されたので、まあ、間違いはないでしょうと思いまして。

 

舞台は18世紀ロンドン、外科医ダニエルの解剖教室。
なにしろこの時代性が面白いですよね。
人体解剖の知識はある程度進んで来ているけれど、
まだまだタブー視されることも多い。
人には忌み嫌われる解剖だけれど、これによって徐々に人体の仕組みが解き明かされていく。
そして「検屍」の技術もまた。
ある日、この解剖教室の暖炉の奥から四肢を切断された少年の死体が発見されます。
そしてまたさらに、顔を潰された男の死体も。
解剖対象として運び込んだ覚えもない、あるはずのない死体。
戸惑うダニエルとその弟子たち。

この不可思議な事件に挑むのは、盲目の治安判事、ジョン・フィールディング。

当時ロンドンの人々の暮し、解明されていく科学、こうしたこともとても興味深いですし、
ダニエル師の個性豊かな弟子たちもまた魅力的。

中でも、特に優秀で美形なエドワード・ターナーと、
天才的素描力をもつ少年・ナイジェルがひときわ異彩を放ちますが、
やはり、ストーリー中でも重要人物なのであります。

文句なく楽しめる一冊。

「開かせていただき光栄です」皆川博子　早川文庫

満足度★★★★★