小津調のアメリカ、コロンバス
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モダニズム建築の宝庫として知られる、インディアナ州コロンバス。
この地で、高名な韓国人建築学者が講演ツアー中に倒れてしまいます。
そのため、息子・ジン(ジョン・チョウ)が呼ばれて、コロンバスを訪れました。
ジンは父親とはうまくいっておらず、建築に対しても複雑な思いを抱いています。
そんな彼が、この地で一人の少女と出会います。
地元の図書館でバイトとして働くケイシー(ヘイリー・ルー・リチャードソン)。
彼女は建築に興味があって、教授の講演も聴く予定だったので、
ジンの父親が倒れて入院中だったことも知っていたのです。
そんなことから、主に建築のことを語り合いながら、親しくなっていく二人。
コロンバスは小さな街で、若い人は大抵この町から都会に出て行ってしまいます。
でもケイシーが高校を出てからもここにとどまっているのは、
実は、薬物依存症の母のためなのでした。
美しい街で、未来へ羽ばたきたいと願いながらも、母のために身動きならない・・・
そんな少女のみずみずしい心の揺れが繊細に描かれています。
私、本作はなんの予備知識もなく見始めて、
カメラが固定されて人物を長く映し出すようなシーンが多いことから、
先日少しかじった小津安二郎監督っぽい、などと思いました。
そして、その後、本作の解説を読んで、納得しました。
そもそも、このポスターにもありますね、
小津監督へのオマージュ作品である、と。
本作の監督、コゴナダ氏なのですが、
これは、アルフレッド・ヒッチコックや小津安二郎についてのドキュメンタリーを手がけた氏が、
小津映画に欠かせない脚本家、野田高梧にちなんだ名前であるとのこと。
あ、つまり、コーゴ・ノダ、か。
本作で、小津監督を感じるのは当たり前なのでした。
気づかなかったら恥ずかしいくらいでした。
モダニズム建築は、建築された当時はいかにも奇抜で斬新だったのだろうと思われます。
けれど今はかなり老朽化してきています。
だからこそ、その風合いと、周囲の緑との調和がとても美しく感じられます。
今となってはさほど「斬新」ではなく、生活に溶け込んでいるようでもありますね。
私も、この街に行って、モダニズム建築の見学ツアーに参加してみたくなりました。
<Amazon prime videoにて>
「コロンバス」
2017年/アメリカ/103分
監督:コゴナダ
出演:ジョン・チョウ、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ミシェル・フォーブス、
ローリー・カルキン、パーカー・ポージー
小津調度★★★★☆
清廉さ★★★★☆
満足度★★★★☆
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