映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

殿、利息でござる!

2016年05月21日 | 映画(た行)
無私の心



* * * * * * * * * *

江戸中期、仙台藩で実際にあったことを元にしたストーリーです。


寂れた宿場町の吉岡宿。
ここでは、お上の物資を隣の宿場から受け取り、次の宿場へ運ぶ
「伝馬(てんま)役」が課せられていました。
このための馬を買って育てたり、人足を雇ったりという経費は
まるごと住民で負担しなければなりません。
この重税に耐え切れず、破産や夜逃げが相次ぎ、
そうすると住民が減ってますます一人あたりの負担が大きくなるという悪循環。
この状況をなんとかしなければと、
造り酒屋の穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は考えていたのです。
そんな時、お茶づくりをしている菅原屋篤平治(瑛太)が
「大金を藩に貸し付ければ、その利息で伝馬役の費用がまかなえる」
と思いつきます。
けれども、それだけの利息を生み出すためには千両(=約3億円)を貸し付けなければならない。
そんな大金があれば苦労しない。
夢の様な話・・・。
篤平治は笑い話で終わらせようと思ったのですが、
十三郎は本気になってしまった。
一人ならムリだけど、何人かで出し合えばいいんじゃないか、と。



しかし、利息を伝馬役に回すのであれば、いくら出資したとしても自分の懐には全く入ってこないのです。
寄付したのと同じですね。
寄付控除もないし・・・。
そんなお人好しがいるわけない・・・と普通思うのですが、
いやいや、いるんですよ、申し出をする人が。
しかも、自分の名を売るために出資するわけではないから、出資者の名前は公表しない
という約束まであるのに。
この辺り、西村雅彦さんなど、いかにも不服そうだったんですけどね。
そして意外にも町で一番のドケチ・守銭奴と噂されている金貸しの浅野屋甚内(妻夫木聡)が、
あっさりと大金を差し出した。
実はこの男は十三郎の実の弟。
十三郎は長男なのに養子に出されていたわけですが、
そのことに少なからずこだわりを抱いていたのです。
だから自分の発案なのに弟があっさりと自分より多くのお金を差し出したことが面白くない。
単に資金集めのストーリーではなくて、この家族の確執というところがまた重要なポイントなのです。
ラストに明かされる浅野屋の秘密には驚かされ、そして胸が熱くなります。



足りなければ自分の家の家財を売り払ってでも資金を差し出す。
みな必死。
「無私」の心は尊いです。
しかしつまりは宿場町が潰れてしまえば、自分たちの生活も成り立たない。
だから、実は共同体を生かし自分も生きるということですよね。



財政不足の藩が銭(銅銭)を作った。
その銭を作るためにも費用がかかる。
また、多量な銭が流通すると金(=小判)の価値が変わってしまう、
という経済学のお勉強もさせていただきました。
江戸時代を生きるのにも、そういう知識が必要だったのか・・・。
私はダメだワ・・・。



出資者の名前は明かさないという決まりは守られたのですが、
お寺の文書に記録があって、それで、今ではその方々の名前がわかっているのです。
穀田屋さんの家は今も酒屋さんを営んで残っているとか。
いやあ、歴史ですねえ・・・。
そうそう、仙台藩のお殿様役は、仙台出身お馴染みの羽生結弦くん。
最後のチョイ出なので、さほどの演技力も必要なしということで、
心憎いキャスティングでした!!


「殿、利息でござる!」
2016年/日本/129分
監督:中村義洋
出演:阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、寺脇康文、きたろう、西村雅彦、松田龍平、羽生結弦、

歴史発掘度★★★★☆
無私度★★★★★
満足度★★★★.5


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