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「佐武と市捕物控 江戸暮らしの巻」石ノ森章太郎

2019年07月23日 | コミックス

石ノ森章太郎氏の真骨頂

佐武と市捕物控 江戸暮しの巻 (ちくま文庫)
石ノ森 章太郎
筑摩書房

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若き下っ引き佐武、盲目で剣の達人の市。
その二人が解決する江戸の難事件。
斬新な筆致と胸を打つドラマ。
マンガ史上に輝く最高傑作シリーズ。
江戸の風物を背景に、人々のこころの闇と生きる哀しさを描いた作品群を
セレクトした文庫オリジナル・アンソロジー。

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石ノ森章太郎さんの「佐武と市捕物控」は、
1966年~「週刊少年サンデー」、「別冊少年サンデー」に掲載されました。
私が以前読んで知っていたのはこちらの方ですね。
佐武と市のコンビで織りなす江戸の事件解決。
当時ではかなり渋くて、シビレました。
そしてその後、1968年に「ビッグコミック」が創刊され、
「佐武と市捕物控」はそちらへ舞台を移します。
こちらでは画風やテーマを一新し、ぐっと大人向けの物語となりました。
本巻はその「ビッグコミック」掲載の中から、
江戸の風物が丁寧に描かれているものを集めたアンソロジーとなっています。
裸体の女性や首の切断シーンなど描写も激しいですが、
大胆なコマ割りや情景描写、石ノ森章太郎氏が"やってみたかった"ことが
思う存分試されている感じがします。

私が好きだったのは・・・

「菊人形」
毎年美しい菊人形が飾られるご隠居さんの家。
今年はその中でも特に女性の菊人形が素晴らしい。
しかしなんとその人形は、ご隠居の孫娘の屍体を菊で飾り立てたものだった・・・。
ちょっとした猟奇殺人事件。
ご隠居は若くみずみずしい娘をそばに置くことで、
己の老いさらばえていく心や体の慰みと思っていたが、
あまりにも早く娘がその花を散らしていこうとするのが惜しくて殺したという・・・。
でも事の真相は、他にあったのです。
「老い」の心を描く、深~い作品。

「年の関」
大晦日の物語。
大晦日といえば借金取りがこれまでのつけをまとめて取り立てに来るというので、
いろいろな攻防戦があるようで、
市やんは借金取りと顔を合わせないように、
大晦日の夜というのに家に帰らず歩き回って時間を潰しているのです。
これぞ江戸の年の瀬。
そんな中、佐武の方はある事件の行方を追うことに余念がない。
その事件が回想として語られます。
そしてその犯人が、そろそろ家に帰ろうかという市やんとすれ違うのですが、
市やんのことですから、その男の殺気を感じ取ってしまう・・・。
うまいストーリー運びだなあ・・・。
やはりさすが巨匠です!


「佐武と市捕物控 江戸暮らしの巻」石ノ森章太郎 ちくま文庫
満足度★★★★☆



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