映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ムーンライズ・キングダム

2013年02月20日 | 映画(ま行)
私たちがなくした王国



            * * * * * * * * *

ウェス・アンダーソン監督独特の色調と、ちょっぴりへんてこな人々が織りなすドラマ。
今作も楽しいですよ。



1960年代ニューイングランド沖のニューペンザンス島という全長26㎞ばかりの小さな島。
12歳少女スージーは本が好きな孤独な女の子ですが、
問題児とされ、家族にとけ込めません。
一方、ボーイスカウトキャンプ中の同じく12歳サムも、仲間にうまく溶け込めないのです。
二人は1年ほど前から文通をしていて、
この日示し合わせて駆け落ちを決行。

二人がいなくなったことを知った島の大人たちは大騒ぎで、二人の捜索を始めます。
一方二人は、誰にも知られていない美しい入江“ムーンライズ・キングダム”で、
泳いだりダンスをしたり、初めてのキスをしたり・・・。
そんなうちに天候が怪しくなり、
島を前代未聞の大嵐と大洪水が襲う。


この色調や雰囲気。
アメリカにも“昭和”のノスタルジーがあると見えますね。
レコードプレーヤーにオープンリールのテープレコーダー。
パソコンもケータイもないことになんだかホッとさせられるような・・・。
メールではなくて、“文通”ですからね。


主役少年少女は新人ですが、
その脇を超豪華ベテランキャストが固めています。
島の警官にブルース・ウィリス。

ボーイスカウトの隊長にエドワード・ノートン。

どちらもちょっと頼りないトホホな感じなんですが、
こんな普通に人のよさそうなブルース・ウィリスも珍しい。
かと思えば、ティルダ・スウィントンは冷徹なお役人だし。



孤独な魂が寄り添った、少年少女の冒険譚。
だけど、今作はそれだけではないんですね。
そういう冒険心をなくして、毎日がくすんでしまっている大人たち。
決してその大人たちをあおってはいません。
まあ、大人とはそういうものなんだよ・・・という諦念が漂うような。
けれども大人は大人として、そういう子どもたちの向こうみずさや夢を守るべきものなのだ
・・・と言っているような気がしました。
私達“大人”がかつて持っていたそれぞれのキングダム。
もうそれを取り戻すことはできないけれど、
今子どもたちの持つキングダムは尊重しよう。
それこそが大人の分別である、と。
ボーイスカウトの少年たちも、自分達の非を悟って思わぬ行動に出ますよね! 
だから子どもたちっていいなあ~。



また、本作は音楽が面白かったですね。
言ってみれば今作、サムとスージーが主旋律を奏でている。
そして周りの人々が様々な楽器でそれぞれのパートを受け持ち、
ハーモニーを生み出し、全編で素敵なオーケストラとなっているのです。
大人ぶったサムとスージーの行動も見ものです。
得した気分になる一作。


「ムーンライズ・キングダム」
2012年/アメリカ/94分
ノスタルジー★★★★☆
冒険度★★★☆☆
満足度★★★★☆



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