映画と本の『たんぽぽ館』

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幸せパズル

2013年02月21日 | 映画(さ行)
自分自身の解放



            * * * * * * * * *


50歳の誕生日を向かえた専業主婦マリアは、夫と二人の息子と暮らしています。
まあ、一般的にいえば、満ち足りた生活。
しかし、本人はどこか満たされないようにも見受けられます。
その日、彼女は誕生日プレゼントにもらったジグゾーパズルに、意外な楽しさを感じます。
彼女は、パズル大会のパートーナー募集をしている人がいることを知り、
その人物の家を訪ねるのですが、思いがけず、裕福な独身紳士ロベルトと対面します。
二人はチームを組み世界選手権出場を目指すことに・・・。



ロベルト氏に才能を認められたマリアが、その帰り道に見せる満ち足りた表情。
まるで少女のように明るく輝いていて、素敵だと思いました。
家庭でのマリアは、常に妻であり、母であります。
夫も息子たちも自分を愛している。
そのことは間違いないと思うけれど・・・。
毎日毎日食事の支度をして、けれどただそれが当たり前と思われ、
得意技の料理を褒めてももらえない。
そんな中でどんどん自分の存在感が薄く思われてきていたのではないでしょうか。
ジグソーパズルに取り組むことで、
妻でも母でもない、一人の女としての自分、彼女はそれを見つけたのだと思います。
そうして彼女は自分自身を開放していくのです。



男女がチームを組んで一つのことをやり遂げようという時に、
親密になり心を通わせるようになっていくのは当然の事のように思います。
でもこれはやはりそうした情事の物語ではありません。
「そうあるべき」と規定されてしまった自分の枠を打ち砕くこと、
彼女にはそれが必要だったのだと思えます。
そうして見つけた“自分自身”を心のなかに持っていれば、
家庭生活もまた輝いて見えてくる・・・、
マリアはそのように回帰していくのではないでしょうか。
男性はどう見るかわかりませんが、私は好きなストーリーでした。



アルゼンチンの家庭事情。
作中で垣間見えるそれも、なかなか興味深いのです。
次男の彼女は東洋かぶれ。肉は食べない、菜食主義。
次男も感化され、一緒にインドに行くなどと言い出す始末。
マリアには馬鹿じゃないの?と思えます。
でもたぶん、このストーリー後の彼女は「勝手に、好きなようにすれば?」というでしょうね。



幸せパズル [DVD]
ナタリア・スミルノフ,アレハンドロ・フラノフ
アルバトロス


「幸せパズル」
2009年/アルゼンチン・フランス/90分
監督:ナタリア・スミルノフ
出演:マリア・オネット、ガブリエル・ゴイティ、アルトゥーロ・ゴッツ、ヘニー・トライレス、フェリペ・ビリャヌエバ
日常性★★★★★
満足度★★★★☆


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