映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

真夏の方程式

2013年07月10日 | 映画(ま行)
子どもとのやり取りが秀逸



* * * * * * * * * *


おなじみのガリレオシリーズ 映画では第2作目です。
美しい海辺の町、玻璃ケ浦。
そこでは海底資源の開発計画が起こっているのですが、
そのための自然破壊を懸念する町民へ向けて説明会が開かれています。
湯川はオブザーバーとしてその説明会に招かれ、この地を訪れます。
宿泊先はこじんまりした民宿「緑岩荘」。
湯川はそこで、一人の少年・恭平と知り合います。
ところがその矢先、旅館の近くで男性の変死体が発見される。
亡くなったその男は元捜査一課の刑事塚原。
恭平少年の「こんなところで死ぬのはあり得ない」というつぶやきに、
つい反応してしまう湯川。
警視庁絡みの事件ということで、岸谷刑事登場。
事件は16年前のある事件とのつながりを匂わせてきますが・・・・・・・・・。



そういえば私、本作の原作は読んでいなかったようです。
でもミステリなので、真相は知らないほうがいい。
とはいえ、本作はなんというのでしょうか、
ミステリ的要素よりも、
人々の心のつながりに焦点を当てたドラマというべきなのかもしれません。



まず、この舞台がいいですよね。
美しい海。
水中のシーンもたっぷり入れて、
TVでは出せない醍醐味を醸しています。
季節もまさに夏。
杏さんの泳ぐ姿も美しい!!



それとなんといっても、湯川准教授と少年の言葉のやり取りが楽しい!!
子供が嫌いと公言している湯川ですが、
本作では、なぜか近くにいてもジンマシンが出ないこの少年と、長く時を過ごします。
理科嫌いという少年に、科学の面白さを伝えようと、手間を惜しみません。
ペットボトルのロケット噴射実験、
しかも場所はこんなにも開放的な海、
というので、私達まで、ウキウキわくわくしてしまいますね。
しかもそのペットボトル実験は、
それ自体が目的ではなくて、あくまでも「手段」なわけです。
そこに又感動・・・。
湯川の、決して子供を甘やかさず、
あくまでも1対1の対等な立場で距離を置いて・・・
という接し方には好感を覚えます。
思うに湯川の子供嫌いというのは、
好奇心の塊で後先考えずに行動してしまうという子供ならではの部分が、
自分とよく似ていて、
そのことに反発を覚えてしまうからなのでは
・・・などと思ったりします。



いつもは人の感情には興味がないという湯川ですが、
今回ばかりは人の感情について想像を巡らせずにはいられなかったようです。
人を愛し大事に思うがゆえに、
罪を犯し、秘密を抱え込まなければならなかった人たち。
そして、いつか必ずこの事件の真相を知るという
大波を乗り越えなければならない少年に対しての危惧。
しかし、それはやはり彼らしく、
「自分の力で乗り越えなければならないのだ」と、
そっと背中を押すのみ。
少年にとって、非常に楽しく貴重な夏休みではあったけれど、
否応なく大人になることを強いられる夏休みでもあった・・・。
ほろ苦い余韻を残す傑作です。

「真夏の方程式」
2013年/日本/129分
監督:西谷弘
脚本:福田靖
原作:東野圭吾
出演:福山雅治、吉高由里子、北村一輝、杏、前田吟、風吹ジュン

夏の情景★★★★★
子どもとの掛け合い★★★★☆
満足度★★★★★


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