映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

82年生まれ、キム・ジヨン

2021年11月17日 | 映画(は行)

女ゆえの生きづらさ

* * * * * * * * * * * *

チョ・ナムジュのベストセラー小説の映画化です。

出産を機に仕事を辞め、家事と育児に追われるジヨン(チョン・ユミ)。
妻・母として生活する中で、閉じ込められているような感覚に襲われます。
そんな気持ちが高じて、時には他人が乗り移ったような言動をするようになるのですが、
その時のことを本人は覚えていません。
夫のデヒョンは、そのことをジヨンには告げられず、
病院行きを妻に勧めるのですが、本人が異常を感じていないので行こうとしません。
仕事に就きたい妻の気持ちを汲んで、育児休業をとろうかとも思うのですが・・・。

ジヨンは出産のために仕事を離れて家庭に入ります。
それ以前は仕事もバリバリこなし、優秀な成績を収めていました。
それが今はほとんど家庭にこもりっきりで、社会から隔絶されたような気持ちになるのです。
そしてまた、ジヨンの気持ちが塞ぐのはそのことばかりが原因ではありません。

生まれたときから、家庭の中では男の子ばかりが優遇される。
女は家事をするのが当たり前。
たとえ仕事について共働きとなっても、家事の負担は女性にばかりのしかかります。

本作を見ているうちに、一時私も胸の奥で虚ろが広がりそうになりました。
まあ、普段から男女差別を厭い、フェミニズムよりの考えをする私ですが、
実生活の中ではすでに諦めきって受け入れていることが多いです。
というか、ほとんどがそうなのか。
でも、胸の奥ではやっぱり、変だ、おかしい、
なんで女ばかりがこんなふうに扱われるのだろうという思いがたまりにたまっていて、
どうも本作でそこを刺激されてしまうようなのです。
すべての女性は、明日のジヨンになり得ると思います。

女であることの生きづらさ。
・・・少しでも、このようなことが少なくなっていく世の中であってほしい。
しかるに、女に教育は不要とか、
女は顔も髪も人前にさらしてはいけないとか、
女はスマホを持ってはいけないとか、
ましてや性器切除・・・
こんな宗教に縛られる国もあるということに戦慄せざるを得ません。
人類の半数は女性であるのに、こんな差別がなぜ今もって行われているのか。

男は自分たちが少しでも優位な立場に立ちたいと思うからなのか・・・。
富める者はそれなりに、貧しい者ならことさらに・・・。
女を自由にしたら、たちまち自分たちの優位が脅かされることを知っているからなのかも・・・。

まあそれにしても、ここの夫・デヒョンは頑張ってくれていたと思います。
十分ではないにしても、育児を手伝おうとはしていたし、
社内の立場も出世の見込みも捨てて、育児休業をとろうとさえしてくれました。

一方、デヒョンの実家の母は典型的な旧態依然とした母で、
娘は二の次、長男が何より大切。
息子が育児休業をとろうとしているなんて、あんたはなんてことをしてくれるんだ、
とジヨンを責め立てます。
女の敵は女でもあるんですね。だから難しい・・・。

日本はこんな韓国の状況よりは少しマシ?とは思って見ていましたが、
いやいや、テレビドラマなどではそうでしょうけれど、
実生活では同じですよね。

 

<WOWOW視聴にて>

「82年生まれ、キム・ジヨン」

2019年/韓国/118分

監督:キム・ドヨン

原作:チョ・ナムジュ

出演:チョン・ユミ、コン・ユ、キム・ミギョン、コン・ミンジョン、キム・ソンチョル

女性の生きづらさ度★★★★★

問題提起度★★★★★

満足度★★★★☆

 



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