映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「クロス・ボーダー」サラ・パレツキー 

2021年11月11日 | 本(ミステリ)

弱者の味方、ヴィクの奮闘

 

 

 

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私立探偵ヴィク、4年ぶりの帰還!

小さな仕事をさばきながら、何とか糊口をしのいでいる探偵ヴィクのもとに、
一本の電話がかかってくる。
それは親友ロティの又甥が殺人容疑をかけられているというものだった。
彼を助けるために調査を始めた彼女だったが、そこにまた別の事件が持ち込まれる。
ヴィクの姪リノが失踪したというのだ。
期せずして彼女はふたつの事件を同時に追うことになるが……
弱きを助け強きを挫く、V・I・ウォーショースキー堂々の帰還! (上)

事件の捜査を進める中、ヴィクはリノの妹とともに謎の男たちに襲われてしまう。
傷を負った彼女はボロボロになりながらも
自身の追う殺人事件と失踪事件が互いに関係している可能性に思い至る。
そしてそれらを結びつける鍵を握っているのは、彼女の元夫ディックだった!
彼の周辺を調査していくうちに華やかなシカゴの街の裏に潜む巨悪の姿が見え始め……。
複雑な事件に立ち向かうヴィクの雄姿を描くパレツキーの会心作! (下)

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久しぶりに探偵ヴィクの物語。
前作からは4年ぶりですか。

今回はヴィクの元に一度に二つの依頼が舞い込みます。
依頼というよりも、身内がらみの事件なのですが。
一つはヴィクの親友ロティの甥が殺人容疑をかけられているが
彼が犯人のわけもなし、なんとか調べて解決して欲しいというもの。

そしてもう一つは、ヴィクの姪リノ(正しくは別れた旦那の姪)が失踪したので、
行方を捜して欲しいというもの。

全く別々のことながら、これがまあ物語なので、
いつしかこの話は根っこの方でつながりを見せ始めます。
巨悪に敢然と挑むヴィクはやっぱり頼もしい!!

 

本作の大きなテーマは移民問題。
訳者のあとがきでも引用されていますが、
「おまけに、アメリカ大統領が移民を迫害しはじめ、
怯えた羊みたいに集めて逮捕するものだから・・・」
などという文章もあって、著者はかなりトランプ大統領に批判的だったようです。
とりあえずは政権交代で、こうした様相は少しは変化があったのでしょうか・・・?

 

さて、これも訳者が指摘していますが、私も気づいていました。
ヴィクは物語上で年を取ることを止めたようです。
40を過ぎた頃からヴィクは、自分の年齢を自覚するようなセリフが多かったのですが、
近頃では、若くはないのは確かながらも、詳細な年齢は描かれていません。
サザエさんやコナンくんと同じ世界の住人になったようです。

まあ、それはそうですよね。
いくら何でも50代のヴィクなんて、アクションはやはり無理でしょう。
でもそのおかげでミスタ・コントレイラスと
二匹のワンコたちがいつまでも元気なので、そこは嬉しい。

そしてまた何より、前作で長年の恋人ジェイクと別れたヴィクですが、
本作でいい人がまた現れました! 
今度は考古学者でオリエント研究所所長のピーター・サンセン。
恋愛沙汰が様になるのはやはり40代くらいまで・・・、かな。
彼は、ヴィクの勇ましさを気に入ったようなので、
これは長持ちするかも、いえ、して欲しいです。

次作も楽しみです。

「クロス・ボーダー」サラ・パレツキー 山本やよい訳 ハヤカワ文庫

満足度★★★★☆



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