ドイツに占領された英国の島で
* * * * * * * * * * * *
第二次世界大戦中イギリス本土にドイツ軍は上陸しませんでしたが、
イギリスで唯一ナチスドイツに占領された島、それがイギリス海峡のチャンネル諸島です。
本作はその中のガーンジー島が舞台となっています。
終戦後間もなく、ロンドンに住む作家ジュリエットは、
戦時中ガーンジー島で始まったという「読書会」に興味を持ちます。
そこで、その読書会に関する記事を書こうと思い立ち、島を訪ねます。
しかし、読書会の創設者といわれるエリザベスの姿がありません。
誰もがそのことに触れるのを嫌がっている。
美しくのどかな島で温かな読書会の人たちと交流しながら、
彼女は隠された島の出来事をたどります・・・。
そもそもその「読書会」というのは、ドイツ軍の占領下にある島で、
夜間外出禁止されていたにもかかわらずご近所の親しい仲間で集まり、
禁断の「豚肉」を食べ、お酒を飲んでしまった。
その帰り道をドイツ兵に見つかってしまったのです。
その時、エリザベスがとっさに禁止されていない文化活動である
「読書会」をしていたと言いつくろうのです。
その後、体裁だけでも「読書会」として集まることにしたのですが、
いつしか本当の読書会として定着した、というわけ。
それはそれとして、当のエリザベスがいない。
まだ幼い一人娘を残して、遠くへ行っているというのです。
一体どこへ・・・?
それこそが、島がドイツに占領されていたからこそ起きた出来事のためだったのです・・・。
戦時中という閉塞された時代の中で、エリザベスの自分の意思を貫き通す、
強い女性像が徐々に浮かび上がってきます。
そしてそのことを知るジュリエットも、徐々に変わっていきます。
彼女はこの島を訪れる直前にある資産家にプロポーズされ、豪華な指輪をもらいます。
けれど、この島に来てから、彼女はこの指輪をつけることをためらってしまう。
慎ましい島の暮らしの中では不釣り合いだと言うこともあるのですが、
次第に彼女はこの指輪が重荷になってくるのですね。
いえ、重荷というよりも、首輪か足かせのように感じてしまう。
彼女はこの婚約が自分の自由を縛り付けるもののように思えてくるのです。
そして自分の心が読書会の一人、ドーシーに惹かれていることを後ろめたく感じてしまいます。
ドイツ軍に占領された島という希有な歴史、女としての生き方、そしてラブロマンス!!
いろいろな要素が絶妙に絡まり、素晴らしくときめく作品でした。
それと、TVドラマ「ダウントン・アビー」の出演俳優が何人か登場したのも嬉しい。
<Amazonプライムビデオにて>
「ガーンジー島の読書会の秘密」
2018年/フランス・イギリス/124分
監督:マイク・ニューウェル
出演:リリー・ジェームズ、ミキール・ハースマン、グレン・パウエル、
ペネロープ・ウィルトン、マシュー・グード、トム・コートネイ、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ
歴史発掘度★★★★☆
女性の生き方度★★★★★
満足度★★★★★
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます