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カムイ伝講義 田中 優子 小学館 このアイテムの詳細を見る |
こんなに、がっちりと密度の濃い本を読むのは久し振りかもしれません。
以前から気になっていたのです。
カムイ伝のファンなもので・・・。
「カムイ伝」はコミック界巨匠、白土三平氏のライフワーク。
カムイ伝に初めて触れたのは私が中学生の頃でしょうか。
江戸時代の格差・階級社会に翻弄され、苦しみ、生き抜き、そして死んでゆく、
膨大な登場人物たちの物語。
この本の初めにこんな言葉があります。
カムイの持ち続けるものは
「自由」ではなく「批判」のエネルギーである。
「カムイ伝」は江戸時代を舞台にしながら、
その向こうに近現代の格差・階級社会を見ている。
21世紀にもなって、この日本は驚くほど変わっていない。
ちゃんと階級もあり、格差もますます健在だ。
私たちは歴史の中で、いったい何者なのかと問い、
何ができるのかと考え、
カムイは今どこにひそんでいるのか、と
耳をすまさなければならない。
本当に、驚くほど変わらないこの日本を見つめなおすために、
未読の方は、ぜひ読んでみるといいですね。
(とはいえ、分量がタダモノではありません・・・!)
この本では、カムイ伝の様々なシーンを例に取りながら、
江戸時代の様々な人々の営みを解説しています。
江戸時代は、リサイクルが当たり前に行われていた、とは近頃良く耳にします。
この本では、下肥(つまり人糞!)のシステムについて詳しく書かれていますが、
なかなか興味深いですよ。
新田開発や農業技術の進歩によって、
下肥に肥料としての価値が出てきたんですね。
その需要が急増し、回収し流通するシステムが出来上がっていった。
人糞ばかりではなく、ありとあらゆるものが
リサイクルしつくした最後に肥料となって使われていたようです。
江戸では急激に人口が増えていった時には、
糞尿などの処理はやはり問題だったようなのです。
川に垂れ流しにしていたので、川がひどく汚れてきた・・・。
また、家などを建てるためには、
材木をどんどん山から切り出さなければならない。
すると、森林を失った山のふもとでは、少しの雨でもたちまち洪水が起きる。
このようなことをしっかり見極めて、糞尿を川へ流すのはやめる。
木を切ったあとには植林をする。
・・・こうして先人たちは自然環境を守ってきたんですね。
悪いところばかりではなく、江戸の知恵には見習うべきところもあるということです。
著者田中優子氏は、法政大学社会学部教授。
実際に講義では「カムイ伝」を参考書に使っているそうで、
そんな授業を受けられる学生は幸せですね・・・。
なんというか、自分が実際に学生の頃は、
講義はやたら退屈に思えたりもしましたが、
学校を出てからは、返って積極的にこういう知識を身につけたくなってくる。
・・・まあ、そんなものですよ・・・。
蛇足ですが、実は「カムイ伝」よりも、
「カムイ外伝」の方がミーハー的見地から大好きです。
アニメもありましたねえ。
あ、そういえば映画も製作中・・・。
抜け忍としての過酷な人生に独り立ち向かう、カムイ。
ひたすらにあこがれた、中学時代の乙女な私でした・・・。
(遠い目・・・)
満足度★★★★☆
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