心の向きが変わるとき
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風刺漫画家、ジョン・キャラハンの半生を描きます。
2014年に亡くなったロビン・ウィリアムズが
自身の主演で映画化の構想を温めていたもの、とのこと。
オレゴン州ポートランド。
酒浸りの毎日を送っていたキャラハン。
自動車事故により胸から下が麻痺し、車椅子の生活となってしまいます。
自暴自棄となった彼はこれまで以上に酒浸りとなり、
周囲の人々と衝突を繰り返します。
しかしあるとき、ふとしたきっかけで酒を断ち、
不自由な手で絵を描き、風刺漫画家として第二の人生をスタートするのです。
ジョン・キャラハンの絵は、手が不自由なこともあって
微妙に線が震えたりしているのですが、
それがまたいい味となっていて魅力的です。
ただし、あまりにもその内容が過激なので、
好む人も多いけれど、眉をひそめる人、嫌悪感をあらわにする人も多い。
けれど、それこそが彼自身の強烈な個性というもの。
おのれのままで生きる以外の道を彼は知りません。
不思議ですよね。
酒浸りの日々から抜け出そうとしたとき、
彼はその先の道を見つけていたわけではなかった。
相変わらず下半身は動かないし、誰の役に立っているわけでもない。
介護人は適当で、自分を邪険に扱う。
そんな彼が感じた「何か」は、
人によっては嘘っぱちだとか、幻覚だとか言うかも知れないけれど、
私は本当だと思うのです。
スピリチュアルなことには懐疑的な私ですが、
一生に一度くらい何か説明のつかない奇跡があってもいいと思う。
ほとんど願望ですかね。
とにかく、その「何か」によって、同じ困難な状況であるのに、
彼の心の向きが変わっていく。
前向きに生きる方向へ。
心のありようはこんな風に変化するものなんですね。
だからひどく落ち込んだとき、もう立ち上がることも出来ないと思ったとき、
そんな時はなんとかしのぐことにして、いつか良い風が来ることを待てばいい。
ほんの何かのきっかけで、それは起こるのではないかな・・・。
まあそれはともかくとして、
彼が参加していたアルコール依存症の人々が集まるグループセラピーが、
力になったのも確かかもしれません。
いろいろな映画で、こうしたグループセラピーのシーンが描かれますが、
本作中の皆さんはなんとも言うことが辛辣。
容赦なく切り込んできます。
けれど、変に優しい物言いでは彼の心に響かなかったでしょう。
無理に優しくされると、まるで哀れまれているようで逆に反発してしまうかも知れない。
そしてまた、その厳しい言葉を言うのが
同じ依存症をくぐり抜けた人たち、という所も大事なのでしょうね。
事故の時、飲んで居眠り運転をして、自分はかすり傷だけだった友人。
(でも自分も、しこたま酔っていた)
幼い自分を捨てていなくなってしまった母。
(その母の気持ちを考えたこともなかった)
恨んで、憎んできた人たちを許すこと。
そして最後に自分自身を許すこと。
こうしたことを一つずつクリアして、どんどん彼自身が「自由」になっていく気がします。
<WOWOW視聴にて>
「ドント・ウォーリー」
2018年/アメリカ/113分
監督・脚本:ガス・バン・サント
出演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック
人生再生度★★★★★
満足度★★★★☆
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