40―翼ふたたび (講談社文庫) 石田 衣良 講談社 このアイテムの詳細を見る |
「78」の次が「40」というのも、なんだかしゃれているでしょう。
これはレコードの回転数ではなくて、年齢です。
今時、アラフォーという言葉があるくらいで、注目される40歳ですが・・・。
40歳というのは、人生の折り返し点。
自分がうんと若い頃には、40歳は「立派な大人」に見えたものです。
ところがいざ自分が40になってみれば、
意識は若い頃とちっとも変わった気がしない。
安定もせず、達観もしていない自分に愕然とさせられる・・・。
このストーリーの主人公、喜一は、会社をやめ、
個人でプロデュース業を始めます。
その彼の元を訪れる40代の依頼人たち。
凋落したIT企業の社長。
やり手の銀行マン。
高校生の時以来の引きこもり中年・・・。
擬態語が口癖のオタクおじさん。
末期がんのコピーライター。
同じく40歳でも、人生いろいろ。
それぞれに行き詰まり、進むべき道を見失ったり、迷ったり・・・。
それが喜一とのやり取りのなかで、自分の進むべき道を見出していくのです。
いわば人生の再生の物語。
私は、表題の「翼ふたたび」の話には、胸を突かれました。
23年間、自室に引きこもった”もと青年”は、
自分を"ネット廃人"と呼び、
喜一と部屋の戸口を隔てたまま、姿を現そうともしない。
返事は部屋の壁を一つたたけばイエス。
二つたたけばノー。
よほど言いたいことがあればケータイにメールをよこすのみ。
年老いた両親に頼まれてやってきた喜一でしたが、
自分に何かできるとはとても思えず、ただ、彼との雑談を心がけるのです。
そんななかで語られた彼の夢は、「1人で夜の街を散歩」すること。
・・・これが40男の真剣な夢なのか・・・。
その後語られる、彼が引きこもりを始めたときの顛末には、涙があふれました・・・。
高校生の純粋な心のままに、絶望を背負ったまま、23年・・・。
このように、人の心に素直に寄り添うことができる、この喜一さんは、
なかなかの人物ですよねー。
実際にいたら好きになってしまいそうだなあ。
さて、その40をとうに超えて、50をもちょっと過ぎてしまった私から見ると、
「40歳はすごく若いじゃん」って、思えるのです。
40が50になっても、やはり、安定も達観もしていない
というのが正直なところなんですが、
体の方だけはしっかり年を感じるんですねえ、これが・・・。
とはいえ、40くらいの時、私も確かに
これでいいのか、このままでいいのか・・・
とあせりを感じた記憶があるんです。
でも、今は、
そんなにあせらなくてもいい。
そんなに頑張らなくてもいい。
そういう風に思えるようにはなっているんですね。
夢をなくしたわけではない。
まあ、マイペースでやりましょう・・・と、そんな感じでしょうか。
ともあれ、それぞれの40歳が、自分なりの答えを見出してゆくこの本は、
40歳ではない皆さんも、ぜひ読んでみると良いと思います。
感動作です。
満足度★★★★★
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