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「黒牢城」米澤穂信 

2022年01月20日 | 本(ミステリ)

祝!! 直木賞受賞

 

 

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史上初、4大ミステリランキング完全制覇!
第166回直木賞受作!!

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。
織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、
城内で起きる難事件に翻弄される。
動揺する人心を落ち着かせるため、
村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。
事件の裏には何が潜むのか。
戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。
デビュー20周年の集大成。
『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。

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先日、ちょうど本作を読み終えたところで、直木賞受賞のニュースが入りました。
2021年の超話題作。
最近単行本は、ほとんど図書館からの貸し出しを利用していますが、
この本はいつになったら順番が回ってくるのかも分からないので、
新年のお年玉購入でした。

米澤穂信さんとしては異色の歴史物、しかも私の大好きな一節、
黒田官兵衛が荒木村重に捕らえられ牢獄内にある時が舞台。
これはもう、読むしかありません。

 

織田信長に謀反し、毛利の援軍が来ることを期待して有岡城に立て籠もった荒木村重。
投降を勧めに来た黒田官兵衛を地下牢に押し込めてしまいます。

そんな中、城内で不可思議な事件が起こる。
村重は土牢の囚人・官兵衛のもとを訪れ、謎を解くよう求めます。

・・・というように、これはミステリ作品の形をとってはいるのですが、
そんなことは些細なことに思えるくらいに、しっかりとした歴史小説になっているのです。

 

意気盛んに籠城を始めた頃はまだ良かった。
けれど数ヶ月、1年・・・という時間の経過とともに、城内の人々の士気は下がっていきます。
特に、毛利の援軍は望めそうもないという認識が広まった頃からは・・・。

配下の者たちは、次第に怠惰になり、定められた規律も守られなくなってくる。
織田と通じる者がいるのかも、自分に謀反する者がいるのかも・・・、
村重は次第に疑心暗鬼に駆られます。
すべての判断を一人で背負うことの重圧、孤独。
こんなことを話す相手は官兵衛しかいない・・・。

 

一方官兵衛も、こんな所に押し込められてまで村重に尽くす義理などありませんから、
謎を解いても、素直な言葉では答を示しません。
謎めいたヒントを示すだけ。
そして彼は、この籠城の行き着く先を読んでいるようでもあります。
そして彼には、ある秘めた企みが・・・。

 

暗く湿った地下牢の格子の中と外で対峙する二人。
何やら鬼気迫る迫力があります。

すでにミステリを超えた人間ドラマ。
作家って、こんなこともできるのですねえ・・・。

 

私、ここはやはり、岡田准一さんと田中哲治さんを思い浮かべてしまいます。
大河ドラマファンなもので・・・。

 

「黒牢城」米澤穂信 角川書店

満足度★★★★★

 



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