ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

『肉体の門』を見た!

2008-11-02 21:40:06 | 映画

 鈴木清順監督の『肉体の門』を見た。そうとう前の作品だ。調べたら1964年だった。若さぴちぴちの野川由美子や宍戸錠が主演だもの。戦後まもなくの東京有楽町、そこをシマにするぱんぱんグループの話だ。売春婦の物語だし、女同士の凄惨なリンチシーンもあると聞いてたので、かなり構えて見たけど、さすが?というべきか、にしては?と言うべきなのか、鈴木清順監督の手で女たちは実に美しく逞しく仕上げられていた。性や暴力も描かれているけれど、本質は清らかな純愛映画、なんて言ったら誤解されるかな?だって感じた。

 でも、素直に映画に没頭できない事情があった。そうなんだ、演劇部の部員たちと一緒に見たんだよ。こんなことお堅い人たちが聞いたら、腰抜かすかもね。もしかしたら、おしかりのコメントとか入るかもしれない。うーん、芸術鑑賞面では極力タブーをもうけないようにしている僕としても、見せる前はちょっぴり躊躇したのは事実だ。それでも、敢えて見せた。だって舞台作りに必要だったから。

 この『肉体の門』、今、:県大会に向けて練習中の『Let's Dance 1946』と重なる映画なんだ。置農作品の方は、置賜地方が舞台なので映画のような生々しい本能丸出しの世界ではないんだけど、中に東京から戻ってきたパンパンとか、特攻帰りの荒くれ者なんてのが出てくるから、あの時代やそこに生きた若者たちの思いや姿、振る舞いを、感じ取ってほしかったんだ。すでに戦時中の青春群像については『ウインズ オブ ゴッド』で見せていたから、今度は終戦直後の生々しい現実?を見知ってほしかった。

 心配したほど露骨な性描写や暴力シーンもなく、まあ、ホッとしたことはしたんだけど、やはり女性の裸やセックスシーンは当然のこと、盛りだくさんだから、果たしてどんな風に見てくれているか、気になって、いささか気が気じゃなかった。ってほどでもないか。

 じゃあ、見せなきゃよかったかって?そりゃない、断じてない!驚くほど置農の芝居に重なる部分があったんだ。まず、オープニングが『星の流れに』の歌だし、途中『リンゴの歌』も出てくる。主人公のボルネオマヤが戦地で亡くした兄を慕っているところとか、宍戸錠の復員兵が生き残って帰ったことに罪悪感を感じてる設定とか、ねっ、そっくりでしょ。ったってわからないよね、どちらも見てない人には。

 高校生には重たすぎる愛や性の実相、とことんまで堕ちきった人間の赤裸々な欲望なんかにはきっと圧倒されたと思うし、その芸術的な深みを理解出来なかったかもしれないけど、あの混沌の時代に、抜き差しならない過去を背負って生きた若者たち、それぞれのどろどろとした生き様は感じ取ってくれたことと思うんだ。死と面と向かい合い、すべて権威が失墜した空虚さの中で本能の赴くままに逞しく生きた娘たち。堕ちるところまで堕ちろとうそぶき強盗に精を出す復員兵。時代の深度はあまりにも深い。その底知れぬ深みを感じ取ってくれたなら、それでいいのだと思う。

 と、今はそう思うんだけど、見終わった直後は、あまりに生々しくて、うーん、こりゃ口直しが必要かな?なんて、結局、『ウェストサイド ストーリー』も見せてしまった。これも当然、良かった!生徒たち、泣いてたしね。おっと、僕もだけど。

 それにしても偶然の一致!『肉体の門』も、『ウェストサイド ストーリー』も純愛、悲恋映画だったんだ。それも、どちらも駆け落ちが最後のシーンになっていて、さらに、どちらも、男が殺されて駆け落ちが叶わないって、ね、凄いよね、ここまで一緒だと。

 と、まあ、今日は映画鑑賞で稽古はお休み!明日からは、『肉体の門』でずしんとしまい込んだものをしっかりと使って、これまでを越える演技を披露してくれるだろう、きっと。

 

コメント
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