福岡市美術館でシアトル美術館所蔵の「日本・東洋美術名品展」が7月19日まで開催されています。昨年から全国四つの美術館を回っています。(右はパンフレットの一部です)
「シアトル⇔イチロー」しか頭に浮かんできませんが、アメリカの西北部の街にこのような素晴らしい、それも東洋美術の宝庫があるのを知って少なからずショックを受けました。東洋美術はもっぱらアメリカ東部に多くあるという固定観念を持っていたので・・・。
展示室に入った途端、まるでヒッチコックの映画「鳥」さながらにカラスの群れが襲いかかってきました。壁一面の金地にカラスが飛び、群れ、ざわついています。ざっと数えてみると90羽以上。よく見ると真っ黒い中にも羽根の描き方、嘴の開け方、舌先の曲がり方がリアルで見事なカラスの集団です。映画の中のあの鳥の恐ろしいざわめきと羽ばたきが聞こえてくるようです。この≪鳥図≫、作者名は不明でしたが、心にグイと迫ってくる絵でした。
「鳥」の舞台はサンフランシスコでシアトルにも近いし、カラスでなくカモメですが、ひょっとしたらヒッチコックはこの絵を見て映画の構想を練ったのでは…と思われるほど、見る者の恐怖心は双方全く同じでした。
今回の目玉ともいうべきが、本阿弥光悦書・俵屋宗達画の≪鹿下絵和歌巻≫でしょう。宗達の軽妙なタッチの鹿がとても親近感を持てます。珍しいことに、巻物は一部でなく全部広げて展示されています。時を経て一巻物が切れ切れになリ、所有者が複数になってしまった他の部分もつなぎ合わせて、それを全部一巻にしてデジタル化。アドレスまで書いてあるのです。長い巻物を全部堪能して、鑑賞の喜びを共有しようという思想がたまりません。下のシアトル美術館のHPをクリックして楽しんでください。
http://www.seattleartmuseum.org/exhibit/interactives/deerscroll/sam_deer.htm