福岡県中部に位置するこじんまりした地方都市久留米。久留米絣、有馬藩の城下町、ブリジストン発祥の地、筑後川・・・。
そんな陽だまりの都市に素晴らしいそして心温まるスロヴァキアオペラがやってきました。
この公演は、質の高いオペラを手ごろな価格で市民に提供し、スロヴァキアと日本の文化交流を計るのが目的で、今年が6回目の公演です。主催者は「筑後スロヴァキア・オペラ交流の会」です。
ワンスロープ1000席を埋め尽くす実績が、公演の趣旨が市民に浸透していることを物語っています。
オペラコンサート形式で、ナレーションを入れながらオペラの醍醐味を外さないように凝縮されて展開していきます。
伴奏はピアノだけですが、観客席いっぱいに広がってくるソリストの歌唱力と演技力にレベルの高さを見せつけられました。
第一部 コンサートオペラ 「魔笛」……1時間ほどのダイジェスト版ですが、ナレーションを入れながら「魔笛」の核心部分が進行していきます。
おなじみの、夜の女王「復讐の炎は地獄のように私の心に燃え」のコロラトゥーラ。パパゲーノの「パパゲーナ、パパゲーナ、パパゲーナ」の演技力と歌唱力。パパゲーノ&パパゲーナのコミカルなデュエット「パパパ」。
パパゲーナ役シモン・スヴィトックは聴きごたえ見ごたえ十分のソリスト!
オペラに詳しくなくても身構えなくオペラの世界に入り込めて、これって大切なことだと感じました。
第二部 アリア、オペレッタとミュージカルの曲
アリアの素晴らしさを心に浸みこませる12曲。
中でも圧巻だったのが「ホフマン物語」で人形オリンピアが歌うアリアです。機械仕掛けの直線的な動きと表情、巻いたネジの力により歌のテンポを変えるコミカルな演技力。
オリンピアと夜の女王を演じたのはマリアナ・ホヘロヴァー。長時間のコロラトゥーラにも耐えうる、まさに人間楽器とでも言えるほどの力量のソリストで、まだ若くてこれからが期待されます。
公演が終わった後で、「スロヴァキア国立オペラとともに歌う会」の合唱で團伊玖磨「筑後川」が披露されました。
次曲の「サンタルチア」はソリストたちと一緒に、最後の「はるかな友に」は観客も一緒に大合唱。まさに市民を巻き込んだスロヴァキア国立オペラの心温まる公演でした。
この公演の招致に高校の先輩や友人が深くかかわっていることに感動し敬意を表します。来年の公演日も演目もすでに公表され、また一年間かけた活動が開始されることでしょう。