新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

大河ドラマ 岳大「勝頼」

2016年01月13日 | テレビ番組

「真田丸」。新しい大河ドラマが新鮮なタイトルで始まりました。
三谷幸喜脚本らしく最初からテンションが高く、舞台かと錯覚するようなセリフ回しでテンポが速い。とにかく若々しいにおいのするドラマになる気がします。
今までの歴史ドラマを考慮してか、複雑な戦国時代の陣取り合戦をCGマップを使いながら解説してくれるので、最初から頭の中を整理して観ることが出来ます。
細かい部分にもしっかり目を向けています。徳川家康が登場したときに、視聴者に向かって歩いてくるがごとき「顔見せ」がありました。そこで彼の癖である爪を噛み挑戦するような表情が映し出された時に、こんな細かいところまで演出をする三谷ドラマに、さすがと拍手!自分の少ない知識と映像がシンクロした時にドラマへの共感が生まれます。

源次郎・幸村が主人公のドラマなのに、今回の秀逸は俳優・平岳大演じる武田勝頼。圧倒的な強さで近隣の武将を震え上がらせた父・信玄。その嫡男として、あまりにも大きい父の存在に苦悩し、周りからも自分の心がわかってもらえず、次々に離反者を生み出すいらだちと孤独感。

岳大演ずる勝頼の美しいまでの悲哀感を、寡黙で、表情と体全体で演じきったこの見事さ。俳優・岳大は父・平幹次郎を超える演技でみごとに乗り越えた気がしました。

歴史小説の描く勝頼は武将としての行動場面が多いのですが、井上靖「天正十年元旦」「天目山の雲」では、勝頼の人間性と心理が細かく書かれていて、この本をなかなか処分できないでいました。大河ドラマ第一回を見ながら、すぐこの本を思い出してまた読んでみました。平岳大が歴史小説を「純文学にした」とは私の感想です。

この本は短編集になっていて、「天正十年元旦」も「天目山の雲」も短い小説です。ほかに「利休の死」「平蜘蛛の釜」「明妃曲」「異域の人」などわくわくするような話が載っています。

ドラマの中の勝頼をもっと見たい気もしますが、勝頼の最後は近いはず。ちょっと残念です。

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