叔母が亡くなったという知らせが入りました。91歳。

母が教師をしていたので、昼間は父の妹である叔母が私を育ててくれました。女学校を卒業して嫁ぐ迄だから4~5年間だったでしょうか。
細かい記憶はないのですが、いつも笑顔で優しかった叔母。訃報を聞いたときにその温もりがよみがえり涙が溢れました。
18歳で家を離れてからは夏、冬、春休みに帰省すると必ず会いに来てくれましたが、学生生活が中心の、私の心がだんだん離れていくことに微かな胸の痛みを感じていました。
中学の国語の教科書で知った中勘助『銀の匙』は、ずっと私の心に居座る本になっていました。作者が叔母の背中にお負われて見た世界を子供の純粋な心で描いた美しい小説です。

本の「叔母と甥」の関係を「叔母と姪」に置き換えて、私の幼児期の思い出にダブらせたのかもしれません。時折読み返してはその郷愁に浸りました。
叔母の7人の孫と17人のひ孫が祭壇の前でお別れの言葉を述べました。叔母の幸せだった人生をしみじみと感じるシーンでした。
祭壇の微笑んだ遺影に感謝と、そして疎遠になっていたことを詫び、懺悔の気持ちを語りかけ合掌。葬儀に出席できてほんとによかったと思います。