先に見た同名の映画があまりにも素晴らしかったので、原作は読まないと決めていましたが、ボランティアの折友人から回ってきたので読むことにしました。やはり原作は素晴らしい!あっという間に読み終わりました。

上下2巻読まないとストーリーは完結しないという意匠の表紙もなかなか工夫されています。
世界的に有名になった日本の国際ピアノコンクールに挑む4人の主人公が自分との過酷な闘いを軸に、ライバル達と友情をからませながら成長していく姿が描かれています。3度に及ぶ予選をクリアしたものだけが進むことができる本選。戦略的とも言える選曲を一年がかりで決めることもあるようです。下記は四人の第一次・二次・三次予選と本選に演奏する曲目で、きめ細かに書いてあり、まるでドキュメンタリーみたいです。三次まではリサイタル形式で進み、本選はオーケストラとのコンチェルトです。


映画で圧巻だったオリジナルの藤倉大作曲「春と修羅」はカデンツァを含めてYouTubeで視聴できるし、他の演奏曲もYouTubeで著名な演奏を聴きながら読めるので、ひと味違う贅沢な読書ができます。
ストーリーのみならず、曲や演奏の描写が緻密で文学的で、著者は音楽に相当造詣が深いのだと思いました。
解説によると、3年おきに行われる浜松国際ピアノコンクールを2006年を皮切りに4回も取材されたそうです。しかも1回のコンクールは2週間の長丁場。ただただひたすら演奏を聴かれたとか。恩田さんの戦いは、コンテスタント達の青春をかけた戦いと同じだったのです。
この内容は10年がかりの取材で書かれています。本になる前は7年間の雑誌の連載で、その間の出版社の経費は1000万円の赤字とか!それでも恩田さんは認められていたのですね。
この本を読みながら、なんか「ピアノの森」と似てると思いましたが、過酷なレッスンを重ねたり、英才教育を受けたり、生まれながらの絶対音感を身につけていたりと、ほんの一握りのピアニストになる、いや選別されるということはこういうことなんだと思いました。
原田マハさんにしろ恩田さんにしろ、芸術を取り上げた小説に出てくる人たちは「選ばれた階層」の人で結果的にエリート、背景がクリアで美しく、明日の糧に苦しむ様なところは出てきません。苦しみもなくさらっと読めるのはそんな背景を土台にしているからでしょうか。
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ネモフィラがなかなか咲きません。ただ一輪・・・・。
