昨年来、急速に民主化の進むミャンマーに全アジアの注目が集まっている。
少なくとも、私からの注目は集まっているのだ。
当ブログの読者の皆さんにはお気付きのかたもいらっしゃると思うのだが、私は外国旅行の目的地ではミャンマーが一番のお気に入りだ。
仕事の交流会でも、
「ミャンマーは好きな外国ですね」
と話すことが多く、その都度、
「ミャンマーって、どこです?」
という質問が返ってくる。
「ミャンマーですよ、ほら、旧ビルマ」
「ああ、あの竪琴の....。で、どこにあるんです?」
「タイの西隣、インドの東ですよ。」
「へー。変わったところに行くんですね。」
と、このような会話が交される。
知っているようで知られていない国。
それがミャンマーなのだ。
最近は毎日のようにミャンマーに関するニュースが流れるので、どこにある国なのかを知っている人の人口は増え続けていることと思うのだが、それでもまだ十分と言えないところがある。
先日もある交流会で大阪の公的機関で中小企業の海外進出を支援する仕事をしている人と話しをしていたら、
「ミャンマーに視察団を送ります。」
「そうですか。ビザは大阪で取れるのご存知です?」
「ええ!ミャンマーって、観光ビザ必要なんですか?」
と呑気なことを言っていたくらいまだまだマイナーな存在だ。
このミャンマー。
インフラは東南アジア最低といってもいいぐらい劣悪だ。
停電は当たり前。
列車に乗るとダイヤはあってなきがごとし。
乗り心地はトランポリン状態。
エアコンはおろか冷蔵庫のない飲食店も少なくない。
当然コンビニはない。
食べ物はタイやベトナムのようには美味しくない。
高原地帯のシャン州を除いてむちゃくちゃ暑いし、日系のエアラインは飛んでいないし(秋からANAが成田から飛ぶ)、ちょっと想像してみただけでもマイナス要素が少なくない。
ところが、私にとってはお気に入りのタイやベトナムよりもさらにお気に入りな国なのだ。
さらに、今後の日本と東南アジアとの関わりを強固にするためには、知っておかなければならない国だ、と少なくとも私は思っている。
単に観光で訪れる素敵なところ、というよりも色々と感じ、学ぶことのできる場所なのだ。
その理由は、多くのポジティブな要素に彩られている。
人口7千万人で乏しいながらも識字率は高い。
石油、石炭、銅、ダイヤモンド、ルビー、ウランなど天然資源が豊富。
これらは既に中国が手を出し、欧米が手ぐすね引いて狙っている。
しかも次が決定打なのだが、ミャンマーは日本に非常に友好的な国の一つなのだ。
トルコ、ノルウェー、ミャンマーは世界三大新日国という情報もあるくらいだ。
先の世界大戦では17万人の日本人将兵がミャンマーで亡くなったが、戦後、賠償請求を最も速く妥結してくれたのがミャンマーだった。
しかも、破格の保証金で妥協してくれて、その他の国との補償交渉を非常にやりやすくしてくれたというのも、ミャンマーのおかげ。
勝利した日露戦争の借入金よりも敗戦した第二次世界大戦の借金の方が早く返せた要因の一つがここにある。
学校では日本人が教えてもらっていないミャンマーと日本の関係なのだ。
しかも人情味溢れて暖かく、ほんわりした人々。
物静かで怒らない。
但し、起こると怖い。
上座部仏教を基本とした仏教的感覚が、一昔前の古き良き日本人と極めて酷似しており、なんとなく安らぎを感じることさえある国民性は付き合っていて決して日本人にとってマイナスにならない。
むしろプラス面のほうが遥かに多い。
他の東南アジアの国々同様、タッグを組んで、政治的、経済的に様々な活動をしていくのにぴったりの国でもあると、くどいようだが、少なくとも私は思っている。
これまでは軍事政権の悪評で、経済制裁が科せられていた為、日本政府も日本企業も自由に活動を行えなかった面がある。
資金援助もコソコソっと行なっていたのだ。
バガン方面の緑化支援も、ミンガラドン国際空港の新ターミナルも、JRの中古車両も。
ミャンマー政府が原因というよりも、欧米諸国の目を気にして行えなかったのが、いささか情けないところだが、それはそれ。
これからは豊富な人材と豊富な資源、そして日本との繋がりを武器に、様々な方面に展開しなければならないのだ。
ということで、ミャンマーへ行こう!
そんなところで、ミャンマーに関する数少ない書籍のうち「ビルマに暮らして」(勁草書房)佐久間平喜著は絶好のミャンマー入門書と言えるかも知れない。
情報がかなり古い。
しかし著者の佐久間さんは外務省の外交官でミャンマーに長期勤務していたという、なかなかいそうでいない人材だ。
外務省に入省してマンダレーの大学に留学した人はそういないのではないか、とも思える人だ。
ネ・ウィンによる独裁政権時代から、軍事政権の時代にわたり、この国の政治、経済、文化、人に非常に精通している。
貴重な情報満載だ。
私のような6回程度しか渡航歴のないバックパッカー的一般旅行者では知りえない、または感じえないミャンマーの姿を伺い知ることができる。
今、読むべき一冊なのである。
なお、本書はアマゾンでは扱っていないようで、直接に勁草書房へ注文する必要があるようだ。
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