<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地





「科学で解明できないものはありません」
というと、必ずどこかから、紋付袴で髭面で手に虫眼鏡を持った八卦見のようなオッサンが現れ、
「そんなことはない!科学では伺い知ることができない深遠なものが、この世界には存在する。みよ、この運命を」
なんてことを言い出しかねない雰囲気になることがある。
現にSF好きの集まりなんかに参加したら(学生時代の話)、
「人の魂は科学では解明できません」
と青白い顔をしたひょろっとした女性が登場したりすることがあるので、この手の話題には注意を要する。

幽霊。
亡霊。
幽体離脱。
金縛り。
超能力。
UFOに宇宙人。
謎の生物。
怪人怪獣。
などなど。

この手のことを話題にすると想像力が広がって、とても楽しいのだが、これらの話題を真剣に討議すると、それすなわちアブナイ集団になることは、これ請け合いなのだ。

「あの人、実は第1級霊媒師の資格を持ってるんですよ」

と大学生時代の時に誰かが冗談を話したら、それを本気にする人が登場し、霊媒師を国家資格と勘違いしたという笑えるようで笑えない話も私の周囲には存在する。
それだけ、この手の「超常現象」はミステリアスであり、魅力的なのかも分からない。

リチャード・ワイズマン著「超常現象の科学」(文藝春秋社)は、なぜ超常現象のような不思議な体験をなぜ人は見たり感じたりすることがあるのか、ということを科学的に解説したサイエンスドキュメント。

幽霊話は好きだけど、ホントはそんなものは信じない。
それは人の錯覚だよ、と日頃から思っている私のようなへそ曲がりにはピッタリの一冊なのだ。
本書では超常現象はマジック、錯覚、心理的な副産物でしかなく、科学的に合理的にいって「疑ってかかる、一種の詐欺」というようなものとして説明されている。
たとえば心霊写真。
世界初の心霊写真はカメラの使い方やメカニズムを十分に理解できていない科学者が、カメラの蛇腹に孔が開いていることを知らずに撮影したエラー写真であったという。
昔のカメラにはレンズの部分に蛇腹がついていたのだ。
しかも、今のようにハイテクで簡素だが緻密に設計製造されたパーツではなく、アナログチックな化学変化に頼る写真。
どのような要素が映り込むのかはちょっとした光のあたり具合や、カメラそのもののコンディションに大きく影響された時代だった。

で、翌々考えてみると、デジタル写真になってからこのかた、心霊写真があまり言われ無くなってしまった。
私が娘のような丁度中学生だった頃は心霊写真花ざかりで、漫画雑誌なんかには時々「心霊写真特集」なんてコーナーがあって、

「おおおお~、これってホンマの幽霊ちゃうか~」

とか言い合って遊んでいたものなのであった。

今は心霊写真を人に見せたりすると、
「お、Photoshop、上手に使うね」
と言われるのがオチである。

ということで、この一冊。
占い師のトークテクニックや超能力者のマジックネタなどを真面目に学べるので、実に面白いオススメの科学本なのであった。

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