吉村昭の作品はほとんど読破したと思っていたのだが、未だ読んでいない作品を書店で見つけた。
それは「東京の下町」というエッセイ集で、先月行ってきた日暮里界隈の昔について語られている内容だ。
日暮里というところは今回の旅行に行く前からよく通るところだった。
もともと東京出張をすると宿泊はたいてい浅草のビジネスホテルにしていて、そのホテルの前を通る都バスが日暮里駅からでている。
池袋や高田馬場あたりで飲んでホテルに帰る時はバスのある時間であれば日暮里で山手線を降りる。
そしてバスに乗って宿に帰るのだ。
バスの車窓からは生地や革製品、糸などが並んだ商店が点在している風景が続く。
日暮里は繊維系の問屋街であるのだ。
私は手芸には興味はないのだが、問屋が並ぶその光景を見ると、アジアのどこかの街を路線バスで走っているような感覚にしてくれてとっても楽しいのだ。
繊維系問屋やだけではない。
肉屋があり、お菓子屋があり、個人経営の食堂がある。
日暮里は下町らしい風情が魅力的なのだ。
作家吉村昭はこの日暮里で生まれ育ったのだという。
エッセイに登場する羽二重団子は一昨年にANAの機内誌「翼の王国」に掲載されたこともあり食べによったこともあるし、JR線の西側の丘陵地帯「谷中」は先日車で通ったところでもある。
不思議な縁でたまたま家族で旅行をしてきた直後に天王寺の書店で見つけた。
観てきた風景と昔の風景を思い重ねて楽しめる一冊なのであった。