想いのDNA
閑話書覧:時の旅人
夏休みっぽい空になってきましたけど、
夏季休暇=読書感想文とかミニ論文とか小学校から大学生はあるかな思いますが、
世代年齢問わずな本を昼の気分転換がてら挙げてみます↓イギリス児童文学ですが、
Alison Uttley『A traveler in time』
アリソン・アトリー『時の旅人』って邦題で岩波他から出ています。
大人でも子供でも面白い本はって訊かれるとコレ挙げますが、シビアなファンタジー小説です。
著者はケンブリッジ大学で物理学を学んだ人で生活のため小説を書き始めたっていうちょっと変わった経歴、
イギリスの田園風景を描くことが彼女の個性で、たしか100以上の作品を遺しています。
そんな中で後のファンタジー文学の基礎になったと言われるのが『時の旅人』です。
農場にある屋敷で静養中の少女が、その土地の過去と往来するようになる。
そこに住んでいた人々に彼女は出逢い、憧憬や家族的な想い、そして恋愛感情も見つめます。
いわゆるタイムスリップと言うよりも過去の記憶に受容れられ歩く、そんな温かさがあります。
でも行先は16世紀、イギリス王室の動乱が起きた時代です。
その動乱が過去の住人たちを呑みこんでゆく姿を彼女は目撃し、けれど何も出来ない。
そんな無力感と、それでも出逢った意味を問いかけ反芻しようとする彼女の目線は静かで逞しくて清明です。
Though nothing can bring back the hour
Of splendor in the grass, of glory in the flower,
We will grieve not, rather find
Strength in what remains behind;
In the primal sympathy
Which having been must ever be;
In the soothing thoughts that spring
Out of human suffering;
In the faith that looks through death,
In years that bring the philosophic mind.
時ひとつ戻せない、
草の光一滴も、花の誇らかな輝きも、
でも哀しみ沈まなくていい、見つけられる
後に残れるものは逞しくあり、
芽生えさせる共鳴にあり
どこにも永久に在り続けるべきもの、
春あふれだす柔らかな眼差しは
人の苦しみの時からこそ顕われる、
運命の涯を見つめる約束に、
理知の精神を歳月たちが連れてくる。
William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」の一節です、
この詩文と『時の旅人』は描かれる主題が似ています。
もう終わってしまった事件、死んでしまった人々、消えた想い、けれど彼女の中に生きている。
過去でめぐり逢った人々と彼女は先祖と末裔として血縁に繋がれています、その遺されたDNAが屋敷の記憶を謳い読みあげて想いすら繋げた。
そんな不思議な物語は上述の詩題「幼少期の永遠の記憶の予知」そのまんまってくらい嵌まる「永遠の記憶の予知」過去から明日への永続性です。
ワーズワスもアトリーもいわゆる田園文学が個性ですが、
自然をベースに世界を組み上げ創作していた二人の共通項は、韻文と散文のジャンル違いでも似ています。
花や草、森や草原から詩情ゆたかでも理知的な視点、そういう理詰めを透明な空気できれいに描くカンジです。
海外小説 (5) ブログトーナメント
第76話「総設act.7」&Favonius「少年時譚16」まだ加筆校正します、
それ終わったらAesculapiusの続き予定です、
昼休憩に取り急ぎ、
智
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夏休みっぽい空になってきましたけど、
夏季休暇=読書感想文とかミニ論文とか小学校から大学生はあるかな思いますが、
世代年齢問わずな本を昼の気分転換がてら挙げてみます↓イギリス児童文学ですが、
Alison Uttley『A traveler in time』
アリソン・アトリー『時の旅人』って邦題で岩波他から出ています。
大人でも子供でも面白い本はって訊かれるとコレ挙げますが、シビアなファンタジー小説です。
著者はケンブリッジ大学で物理学を学んだ人で生活のため小説を書き始めたっていうちょっと変わった経歴、
イギリスの田園風景を描くことが彼女の個性で、たしか100以上の作品を遺しています。
そんな中で後のファンタジー文学の基礎になったと言われるのが『時の旅人』です。
農場にある屋敷で静養中の少女が、その土地の過去と往来するようになる。
そこに住んでいた人々に彼女は出逢い、憧憬や家族的な想い、そして恋愛感情も見つめます。
いわゆるタイムスリップと言うよりも過去の記憶に受容れられ歩く、そんな温かさがあります。
でも行先は16世紀、イギリス王室の動乱が起きた時代です。
その動乱が過去の住人たちを呑みこんでゆく姿を彼女は目撃し、けれど何も出来ない。
そんな無力感と、それでも出逢った意味を問いかけ反芻しようとする彼女の目線は静かで逞しくて清明です。
Though nothing can bring back the hour
Of splendor in the grass, of glory in the flower,
We will grieve not, rather find
Strength in what remains behind;
In the primal sympathy
Which having been must ever be;
In the soothing thoughts that spring
Out of human suffering;
In the faith that looks through death,
In years that bring the philosophic mind.
時ひとつ戻せない、
草の光一滴も、花の誇らかな輝きも、
でも哀しみ沈まなくていい、見つけられる
後に残れるものは逞しくあり、
芽生えさせる共鳴にあり
どこにも永久に在り続けるべきもの、
春あふれだす柔らかな眼差しは
人の苦しみの時からこそ顕われる、
運命の涯を見つめる約束に、
理知の精神を歳月たちが連れてくる。
William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」の一節です、
この詩文と『時の旅人』は描かれる主題が似ています。
もう終わってしまった事件、死んでしまった人々、消えた想い、けれど彼女の中に生きている。
過去でめぐり逢った人々と彼女は先祖と末裔として血縁に繋がれています、その遺されたDNAが屋敷の記憶を謳い読みあげて想いすら繋げた。
そんな不思議な物語は上述の詩題「幼少期の永遠の記憶の予知」そのまんまってくらい嵌まる「永遠の記憶の予知」過去から明日への永続性です。
ワーズワスもアトリーもいわゆる田園文学が個性ですが、
自然をベースに世界を組み上げ創作していた二人の共通項は、韻文と散文のジャンル違いでも似ています。
花や草、森や草原から詩情ゆたかでも理知的な視点、そういう理詰めを透明な空気できれいに描くカンジです。
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第76話「総設act.7」&Favonius「少年時譚16」まだ加筆校正します、
それ終わったらAesculapiusの続き予定です、
昼休憩に取り急ぎ、
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