complication 錯綜の解
第78話 冬暁 act.7-side story「陽はまた昇る」
道に雪は消えた、けれど樹影は蒼白く埋もれる。
冬の夕暮れに公園の誰もが帰路、それでも奥へ歩いてゆく。
曇天の薄暮、さくり、踏みこんだ木下闇のベンチは誰もいない。
まわり埋める雪は足跡がある、その数とサイズに英二はため息を微笑んだ。
「俺の足跡だけ、か、」
もし待ち人が来たのなら足跡は残るだろう。
けれど見つめる靴跡は自分だけ、そこに重なるはずの人は来ない。
もう影蒼くなるほど陽は傾いた、そんな曇り空の夕暮れにもう一度だけ座りこむ。
何度このベンチに君と座っただろう?
「…夏だったな、最初は、」
ひとり記憶こぼれて常緑樹の影が夏になる。
初めて二人ここに座った夏の驟雨、あの横顔に重ねた想いが軋む。
いま雪の中ベンチに独り座りこんで、それなのに夏の雨の匂いと声が優しい。
―…こんな所で寝たら風邪ひくよ?
ほら、優しい声かすかに笑ってくれる。
あのとき好きだと自覚した、あれが自分の初恋。
男同士なのに恋愛なんてと正直なところ途惑った、けれどもう離れられなかった。
春から初夏、季節ひとつ共に過ごしてしまった隣の空気は居心地良くて、そして幸せが泣きたかった。
『泣けよ、宮田、』
泣いて良い、そう小さく微笑んでくれた。
まだどこか硬い貌だった、その硬さすら本当は優しさなのだと一瞬ごと気づき始めていた。
ぎこちない腕は泣いている自分を抱きよせて小さな胸を貸してくれた、頬ふれるワイシャツごしの鼓動が温くて安らいだ。
あのとき自分は決めてしまったのだろう、この唯ひとり護れるなら離れないでいられるのなら命すらいらない。
「なのに周太ごめん…なにも出来てなくて」
独り、現実のもどかしさため息ごと声になる。
いま12月、あれから1年半すぎて自分は何を出来たというのだろう?
そんな今の現状は救うなんて約束から遠すぎて、座った脚の隣の鞄が重たく昏い。
自分の鞄、そこに「奈落」から掘りだした半世紀前のパーツを救命道具に紛らせてある。
そして今日もまた書類一通しまいこんだ、もう過去の証拠ふたつ手にしたのに今あのひとはどこにいる?
「…ニュースは、」
思案ひとり声こぼれて携帯電話を開く、その画面に情報すぐ呼びださす。
いま16時過ぎた、閉園もう間近な刻限は今日一日の報道も流れるはず。
その現実を知るのは本当は怖い、それでも知らないよりずっと良い。
―だって周太、どんな現実も周太は俺が受けとめたいんだ、
想い祈りながら画面の記事を視線が追う。
ネットなら新聞やテレビより速いツールもある、その検索に心臓が停まった。
“ いま向かいのビルが窓割れた、なんか機動隊っぽいの突入したけど全員マスクしてる怖い何? ”
一般市民の匿名記事、ただ一行の文章。
けれど素人の声だからこそリアル生々しい、たぶん不安と好奇心から投稿した記事だろう。
今なにが起きているのか解らない不安と非日常性への好奇心、こうした混乱はある意味で無責任の傍観者だ。
だけど自分は当事者、それは警察官の立場よりも大切な人のために他人事でいられない。
「出たのか、周太…」
警視庁特殊急襲部隊 Special Assault Team 通称SAT
国内のハイジャック事件、テロ事件、強力な銃器を用いた事件に出動し篭城事件を鎮圧する。
狙撃班員は篭城事件やハイジャック事件において二十四時間体勢で遠距離からの監視、警戒を行う。
そして状況次第では犯人射殺も辞さない、そんな任務にある人ならば今日どこで何をしているだろう?
「周太、好きだよ…ずっと、」
想い声こぼれて瞳から熱あふれだす。
残雪に冷えてゆく大気へ熱そっと凍える、凍えた雫が頬ひとすじ冷たい。
はたり、顎から墜ちてまた一滴そっと辿りだす、あの夏もこうして泣いて優しい隣は受けとめてくれた。
何も言わずただ泣かせてくれる、それだけなのに安らいでゆく本音は嘘吐けなくて初めて恋愛に堕ちると自覚した。
無言でも居心地いい相手は初めてで、そして全て懸けても縋りたいと願って、それなのに自分は今なにが出来ている?
「は…罰が当たったのかな、俺、」
罰が当たった、なんて発想は一昨年まで無かった。
だけど今は想ってしまうほど心当たりが多すぎる。
―周太だけって約束したのに俺は、光一まで…雅樹さんみたいになりたくて、
誰もが語る美しい山ヤの医学生、彼と自分が似ているなら同じになりたかった。
彼みたいに生きたい、そう願ったから彼が唯ひとり愛した山ヤを自分のものにしたかった。
だから言訳ごと犯してしまった夜が望んだ全て壊していく、そして誰も傷つけてしまった自分は罰せられて当然だ。
けれど、その罪が今あのひとを死線に立たせたなら自分が赦せない。
「周太…俺は周太の邪魔してるだけかな、ほんとうは…いないほうが」
ひとりごと零れて鼓動が停まる、もう自分の存在すら解らない。
唯ひとり捉まえて抱きしめ続けたかった、離れたくない傍にいたい、だから選んだ全ては結局ただ自己満足かもしれない。
そんな自分だから今日ここに来てもらえなかった、それが任務の所為だとしても運命すべてが「逢う」こと拒んだのかもしれない。
「…っ、は…」
ため息ごと鼓動また始まり視界を瞑ってしまう。
もう二度とあの人に逢えない?そんな予兆に心臓ごと時間すべて停めてしまいたい。
だって逢えないなら、もう隣にいられないなら今なにをしても幸せなんて遠すぎて、もう嫌だ。
「ふ…っ、」
吐息また涙ひとつ零れだす、ほら本当の自分はこんなに泣虫だ?
唯ひとり望みたい人にもう逢えない、そんな現実を全て棄てたくなる。
今日も父すら脅して書類ひとつ手に入れて、けれど逢えないなら何になるというのだろう?
世界中すべて騙しても脅しても護りたくて欲しくて、それなのに今日の約束ひとつ壊されるほど運命はもう逢えない?
「…こんなところで寝たら風邪ひくよ?」
ほら、穏やかな優しい声また聞える。
この想い初めて見つめた瞬間の声、夏の雨に黒目がちの瞳は優しかった。
梢の雨音に樹影は青くて、青に横顔あわく白くて長い睫の翳にじむよう蒼い。
あの横顔に振り向いてほしいと願いながら初めての恋愛を見つめていた、その声が呼んだ。
「英二…泣いていいよ、」
今、誰が自分を呼んでくれた?
「あ…、」
幻を聴いているのだろうか、それとも現実?
解らないまま座りこんだベンチに穏やかで爽やかな香くゆらす、この香は知っている。
もう9月の終わりからずっと感じていない香、それでも懐かしい空気は頬ふれて体温に抱きしめられた。
「ごめんね英二、こんな…ごめんね、」
ほら、大好きな声が名前を呼ぶ。
いま抱きしめてくれる香は知っている、この頬ふれる温もり懐かしい。
懐かしくて想い募らされるまま腕が動いて縋ってしまう、もう抱きしめてしまった腰は細くて、けれど瞳が開けられない。
だって目を開けたら消えてしまうかもしれない、これは幸福の幻かもしれない、だから目を閉じたまま抱きしめる相手が微笑んだ。
「英二、雪のなか寒かったよね、ごめんね…ずっと待ってたの?」
待ってた、
けれど「ずっと」の意味は今は違う。
約束の時間どおりに来たけれど3時間ほど離れている。
それでも本当にずっと待ち続けていた、だから正直に微笑んだ。
「待ってたよ周太、ずっと逢いたかった、」
今、さっきまで父と会っていた。
その前は祖父の墓前にいた、その前はあの店に独り座りこんだ。
けれど心ずっとこのベンチに座ったまま待っている、それはあの夏の雨から変わらない。
「待ってたよ周太、俺ずっと周太を待ってた、周太…いかないで、」
待ってた、だから行かないで?
この願いずっと告げたいまま夏は消えて、秋も冬も春も超えて今また冬。
この冬の一年前に見つめあえた約束をもう一度だけ繋いでほしい、その願いに抱きしめる腕もう解けない。
「行かないで周太、このまま俺から離れないで、行くな周太もういかないで、」
行かないで離れないで、唯ひとつ願いだけ声こぼれて頬ぬれてゆく。
それでも怖くて開けない瞳ごと抱きとめてくれる鼓動は温かい、その穏やかな心音が微笑んだ。
「ん…英二、公園もう閉まるから行こう?」
「嫌だ、」
駄々捏ねて腕そっと力こめてしまう。
今この腕を離したら消えていなくなる、そんな不安に優しい声は言ってくれた。
「大丈夫だよ英二、今夜は僕お休みなんだ…だから英二が帰る時間まで一緒にいるよ?」
今夜は休み、そう告げられて推測の正解を知らされる。
ただ一行だけの匿名記事、けれど事実だった全てごと抱きしめた。
「それなら朝まで傍にいてよ、だって…俺の帰る場所は周太だ、」
いま離れられない、だって離れてしまったら次いつ逢える?
こんなふう次があるかなんて解らないと最初から覚悟していた。
それでも今ほど次が解らないと想ったことはない、だって今日死線に行かせてしまった。
こんな現実に自分の無力は思い知らされる、けれど諦めきれない願いに抱きしめる温もりは微笑んだ。
「ん…ちゃんと外泊許可とってね?」
(to be continued)
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第78話 冬暁 act.7-side story「陽はまた昇る」
道に雪は消えた、けれど樹影は蒼白く埋もれる。
冬の夕暮れに公園の誰もが帰路、それでも奥へ歩いてゆく。
曇天の薄暮、さくり、踏みこんだ木下闇のベンチは誰もいない。
まわり埋める雪は足跡がある、その数とサイズに英二はため息を微笑んだ。
「俺の足跡だけ、か、」
もし待ち人が来たのなら足跡は残るだろう。
けれど見つめる靴跡は自分だけ、そこに重なるはずの人は来ない。
もう影蒼くなるほど陽は傾いた、そんな曇り空の夕暮れにもう一度だけ座りこむ。
何度このベンチに君と座っただろう?
「…夏だったな、最初は、」
ひとり記憶こぼれて常緑樹の影が夏になる。
初めて二人ここに座った夏の驟雨、あの横顔に重ねた想いが軋む。
いま雪の中ベンチに独り座りこんで、それなのに夏の雨の匂いと声が優しい。
―…こんな所で寝たら風邪ひくよ?
ほら、優しい声かすかに笑ってくれる。
あのとき好きだと自覚した、あれが自分の初恋。
男同士なのに恋愛なんてと正直なところ途惑った、けれどもう離れられなかった。
春から初夏、季節ひとつ共に過ごしてしまった隣の空気は居心地良くて、そして幸せが泣きたかった。
『泣けよ、宮田、』
泣いて良い、そう小さく微笑んでくれた。
まだどこか硬い貌だった、その硬さすら本当は優しさなのだと一瞬ごと気づき始めていた。
ぎこちない腕は泣いている自分を抱きよせて小さな胸を貸してくれた、頬ふれるワイシャツごしの鼓動が温くて安らいだ。
あのとき自分は決めてしまったのだろう、この唯ひとり護れるなら離れないでいられるのなら命すらいらない。
「なのに周太ごめん…なにも出来てなくて」
独り、現実のもどかしさため息ごと声になる。
いま12月、あれから1年半すぎて自分は何を出来たというのだろう?
そんな今の現状は救うなんて約束から遠すぎて、座った脚の隣の鞄が重たく昏い。
自分の鞄、そこに「奈落」から掘りだした半世紀前のパーツを救命道具に紛らせてある。
そして今日もまた書類一通しまいこんだ、もう過去の証拠ふたつ手にしたのに今あのひとはどこにいる?
「…ニュースは、」
思案ひとり声こぼれて携帯電話を開く、その画面に情報すぐ呼びださす。
いま16時過ぎた、閉園もう間近な刻限は今日一日の報道も流れるはず。
その現実を知るのは本当は怖い、それでも知らないよりずっと良い。
―だって周太、どんな現実も周太は俺が受けとめたいんだ、
想い祈りながら画面の記事を視線が追う。
ネットなら新聞やテレビより速いツールもある、その検索に心臓が停まった。
“ いま向かいのビルが窓割れた、なんか機動隊っぽいの突入したけど全員マスクしてる怖い何? ”
一般市民の匿名記事、ただ一行の文章。
けれど素人の声だからこそリアル生々しい、たぶん不安と好奇心から投稿した記事だろう。
今なにが起きているのか解らない不安と非日常性への好奇心、こうした混乱はある意味で無責任の傍観者だ。
だけど自分は当事者、それは警察官の立場よりも大切な人のために他人事でいられない。
「出たのか、周太…」
警視庁特殊急襲部隊 Special Assault Team 通称SAT
国内のハイジャック事件、テロ事件、強力な銃器を用いた事件に出動し篭城事件を鎮圧する。
狙撃班員は篭城事件やハイジャック事件において二十四時間体勢で遠距離からの監視、警戒を行う。
そして状況次第では犯人射殺も辞さない、そんな任務にある人ならば今日どこで何をしているだろう?
「周太、好きだよ…ずっと、」
想い声こぼれて瞳から熱あふれだす。
残雪に冷えてゆく大気へ熱そっと凍える、凍えた雫が頬ひとすじ冷たい。
はたり、顎から墜ちてまた一滴そっと辿りだす、あの夏もこうして泣いて優しい隣は受けとめてくれた。
何も言わずただ泣かせてくれる、それだけなのに安らいでゆく本音は嘘吐けなくて初めて恋愛に堕ちると自覚した。
無言でも居心地いい相手は初めてで、そして全て懸けても縋りたいと願って、それなのに自分は今なにが出来ている?
「は…罰が当たったのかな、俺、」
罰が当たった、なんて発想は一昨年まで無かった。
だけど今は想ってしまうほど心当たりが多すぎる。
―周太だけって約束したのに俺は、光一まで…雅樹さんみたいになりたくて、
誰もが語る美しい山ヤの医学生、彼と自分が似ているなら同じになりたかった。
彼みたいに生きたい、そう願ったから彼が唯ひとり愛した山ヤを自分のものにしたかった。
だから言訳ごと犯してしまった夜が望んだ全て壊していく、そして誰も傷つけてしまった自分は罰せられて当然だ。
けれど、その罪が今あのひとを死線に立たせたなら自分が赦せない。
「周太…俺は周太の邪魔してるだけかな、ほんとうは…いないほうが」
ひとりごと零れて鼓動が停まる、もう自分の存在すら解らない。
唯ひとり捉まえて抱きしめ続けたかった、離れたくない傍にいたい、だから選んだ全ては結局ただ自己満足かもしれない。
そんな自分だから今日ここに来てもらえなかった、それが任務の所為だとしても運命すべてが「逢う」こと拒んだのかもしれない。
「…っ、は…」
ため息ごと鼓動また始まり視界を瞑ってしまう。
もう二度とあの人に逢えない?そんな予兆に心臓ごと時間すべて停めてしまいたい。
だって逢えないなら、もう隣にいられないなら今なにをしても幸せなんて遠すぎて、もう嫌だ。
「ふ…っ、」
吐息また涙ひとつ零れだす、ほら本当の自分はこんなに泣虫だ?
唯ひとり望みたい人にもう逢えない、そんな現実を全て棄てたくなる。
今日も父すら脅して書類ひとつ手に入れて、けれど逢えないなら何になるというのだろう?
世界中すべて騙しても脅しても護りたくて欲しくて、それなのに今日の約束ひとつ壊されるほど運命はもう逢えない?
「…こんなところで寝たら風邪ひくよ?」
ほら、穏やかな優しい声また聞える。
この想い初めて見つめた瞬間の声、夏の雨に黒目がちの瞳は優しかった。
梢の雨音に樹影は青くて、青に横顔あわく白くて長い睫の翳にじむよう蒼い。
あの横顔に振り向いてほしいと願いながら初めての恋愛を見つめていた、その声が呼んだ。
「英二…泣いていいよ、」
今、誰が自分を呼んでくれた?
「あ…、」
幻を聴いているのだろうか、それとも現実?
解らないまま座りこんだベンチに穏やかで爽やかな香くゆらす、この香は知っている。
もう9月の終わりからずっと感じていない香、それでも懐かしい空気は頬ふれて体温に抱きしめられた。
「ごめんね英二、こんな…ごめんね、」
ほら、大好きな声が名前を呼ぶ。
いま抱きしめてくれる香は知っている、この頬ふれる温もり懐かしい。
懐かしくて想い募らされるまま腕が動いて縋ってしまう、もう抱きしめてしまった腰は細くて、けれど瞳が開けられない。
だって目を開けたら消えてしまうかもしれない、これは幸福の幻かもしれない、だから目を閉じたまま抱きしめる相手が微笑んだ。
「英二、雪のなか寒かったよね、ごめんね…ずっと待ってたの?」
待ってた、
けれど「ずっと」の意味は今は違う。
約束の時間どおりに来たけれど3時間ほど離れている。
それでも本当にずっと待ち続けていた、だから正直に微笑んだ。
「待ってたよ周太、ずっと逢いたかった、」
今、さっきまで父と会っていた。
その前は祖父の墓前にいた、その前はあの店に独り座りこんだ。
けれど心ずっとこのベンチに座ったまま待っている、それはあの夏の雨から変わらない。
「待ってたよ周太、俺ずっと周太を待ってた、周太…いかないで、」
待ってた、だから行かないで?
この願いずっと告げたいまま夏は消えて、秋も冬も春も超えて今また冬。
この冬の一年前に見つめあえた約束をもう一度だけ繋いでほしい、その願いに抱きしめる腕もう解けない。
「行かないで周太、このまま俺から離れないで、行くな周太もういかないで、」
行かないで離れないで、唯ひとつ願いだけ声こぼれて頬ぬれてゆく。
それでも怖くて開けない瞳ごと抱きとめてくれる鼓動は温かい、その穏やかな心音が微笑んだ。
「ん…英二、公園もう閉まるから行こう?」
「嫌だ、」
駄々捏ねて腕そっと力こめてしまう。
今この腕を離したら消えていなくなる、そんな不安に優しい声は言ってくれた。
「大丈夫だよ英二、今夜は僕お休みなんだ…だから英二が帰る時間まで一緒にいるよ?」
今夜は休み、そう告げられて推測の正解を知らされる。
ただ一行だけの匿名記事、けれど事実だった全てごと抱きしめた。
「それなら朝まで傍にいてよ、だって…俺の帰る場所は周太だ、」
いま離れられない、だって離れてしまったら次いつ逢える?
こんなふう次があるかなんて解らないと最初から覚悟していた。
それでも今ほど次が解らないと想ったことはない、だって今日死線に行かせてしまった。
こんな現実に自分の無力は思い知らされる、けれど諦めきれない願いに抱きしめる温もりは微笑んだ。
「ん…ちゃんと外泊許可とってね?」
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