萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

深夜雑談:掲示板的追従に

2014-05-26 23:30:00 | 思考雑談
先日ちょっと書いた繋がりで、なんとなく雑談します、笑

YAHOOテレビ欄の感想でナンだコレ思ったってコト先日書きましたけど、
削除依頼とかあるらしく、ドラマ擁護派が疑問視派の感想を削除依頼したりってコトもあるそうです。
ドラマの評価ポイントを上げたいって言う意図なんだろうけど=ソレって捏造と変わらないコトを気づいていないアタリ驚きます。

この間も取り上げた某ドラマの感想欄はソレが酷いみたいですね、
こういうの異常だなって思うのは自分だけじゃないみたいですけど、率直なとこクダラナイ低レベルな話だなと。

自分が賛美したいから反対派を批判する、またはその逆批判、こういう咬みつきあいに何の意味を見出しているのか?

そんな咬みつきあいは幸せな姿とは言えないって思うんですけど、
こういう事態を産んじゃった自体からソウイウドラマは良作ってもう言えないんですよね、
いわゆる創作物は不幸対立を産むシステムであるならば=マイナス思考を創作してるってコト、それは「創作」される意義すら否定だろなと。

ひとつの存在、ひとつの個性、ひとつの人格として認めること。
そこには率直な賞賛と叱咤の両方が必ず生まれます、その意見が生まれた以上どっちも正解です。
それは身障者でも難病患者でもサッカー選手でもドッカの社長でも、不細工でも美形でも、誰でも同じに両方ある。
そういう「同じ」っていう観点から考えた時、持っている能力や性格や命の期限も冷静な敬意をもって見ることが出来るかなと。
こういう観点は相手に対しても自分自身に対しても欲しいトコです、

ソレがナンダコレなったドラマ感想には希薄で、率直なトコ主演俳優さんが可哀想になりました。
彼が演じたのは「特別扱いされる身障者」って役ですけどリアルの彼も特別扱い阿諛追従な星5感想に囲まれている、
あれだけアンチが今も騒ぐって言うのはそれだけドラマの脚本演出に問題があるっていう評価でもあります。

それを冷静に受け止める必要はあるんですよね、真面目なプライドある人間なら。
が、ファンの人は盲目的に賞賛してる、コレってダメ男を作っちゃう阿諛追従女と同じなんですよね、笑

ドラマならファンタジーで良いじゃないですか?

なんて意見を書いちゃってる擁護派さんもいるんですけど、ファンタジー=妄想だってコト解かって言ってるんだろうか?
創作モンだとしても現実リアルを舞台に描くなら、そこに混ぜ込まれた妄想は現実だと思われやすい、そして誤解が生まれます。
こういう誤解が偏見に繋がってしまうことは実際に少なくありません、ソレが原因になったトラブル発生も現実です。
特にドラマは公共電波=公認事実を放送してるんだと思いこませやすい側面があります。

妄想を公共電波に乗せることが「良いじゃないですか?」って言える論理は、無責任BLとも同類だろなって思います。

BLマンガや小説が妄想を描くことは偏見を産みやすい←同性愛は少数派=事例サンプルが少ない分だけ妄想を事実だと誤認されやすい

っていう少数派=誤解が生まれやすいってコト載せたことありますけど、身障者を描くことも同じです。
身障者が「障害がある」って言われるってコトは「障害があることが少数派」だからでなワケです、要するに事例サンプルが少ない、
その少なさが特別扱いも誤認も誤解も生む、そうした誤解の結果、対等な人間関係が築けるって思いますか?

ファンタジー=現実乖離を描くことは誤認された無理解を生んでしまう可能性がある、

間違った理解からは誤解しか生まれない、
誤解からは結局のところ鬱屈になってゆく、そして「解ってもらえない」って孤独が出来上がる、
そうやって少数派、マイノリティを囲い込んで壁は生まれて「可哀想だから理解する」が正義で常識になってゆく、それが妄想の困る点です。

こんなんが正義常識ヅラしてんのってヤバいんですけど、こういうの妄想ちっくな自己完結恋愛でもよく聴く話でもあるなと。
マトモな人間なら追従と認容の判別くらいできます、が、ソレが出来ない馬鹿なんだと想ってるからオモネリ発言も効果的だと誤認してるのかなとか。
どっちにしてもWEBテレビ欄の感想コーナーで排他的空気クダラナイ喧嘩モード&ファンオフ会の掲示板化はマナー違反だろって驚きます、笑

で、思っちゃうんですよね、
コンナマナー違反マトモじゃない人達に絶賛されるようなドラマはツマンナイんだろなと。
主演俳優さんを支持したいんだろうけどアレじゃ妄想恋愛ストーカーと同レベル、いわゆる粘着になってんの気づかんのだろなと。
そうやって周囲の盛りすぎムードが異様な印象を作っちゃって結果、盛られてる本人を嫌いにさせるってあるんですよね、
そうやって嫌わせることで「ワタシだけが理解者でホントのファンなのよー」になるコトが意図なんでしょうか?

好き、

って気持ちは楽しい幸福感情のはず、
ソレが周りを攻撃する動機になってしまう、そういうクダラナイ感情変転してる。
恋は盲目とか恋愛=最も愚かな感情とかソンナ格言通りなのかもしれないけど、本人も周囲も幸せ気分の「好き」でいられたらイイのになあと。

自分が書いている小説の登場人物を好きだとメッセージ頂くことありますが、
いろんな解釈を聴かせてもらうんですけど、お気に入りにからむ相手をコキオロス意見に驚いた事もあります、笑
それくらい感情移入するほど好いてもらえるのって光栄なんです、が、上述の某感想欄みたいな排他的には発展して欲しくないなと。
ここで小説を無料掲載しているのは、読んでもらって泣いたとか笑ったとかナンカしら楽しんでもらえたらなって意図で続けているので。

ってワケなんで、読んで面白かったり考えたりしたことあったらコメントorメールメッセージなど聴かせてくれたら嬉しいです、笑
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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚103

2014-05-26 00:15:07 | 雑談寓話
眠いです、で、日曜夜なんで早く寝たいです、
眠い上にダウントンアビー観ちゃって第76話の加筆も途中なんですけど、笑
そんなワケで短めになりますが続き書きます、バナー押して下さる方へ感謝で、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚103

7月の連休深夜2時すぎ@横浜元町フランス山、
の脇を登っていく谷戸坂は街灯ほの明るくて静かだった、
だって左側は丘の森=真っ暗け、で、御曹司クンが言った、

「あのさーこんな道こんな時間ってどうなんだよ?」

どうなんだよ?の意味がなんなのか位わかる、
だから楽しくなってSってみた、

「ココで物足りないんなら外人墓地の坂にも行ってみよっか、夏には良いトコだよ?笑」

肝試しならアッチの坂のが良いよね?
なんてトーン笑ったら御曹司クンは首振った、笑

「ちがっ、そんなん行きたくねえってば、」
「だったらソコの山から登ろっか、領事館だかの跡地が廃墟の雰囲気残っててイイよ?笑」

そういうコースも楽しいかも?
って想ったから坂から公園の方へ行こうとして止められた、

「この坂で良いってば、廃墟とか今要らないってばっ、」

ちょっと真剣に嫌がってくれている、
そんな貌に可笑しくてついからかった、

「へえ、怖がっちゃってるカンジ?意外と怖がりだね、笑」
「っ…い、いいじゃん怖がりだってさーってかコンナ場所夜中に歩いた事ねーもんねっ、拗」
「残業で終電とかってあるじゃん、アレだとコンナ時間に家まで歩くだろ?笑」
「タクシーだもんね俺、歩くとかナンかヤダしさー拗」

なんて坊ちゃん発言してくれて、
それもイイネタだからいじめてみた、笑

「歩くの嫌なんだ?だったら今もツマンナイよね、ごめんね?笑」

気づかなくって悪いね?
ってカンジの貌しながら笑ったら御曹司クンまた首振った、

「嫌じゃないってば、今俺すげー楽しいもん、深夜の遊園地とか深夜の散歩ホントおまえと歩けて楽しいし、」

ほんと嫌じゃない、楽しいよ?
そんな貌があわい街燈の光にも見えて、ちょっと二つ感情が起きた。

こういう貌でいつも笑ってたらイイのに?
こんな嬉しそうな貌させていてイイのか?

ホントこんな貌でいつも誰にも笑っていたら御曹司クンはもっと違う、
自分の同期が言っていたような台詞を言われることも無くなる、家族とも変わるかもしれない。
そんなふう想わされるほど御曹司クンの笑顔は幸せそうで、幸せそうだから自分への感情が痛いなって想って笑った、

「ソンナに自分と歩いて嬉しがるなんてさ、ホント飼い犬みたいだね?笑」
「っ、あーもーまたイジワル言うんだからさー、拗」
「意地悪なんだから仕方ないよね?笑」

最初からそう言ってるだろ?って笑って、
そしたら御曹司クン拗ねながら照れ笑いした、

「そーゆーことサラって言っちゃうとこ好きなんだよなー拗×照笑」

ほんとこいつ重症だ?

あばたもエクボとかって聴いたことあるけどアレみたい、
こんなんでホントこいつ大丈夫かよって思いながら、それでも今夜を誘ってしまったのは自分だった、

こういう重症だってコト解かってる、
ソレが御曹司クンにとって現実を辛くする可能性も知っている、だって彼は「御曹司」だ?
そういう立場にある人間が家より誰か一人を選んで、それも結婚って言う体裁の叶わない相手なコトは結果、キツイだろう?

「御曹司クンってホント馬鹿犬だね?笑」

ホント馬鹿だ?
そう思ったまんま笑った隣、街燈の灯りに素直な笑顔が言った、

「ホント俺って馬鹿だよーでもさ、こういう馬鹿は気持ちいいなって想ってるし、笑」

ホントそういうコト言うなよ?って想った、

こういう馬鹿が気持イイなんて自分に言ってほしくなかった、
ホントに馬鹿になるべき相手はドッカにいる、それは自分じゃ無いことくらい解かって欲しい、
だけど今それを言って解ってもらえるかなんて30%に満たない可能性で、それでもSってやった、

「こっちはメンドクサイなって想ってるけど?笑」
「う、めんどくさいとか酷えこと言うなよーこんな深夜に哀しいじゃん、拗凹」
「哀しかったら別行動しよっか?自由ひとり気ままってのもイイよ、笑」
「そんなこと言うなってばもーー拗×笑」

なんていう会話しながら谷戸坂または別名フランス坂を登りきって、
無人の交番前から信号を渡った先、着いた場所に御曹司クンは笑った、

「おーーここってイヴの時に来た公園だよな?うれしーな、笑」

ほんと嬉しい、って貌が笑ってくれる公園は静かだった。

連休中日の深夜に公園を歩くモノ好きなんて滅多にいない、
そんな物好きになってる自分たちが可笑しくてSってやった、

「蚊の餌食になってね?自分はかゆいの嫌いだから、笑」
「またそーゆー意地悪言うなってば、でもオマエの身代わりなら血吸われてもイイ、拗×照笑」

なんて台詞にまたそーゆーコト言うなってばって思って、
そんなこと思いながらも自販機で好きなもん買って、ペットボトル片手に好きなベンチへ座った、



第76話「霜雪6」写真貼り直しVer掲載しました、
加筆校正まだ3倍くらいします、ソレ終わったら短編連載かなって予定です、

取り急ぎ、



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第76話 霜雪act.7-side story「陽はまた昇る」

2014-05-25 23:05:00 | 陽はまた昇るside story
artifice 虚実の現



第76話 霜雪act.7-side story「陽はまた昇る」

缶コーヒーつけた唇から温めの冷感すべりこむ。

ほろ苦い香の向こうテーブルは書類を眺めて話し合う。
スーツ姿たち4人と空いている1席、その待ち人が扉を開いた。

「お待たせしてすいません、」

穏やかに快活な声が入ってくる、そのトーン普段と変わらない。
いつもながら穏やかで実直な公人に山ヤの警察官が笑いかけた。

「待ちくたびれたよ蒔田、缶コーヒー温くなったんじゃないかい?せっかく宮田が買ってきてくれたのに、」
「え、?」

短く声こぼれて蒔田がこちら見る。
その一瞬の驚愕に英二は微笑んだ。

「お疲れさまです、蒔田さん。缶コーヒー、買い直してきましょうか?」

今ここに自分が居ることは蒔田にとって意外だろう?
けれど「意外だ」と周りに知られたくない、そんな意志に官僚は瞬きひとつ笑ってくれた。

「ありがとう宮田くん、ちょうど喉乾いていたんです。これも飲むけど、もう一本冷たいのもあると嬉しいです、」

笑ってくれる瞳はもう落着いている。
この程度の対応力が無かったらノンキャリアから伸上れないだろう、そんな信頼に笑いかけた。

「じゃあ買ってきます、ブラックでよろしかったですか?」
「ブラックでいいよ、ついでにコピーもお願い出来ますか?いま原本を渡すから、」

携えてきたファイル開きながら此方へ来てくれる。
けれど日焼あわい貌すこし首傾げ、困ったよう笑った。

「すみません、部屋に置いて来たようです。悪いが一緒に来てくれますか?」
「はい、」

応えて直ぐ立ち上がりながら意図もう解っている。
そんな隣席から澄んだテノールが笑った。

「蒔田さん、俺の可愛い部下をドコ連れてくんですか?」

部下をどこに連れて行く?
そんな言い回しに知らされる、きっと気づいているのだろう。

―光一は誤魔化せないな、やっぱり、

この男は自分に並んでしまう、そう解っているからパートナーに自分こそ望んだ。
だから惹きこんで利用してしまった、けれどもう離れる約束に英二は綺麗に笑った。

「ちょっと行ってきます、国村さんが話し進めていてくれますか?」
「すぐ戻るんならイイよ、」

ちゃんと戻ってこいよ?

そんな言葉で笑ってくれる瞳は底抜けに明るい。
こういう眼差しくれるから好きになった、だから負った罪悪感ごと笑いかけた。

「はい、すぐ戻ります。中座をすみません、」

会議の席へ頭下げてすぐ歩きだす。
扉開いて廊下へ出、肩並んだ官僚はこちら見て笑った。

「先を越されていると思わなかったですよ、宮田くん?」

どうして自分より先に戻っているのか?
そんな疑問は当然だろう、その問いかけに微笑んでエレベーターボタン押した。

「どうぞ、」

開かれた扉へ入り笑いかけて、すぐ上司も乗りこみエレベーター動き出す。
けれど互いに言葉ないまま階に着き降りて、また同じ部屋に入ると英二は微笑んだ。

「蒔田部長、書類はそちらですか?」

問いかける視線にスーツ姿の腕を見る。
そこにある書類ファイルを開き官僚は笑った。

「やっぱりバレてたか、これを6部お願いします、」

笑ってファイルから書類3通とり出してくれる。
受けとって目を通しながら意図の解答を笑いかけた。

「先回りの方法を聴きたいんですか?」

きっと聴きたいだろう、蒔田なら。
その推測に眼差しの鋭利が笑った。

「セキュリティの為に教えてくれ、どうやって君は出たんだ。ここは密室だったはずだろう、俺が扉の前に立っていたんだからな?」

種明かししてほしい、そう視線に言葉に求めてくれる。
けれど解答すべて言う必要もない、そんな相手に微笑んで英二は部屋の窓へ歩みよった。
そこに一ヶ所だけあるレバーハンドルを目視で確認する、その背後に靴音は来て問われた。

「この窓から出たのか?でも…さっきも施錠されていたぞ、どうやって、」

地上はるか数十メートルの窓は今、施錠されている。
硝子には罅一つ無い、この現状に微笑んだまま振り向き問いかけた。

「蒔田部長、建築基準法施行令をご存知ですか?第126条の7の四、」

建築基準法施行令
第126条の6 建築物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階には、非常用の進入口を設けなければならない
第126条の7 前条の非常用の進入口は、次の各号に定める構造としなければならない
 一 進入口は、道又は道に通ずる幅員4m以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に設けること 
 二 進入口の間隔は、40m以下であること 
 三 進入口の幅、高さ及び下端の床面からの高さが、それぞれ、75cm以上、1.2m以上及び80cm以下であること 
 四 進入口は、外部から開放し、又は破壊して室内に進入できる構造とすること 
 五 進入口には、奥行き1m以上、長さ4m以上のバルコニーを設けること
 六 進入口又はその近くに、外部から見やすい方法で赤色灯の標識を掲示し、及び非常用の進入口である旨を赤色で表示すること
 七 前各号に定めるもののほか国土交通大臣が非常用の進入口としての機能を確保するため必要があると認めて定める基準に適合する構造とすること

この「非常用の進入口」は設置条件のクリアが難しい。
その場合「非常用進入口に代わる窓」通称「代用進入口」の設置で代えることも多いが第126条の7の四は同じでいる。
また31m超のビルには非常用エレベータの設置義務があるが、その場合も進入口の設置を消防から要望されることも多い。
そして近年は45m級のはしご車を装備する消防署も増えており、これに応じて45mまで進入口の設置も要請すると教わっている。
こうした現状と法令から今この窓に脱出は叶えられた、この知識をくれた経歴と偶然に微笑んで佇む前、警察官僚はため息と笑った。

「それを読めばヒントだってことか、そんなことまで知ってるなんて本当に勉強家だな?後藤さん達が言う通りだ、」
「教えてくれる人に恵まれてるだけです、」

素直に答えながら自分の幸運を信じたくなる。
この「消防の要請」を知ることが出来たのは偶然の貌した運命だろう?

―落雷があったから教えてもらえたんだ、山火事のお蔭だな?

秋、第七機動隊第2小隊での現場訓練で落雷に遭った。
そのとき被雷した木を消火している、それが消防から表彰され対談する機会をくれた。
そこで何げなく聴いた話が自分を援けてくれる、こんな偶然の廻りに山ヤの警察官僚は笑ってくれた。

「それにしても、よくこの高さから降りたな?人目も気にならなかったのかい、」
「街路樹が隠してくれます、良い角度です、」

問いかけの一部だけ答えて眺める眼下、冬枯れの梢は道路を遮らす。
あの樹影が視界を遮って死角を作ることは先月、もう確認しておいた。

『もうすぐ誕生日だな、周太?…もう少し待ってて、』

大切なあのひとが居るかもしれない、逢いたい。

そんな想いと見あげた高層の建造物は街路樹に遮られていた。
あのときは黄金まばゆい梢、けれど今は黒い枝がモノトーンに翳を編む。
それでも今こうして佇んだ空間と繋がるどこかに居るのだろうか?そう願い辿る横から低い声が笑った。

「先月の時に下見しておいたのか?本当に君は食えない男だな、こんな所でボルダリングしたんだろう?度胸も技術も普通じゃない、参ったよ、」

普通じゃない、確かにそうだろう?

あの祖父の孫であること自体が普通じゃない、それが嫌でずっと逃げていた。
けれど今日ここで使ってしまったIDとパスワードに退路を自分で絶っている、それでも後悔は無いまま微笑んだ。

「本当に参ったと思うなら蒔田さん、俺の言う事に従ってくれますか?ご迷惑はもう掛けていますけど、」
「迷惑ってパソコンを貸したことか?」

さらり答えてくれる声が笑っている。
覚悟の上で貸してくれた、そんな笑顔に笑いかけた。

「アクセスした端末の跡は残ります、たぶんメンテナンスだと言って蒔田さんのパソコンは回収されるでしょう。でもキーボードを拭くとかしないで下さい、」

ファイルにアクセスした端末はどれなのか?
その痕跡は何の対処もしなければデータ上に残ってしまう。
だからこそ御岳駐在所では技術のある光一に頼んでいた、けれど今は隠す必要がない。

「むしろ痕跡を見せろと言うことか、」
「はい、」

問われて頷いた前、穏やかな瞳が見つめてくる。
静かで凪いだ眼差し、けれど鋭利な底に英二は綺麗に笑いかけた。

「このまま見せれば蒔田さんの疑いは消えます、さっきシャットダウンしなかった理由を訊かれたら確かに切ったはずだと言い張って下さい、
休止状態やスリープにしても切れないことは良くあるから大丈夫です、後は相手が勝手に理由を考えてくれます。蒔田さんには証人も多いですから、」

蒔田は部屋の前で立ち話をしていた。
その相手は確実な証人になる、廊下を通った人間もいた。
それに監視カメラも有利を運んでくれる、そんな推測に上司は尋ねてくれた。

「俺のことは良い、でも君こそ廊下のカメラに映っているんじゃないのか?」

きっと自分も映っているだろう?
それこそ目的の近づける幸運に英二は微笑んだ。

「その方が面白いです、」

ノックせず入室した姿、蒔田に連れられて入室して、そして退出する姿。

監視カメラに映った3つのスーツ姿を、あの男は誰の姿だと見てくれるだろう?
あるべき画像がひとつ欠けている、そんな現実からあの男は「誰」に結論づけるその貌は?

―執着が強いほど自滅してくれる、だから、

そんな想像に可笑しくて笑いたくなる、どんな貌するのか観てやりたい。
こんなふう面白がってしまう自分と佇んだ窓の眼下、黒い樹翳はアスファルト長く日暮れてゆく。
今は冬、そう思い知らされる眼下の墨彩にもう時が近い、そんな現実の真中で願いひとつ微笑んだ。

今夜、電話したら出てくれる?



(to be continued)

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚102

2014-05-25 00:20:09 | 雑談寓話
4時半起きでさすがに眠いです、笑
だから短めだけどバナー押して下さったみたいなので書きます、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚102

連休中日@桜木町で同僚御曹司クンと呑んで、
17時から座ったダイニングバーは1時閉店、その定刻が来て店を出た。
当り前だけど深夜かつ終電すら行ってしまう時間、で、御曹司クンが尋ねた。

「あのさ、ホントにオールで呑むわけ?」

当り前だけど深夜&終電な時間、そんな時間から他に何があるんだろう?
それともアレな提案なのかよっていう現実的状況から可笑しくて笑った、

「呑む他にナンカ提案したいワケ?笑」

ホントに提案したいのかな?
そういう深夜なトーン笑ったら御曹司クン拗ね照れた、

「…ってイジワルすんな呑むよバカっ、拗照」

イジワルだって今夜もう何回目だろう?
そんなカウントも可笑しくて笑った、

「さっき他に呑むって発想あるっぽかったよね、教えてよ?笑」
「だ、からっ、そーゆーのマジおまえには違うんだって言ってんだろバカっ、拗」
「ふうん、なにが違うって言ってんだっけ?笑」
「…言わせて断るくせにバカっ、拗」

なんてカンジの会話しながらナントナクみなとみらいを歩いて、
並んだビルたちのホテル階は灯りが多かった、で、Sってみた、

「ホテルの稼働率も良さそうだね、予約満室ってカンジ?笑」
「だーかーらっ、そういう話題に振るなってS変態バカっ拗」
「ナニが変態なワケ?ただ稼働率の話をしてるだけでさ、笑」
「っ…もーほんとSだ今夜ずっとこんなかよもーーっ拗×笑」

そんなとりとめない話に笑ってたアタリ深夜モードだったと思う、笑
もう1時の真夜中過ぎだけど人わりと歩いていて、連休中日なカンジに思いだした、

「今ってガッコは夏休みだったね、笑」
「あ、そうだなーだから人も多いんだな、」

とりあえず納得しながら入江沿いの道を歩いて、
そしたら広場のアタリ人が集まっていて、その真中に懐かしくって笑った、

「大道芸やってるよ、観てこ?笑」
「え、?」

なんだろう?

って首傾げた御曹司クンを手招いて、
広場を囲む人群れに並んで立ったら嬉しそうに笑ってくれた、

「すげーなー、こんな時間にパフォーマンス観られるんだ?笑顔」
「たまに深夜も演ってるんだよね、笑」

なぜか深夜も演ってることがある、
そういう方がむしろ好きだから観たかった、で、御曹司クンも見ながら訊いてきた、

「たまに、って前も見たことある?」
「あるよ、深夜の大道芸って不思議なカンジで面白いだろ?笑」

思ったまま答えて、改めてそうだなって観ながら思った、
普通なら帰宅している時間に人集まって不思議な芸を見せてもらう、
そういうの小さい頃に読んだ外国の話と似ているっぽくて面白い、そんな今に御曹司クンも笑ってくれた、

「うん、昼間見るよりなんか良いなー集まってる人の空気が温かい、笑顔」
「だね、笑」

そんな言葉交わしながら見ている真中でアレコレ披露されて、
囲んだ人たち拍手したり笑ったり、時おり海からの風が意外と寒くて、寒い分だけ人の輪が温かかった。

で、パフォーマンスも終わって開かれたヴァイオリンケースにチップ投げ入れて、
人の輪も解けるまま海沿い歩きだしたら御曹司クン訊いてきた、

「なあ、どこに向かってんの?コッチって店とかもう開いてないんじゃね?」

確かに言う通り、みなとみらいからワールドポーターズ方面の店は1時過ぎたら開いていない、
けれど深夜にしか見られない景色ってある、そういう道を歩きながら笑った、

「閉まってるから面白いってあるよ、ソコとか、笑」

なんて指差して笑ったら御曹司クンそっち見て、
そのまま見あげて笑ってくれた、

「おー夜の遊園地って俺、初めて見たー笑顔」

みなとみらいは小さいけれど遊園地がある。
深夜1時じゃ当然クローズ、だけど街燈やナンカに照らされた園内は雰囲気ある。
いつも昼間なら賑わっている場所も真夜中なら違う貌、そういうの面白いから笑った、

「だろ?深夜の遊園地を見られるって面白いから、笑」
「ほんと面白いな、こういうのいいなー、笑顔」

なんてカンジに御曹司クンご機嫌になって、
人通り少なくないレンガ倉庫の別世界を見ながら歩いて笑って、
海沿いの陸橋ずっと歩いていって深夜の大桟橋を見て、ふっと御曹司クン笑った、

「ここってイヴの時も来たよな、あんときは人が多かったなー、笑顔」

あの夜のこと憶えてるよ?
そんな笑顔すこし気恥ずかしそうで、その意味が解るけど普通に笑った、

「だね、今は無人でまた違うだろ?笑」
「だなー全然違うカンジだな、静かでさー笑」

なんてカンジに御曹司クンも返事を返してくれて、
その歩いている恰好も夏の今はクリスマスイヴと全く違う、そんな時間の経過がなんか不思議で、で、思った、

まだホントに好きとか想ってるのかな?

想いに変化はあるだろうか?
そんなこと考えながらも笑って歩いて、山下公園に着いて、
やっぱり人がいない静かな街燈の下を歩きながら御曹司クンが笑った、

「ここも人いないなーホントあのときと別の所みたいんだな?笑」
「だね、笑」

ほんとに別の場所、で、気持も別になったろうか?
それとも変わらないだろうか、どうなんだろ?なんて考えながら公園縦断して、
そのままポーリン橋を渡って元町方面へと跨ぐ大通りも車は居ない、そんな街は眠ってるみたいでつい言った、

「世界で起きてるのって今、自分らだけなカンジするね?笑」

無人の世界はどこか余所余所しい、それが異空間っぽい、
そういうの面白いなって笑って、そしたら御曹司クン微笑んだ、

「ホントおまえと二人だけになれたら良いなー笑顔」

そんなこと本気で言うのかよ?
って想ったからそのまんま茶化してやった、

「ソレはお断りだよ?笑」


Aesculapious「Saturnus4」+Favonius「少年時譚10」読み直し校正したら校了です、
深夜に取り急ぎ、




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山岳点景:森の春、夏の風

2014-05-24 23:30:06 | 写真:山岳点景
青、空に地に、



山岳点景:森の春、夏の風

小田代ヶ原から戦場ヶ原@奥日光を歩いてきました。
標高1,400mの5月は早春、落葉松の芽吹ようやくな森は渋い色彩です。



水も穏やかな川は5月から釣りも解禁、
まだ冷たそうな水、けれど気温も高い晴天の今日は朝と帰路で色彩も変わりました。

で、足許に見つけた春に咲く竜胆、筆竜胆です。



花の大きさは1cm位で小さいです、けれど青色が目を惹きます。
日が当たっている時だけ花開くので雨天は閉じ気味、で、晴れた朝だったので色んな貌を見られました。




菫の群落もあちこちで咲いています、
少なくとも5種類くらい見ました、下は立壺菫だと思います。




まだ冬枯れ残る湿原は渋い色味、
けれど貴婦人ってあだ名の白樺も若葉まとい始めます。




小田代ヶ原は湿原というよりも原野ってカンジです、
森の中を歩く+人気も少ない+鹿やツキノワグマの棲息地なので登山装備が無難です。
最初のしゃくなげ橋を渡ると大半が林間コースなんですが飽きが無いってとこが不思議です、笑




戦場ヶ原は湯川沿いに木道コースをめぐるんですけど、
流れ涼やか&広い木道なのでスニーカーでもコッチは歩けます、



で、帰り道の中禅寺湖からいろは坂はアカヤシオツツジが綺麗でした、



こんな感じに遊んでたんで校正まだ途中です、笑

Aesculapious「Saturnus 予祝の刻 act.4」もう一回読み直したら校了です。
Favonius「少年時譚act.10」UPしました、こっちも読み直し校正ちょっとします。

眠いんですけどたぶん雑談ぽいやつ少し書きます、バナー押して頂いたみたいなんで、笑

取り急ぎ、




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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚101

2014-05-24 00:53:06 | 雑談寓話
星乃珈琲で夜茶したんですけどスフレなんとか美味しかったです、
で、明日は早いんで今夜ちょっと短めにはなりますが続き書きます、
楽しんでもらえたら嬉しいです、バナー押して下さった方に感謝こめて、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚101

連休中日の夕刻@桜木町改札で同僚御曹司クンと待ち合わせて、
夏22時くらいのダイニングバーは席は埋まっているけれど窓の個室は静かだった、
日曜の連休中日だから人も多いけれど空気ゆったりしている、そんな休日の空気に御曹司クンが訊いてきた、

「あのさー…今日って何時まで?明日とか早いんなら、早く帰らないとだよな?」

早く帰らないとだよな?

こんな訊き方って早く帰りたくないってこと?
そんなこと思ったのと明日は予定特になかったから思いついたまま言ってみた、

「朝まで呑む?笑」

なんとなく今夜はソレも良いかなって思って、
だけど言ってから意味勘違いされそうなこと気づいて、そしたら御曹司クン羞んだ、

「あ、のさー朝まで呑むって酒オールで呑むってコトだよな?」

フツーなら確認するまでもないんだけどね?笑

でも御曹司クンなら確認したがるだろうって解かる、
そして勘違いしたいのも解かる、でもいつも通りSってやった、

「酒じゃなかったらナニ呑むツモリなわけ?笑」

なんて質問したら真赤になる?
なんて深夜モードな応答したらやっぱり真赤になった、笑

「っ、お…っおまえなにいってんだよばかっ、拗×照」
「へえ?ナニそんなキョドってんの、ナンカえろいことまた考えてる?笑」
「ぅあ、おまえまたからかってんだろばかっいじわるS極悪人ばかっ、拗照」
「極悪人ってほどでも無いと思ってたけど?笑」
「だ、…からーっもうちょっと黙れっ、拗赤面」

なんてカンジの会話して、
ほの明るいランプの下でも御曹司クンの貌が赤いのが解かった、笑
困りながら拗ねながら、でもなんだかんだ楽しそうな貌が面白くてまた弄ってみた、

「この店って1時でクローズなんだよね?追い出されちゃったら行先ってさ、やっぱアソコって感じ?笑」

こんな言い方したらなんて発想するんだろ?
そんな意地悪いひっかけに御曹司クンはハマってくれた、笑

「っ…え、なに?それって、」

あー呼吸停まっちゃいそうな貌だ?笑

いま世界から空気が消えてしまった、時間も停まって鼓動も停まる、
そんな貌してくれてる目は大きくなって子供みたいな貌で、なんか可愛かったから笑った、

「ははっ、おまえ子供がびっくりしたみたいな貌になってる、かわいいね?笑」

ほんと子供みたいだ、いろいろと?笑
そんな素直な感想にビックリ顔は拗ね顔に変化した、

「っ…なんだよもーーまたからかってんだろっ、なんだよ俺でうっぷんばらしってカンジで呼びだしてんだろっ、拗」
「晴らすほどの鬱憤も無いと思うけど、からかうのは楽しいよね?笑」
「なんだよもうっ、マジメにもう聴いてやらねー拗」

なんて会話はいつも通りのパターンで、
そんないつも通りに職場や資格試験やらの話もして、最近面白かったコトの話して、

で、そんな会話に笑ったり拗ね顔見たりナンダリしていたら、1時が来た、



Aesculapious「Saturnus4」読み直し校正したら校了です、
深夜に取り急ぎ、




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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚100

2014-05-23 01:40:38 | 雑談寓話
晴れのち雷雨だった今日ですけど、載せた本編閑話にも書いた通りドラマの感想一覧に驚きました、笑
あそこまで盲目的だと主演俳優が逆に可哀想だなって思います、ヒドイ言い方だけどアアいう絶賛ぶりはキモイ、
オモネリ阿諛追従ってカンジがキモチ悪い、上滑りな賞賛されてもマトモな男だったらプライド傷つくよなって思います。
ってソレこそ同情なんですけど、で、この雑談ぽいのも楽しんでもらえたら嬉しいです、バナー押して下さった方に感謝こめて、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚100

連休中日の夕刻@桜木町改札で同僚御曹司クンと待ち合わせて、
夏の17時のダイニングバーは空いていて個室に座ってノンビリ呑み始めて、
ちょっと夕焼けの始まった頃、ちょっと遠慮がちに御曹司クンが訊いてきた、

「なあ、その付合ってた人ってさ、いつから付合ってた?…クリスマスの前からとか?」

なんか核心な質問だよね?

クリスマスは御曹司クンにとって意味がある、そう解かるから訊いてくる気持ちも解かる、
だけどホントのこと答えたところで何になるんだろう?
とは思ったけどありのまま言ってみた、

「クリスマスはその人とデートだったよ?笑」

ショック受けるのかな?
それとも冷静なのかな?

そんな推定ふたつと見た真中で御曹司クンは少し笑った、

「あのとき付合ってたってことかー…イヴの夜んときは、さー…」

イヴの夜、って台詞に言いたいこと解かるなって想って、
だけど違っている互いの感情だから正直なまま笑った、

「クリスマス前の駆け込み告白ってカンジだったよ?向こうからしたら、恋人いないと寂しいからってカンジだったんじゃない?」

たぶんソウイウコトだったろなって思う、結局は。
クリスマスに一人は寂しい、そういう見栄みたいな告白は結局のトコ憶えていない、
あのとき何て言われて付き合うことになったんだろう?そんな記憶を探す気にすらならないまま御曹司クンがため息吐いた、

「なんだそれー…俺ばっか真剣でナンカ馬鹿みたいじゃん、」

確かに馬鹿かもしれない、でもソレで良い、
そんなふう想えたまんまSってみた、笑

「馬鹿でイイじゃん?笑」

ほんと馬鹿みたいだ、こんなに一生懸命になってくれて?

そういう御曹司クンは可笑しい、だけど嬉しくないって言ったら嘘になる。
ほんと報われっこないくらい解かればイイ、それなのに御曹司クンは拗ねながら笑った、

「どーせ馬鹿ですよーナンだよまた余裕の貌しちゃってさー拗×笑」

いつもの拗ね笑いしてくれる、
そういうのナンカ安心出来て面白くなって、具合悪かったのについ言った、

「馬鹿ついでにもっと馬鹿なことしよっか?笑」
「え、?」

何言われたんだろ?

って目を大きくして御曹司クンこっち見て、
困ったような照れたような貌がまた可笑しくてSってみた、

「おまえ今ヤラシーこと考えたろ?ホント馬鹿だねえ、笑」
「っ、なんだよまたからかってさーほんとSイジワルだっ、拗」
「だから性格悪いよって最初から言ってるだろ、忘れっぽいね?笑」
「ほんっと性格悪いよなーあーもうナンデこんなやつ好きなんだろー拗×笑」

なんて会話して笑って、
それから資格試験の話や仕事の話、学生時代のコトやら他愛ない話になって、
箸動かしながら呑んで笑って、窓は日没から夜になって街灯りが綺麗になりだした、

「おー夜景きれいだなー横浜って良いなー笑」

ってカンジに御曹司クンはご機嫌になり、
酒の酔いもあるのかご機嫌サンなまま笑ってきた、

「私服だなー私服イイよなー…休日におまえとサシ呑みで晩ゴハンとかって幸せだー笑」

なんかすっかり出来上がってるよね?笑

なんだか素直すぎる貌になっちゃってる、そんな笑顔は子供みたいだった、
こんな貌して今は笑ってくれる、でも家に帰ったらどんな貌してるんだろう?
そんなこと考えながら升+グラスになってる日本酒のんびり飲みだしたら御曹司クンが訊いてきた、

「なーソレ旨い?笑顔」
「まずかったら呑まないよね?笑」
「だよなー笑」

なんて笑って、で、ねだられた、

「あのさーその酒ちょっと俺にも呑ませてよ?照笑」

これってつまりソウイウ意図だろな?笑

って解かったから日本酒のグラスを升から外して、
グラスの酒半分くらい升に移してから少ないグラス酒の方を手渡した、

「こっちやるから飲みほしな?笑」

いちいち遣り取りなんかしないよ?
そんな意味で笑って自分は升酒を呑みだしたら御曹司クン拗ねて笑った、

「なんだよー間接キスとか思ったのにさー拗、でもオマエの口つけた後だもんね、笑顔」

なんて笑って御曹司クンはグラスに口付けたから、
こいつヤバいなって思いながら正直に教えてあげた、

「自分が口つけたとこ拭いてあるから安心しなね、笑」
「う、なんだよーがっかりさせんなよー拗笑」
「当たり前のマナーだろ、ねえ?笑」
「俺にはいらねー拗笑」

って感じに笑って酒飲んで、
気が付いたら窓は夜も更けて時間いつのまにか過ぎていた、
日曜の連休中日だから人も多くて、それでも静かな個室で御曹司クンが訊いてきた、

「あのさー…今日って何時まで?明日とか早いんなら、早く帰らないとだよな?」

明日、別に用事は入れていなかった。
この連休は家のコト久しぶりにするつもりでいた、だから思いついたまま言ってみた、

「朝まで呑む?笑」


こんな感じだけどトリアエズUPします、
朝になったらAesculapiousか不定期連載を載せる予定です、

深夜に取り急ぎ、




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本篇閑話:等身大×Tyche→幸運の引力 about Aesculapious 「Mouseion」

2014-05-22 23:12:00 | 解説:人物設定
Tyche、命の可能性



本篇閑話:等身大×Tyche→幸運の引力 about Aesculapious 「Mouseion」

ちょっとドウなんだって想ったコトから閑話します、笑

いま新聞とってないからWEBでニュース&テレビ欄チェックするんですけど、YAHOOテレビ欄に感想の多い番組一覧ってあって、
ソレに放送終了2ヶ月になろうってヤツのが未だにヤタラ投稿されてるもんだから不思議で見てみたんですけど、
評価の星数が 5or1 しかない、最高or最低しかないってナンだろ思って幾つか読んでみたら、
俳優擁護or大絶賛=5、内容疑問視=1 ってカンジでした。

このドラマ自分は観ていません、番宣CMにギモン+設定ちょっと非現実的だなって思ったんで。
傲慢だけど自分が書いてる題材と被るヤツで勉強になりそうなかったら観ないです、ディスりたくなるから、笑
それでも感想5も1も数件なるべく冷静そうなの読んでみたんですけど、自分は観なくて正解だなって感想になりました、
もしこのドラマのファンの人ココにいても感想星5の人達みたいに気を悪くしないで下さいね?
観たくないのも率直な感性だから仕方ないモンなんです、笑

なぜ観なくて正解だったか?っていうと自分は友人とホーキング博士が好きだからです、笑

たぶん該当ドラマの脚本家はホーキング博士を知らないor解ってない人なんだろなって思います、
そして医学や命の期限に対する敬意や現実を理解する意志が弱い、あまりに安易で無知だなと。
知っていたならああいうストーリー&演出は書かない、個々の尊厳を考えたなら。

対等な敬意と安易な同情は似ているようで正反対、どちらが差別で侮蔑なのか?
それを理解しないと障害者を描くことは難しいです、現実リアルでも友人になることすら出来ません、
ソウイウコトって身近から経験していないと難しいのかもしれないんですけど、対等な人間って考えたら理解すぐ出来る事です。

たとえば聾唖の学生がバスに割り込んで当り前の貌する、ってマジであります。
横入りする本人も「自分ら障害者で可哀相だから特別扱いしてね」って特別扱い=差別を望むってコトなんですよね、
そういうの見て「可哀想だから仕方ない」って言う人もいます、それで席を譲ってあげれば親切な善人って言われたりもします。
でも、彼らは聾唖=聴覚と言語障害はあるけれど立ってバスに乗る体力は平均能力があり、横入りNGだと理解する脳もある。
立ってバスに乗る脚力+思考能力はナンの異常もない、健常者と対等で若い元気な体力がある、
それなのに譲ることはホントに「仕方ない」ことなのか?

人間って弱者を同情することで「自分はマシだ」って自己満足するトコある生きモンです、
誰か「可哀想だから仕方ない」相手を作ってソレを援ける自分の姿を美しいものに讃えたい、っていう心理。
相手を弱者に貶めることで自分を強者とする、そういう自己満足が「可哀想だから仕方ない」免罪符にあるんだろなって思います、
ようするに偽善者の正当化ってやつだろなと。

そんな一方で、半身不随でも身なりキチンと自分で整える人もいます。
自由になる片方だけの手で器用に髪をとかして髭剃って服もオシャレです。
パソコンと本に囲まれて静養生活してる人なんですけど、笑って教えてくれました。

「不自由だからこそ自分の力で出来ること一つずつが喜びだよ?どんなに小さなことでも、自力で出来るって事がプライドなんだ、」

その人は病気で不随になったので自由な過去があります、優秀と言われるビジネスマンで世界を歩いてきた人です。
優れた人ほど努力を積んだ時間があります、だからこそ不自由になった絶望は大きい、悔しくないはずがない。
それでも現実の等身大「自力で出来る」プライドに残された身体機能と時間に笑っています。

ひとつの人格として認める、そこには率直な賞賛と叱咤の両方が必ず生まれます。
それは身障者でも難病患者でもサッカー選手でもドッカの社長でも、不細工でも美形でも、誰でも同じ。
そういう「同じ」っていう観点から考えた時、持っている能力や性格や命の期限も冷静な敬意をもって見ることが出来るかなと。
こういう観点は相手に対しても自分自身に対しても欲しいトコです、

で、上に書いた「自分は友人とホーキング博士が好きだから」の件なんですけど、

友人で医者を目指してたヤツがいます、
模試も国立医大の合格判定が常連、でも進学先は文系学部でした。
なんで医学部に行かなかったかと言うと赤緑色盲が発覚したからです。

高校の授業で絵を描いた時に緑と赤を逆に塗って、それで色盲が発覚したそうです。
彼の場合、赤は緑の濃色に見えるために判別が出来ます、だから色盲に周囲も気づきませんでした。
ずっと子供の頃から医者になりたくて努力して、県下一番って進学校に進んで、でも障害は受験前に発覚しました。
赤緑色盲なら受容れてくれる医科大学もあります、けれど彼は色盲が解かってから文系へ転向して志望校も変えました。

「色で見間違えて患者さんを傷つけたら医学の本分に反するだろ?自己満で医者になったら医学と命への冒涜だって想うんだ、別の道でも仁術は出来るし、」

そんなふうに彼は笑って話してくれました、
だけど諦めると決断した夜は朝まで泣いたそうです、小さい頃から努力してきた夢だから。
ずっとプライド懸けて追いかけていた夢を諦めるなら、悔しくて泣きたくて当り前、辛くないはずがない。
それでも本気で医学を志してきたからこそ諦めて、そして新しい道を選んだ彼の有言実行はホントの「仁術」だなって思います、

医学は仁術=命と心を救うこと、って言うんだそうです。

で、文系転向した彼は教員免許を取り、卒論代表を務め、教師になって今けっこう偉くなってます、笑
大学時代から家庭教師をして不登校の子も教えたりしてたんですけど、その生徒サンたちも進学校合格→通学楽しんでるそうです。
そうやって彼は教育の世界で仁術して生きてます、こんな今は彼が夢見た道と違うけど、それでも彼の医学に見つめた世界と繋がってるなと。

なんていう人たちに思うのは障害=免罪符ではなく、個性&能力度合だと客観的に考えられる人はカッコいいなってコトです。

「理論物理学を選んだ点でも私は幸運だった、理論は全て頭の中のことだからである。そのために、私の障害も大きなハンディキャップにはなっていない」

これ↑スティーブン・W・ホーキング博士の言葉から引用です。

この先生の話を初めて聴いたのは子供の頃、宇宙物理学についてのテレビ番組です、
ブラックホールや宇宙の膨張なんかを話してくれたと思うんですけど、面白くて解りやすかったんで好きになりました、
そのとき車椅子に座っておられたので不思議で、なんでかなって思ってたら病気のためだと後で新聞かナンカで知りました。
普通なら発病5年以内に死亡する難病、だけどホーキング博士は途中から病状進行が遅くなり五十年が経っているそうです。
そして博士は今も研究を続けています、その滅びない好奇心+学ぶ謙虚な喜びと感謝は引用した言葉に明快だなって思います、

博士の言う「幸運」は謙虚で感謝いっぱいの言葉なんですよね、
だって病気で自分の選んだ道が歩めなくなったら辛い、で、博士の発病はオックスフォード大在学中です。
学生の頃から天才と言われて、けれど発病で体の自由を喪って、それでも「幸運」だと言った想いは現実への謙虚な等身大です。

体の自由は奪われて、言葉すら自力では伝えられなくて、けれど自分には頭だけで出来る学問がある。
この発想は「自力の現実的な最大限の選択」たぶん博士は体を遣わないとダメな分野だったら選ばなかったろうなと。
こういう真直ぐな視線は生きる天才で、そういう謙虚な喜びが5年の命を半世紀超えさせたコトは世界の意志だろなって思います。

Tyche 

テュケーって言葉があるんですけど、
ローマ神話なら「Fortuna」幸運の女神の名前で運命の廻りってカンジの意味です。
この言葉を西洋古典文学では日本の第一人者である久保正彰先生は「偶然と必然の廻り」って教えてくれました、

人間なら誰もに運命の出逢いがある、それは偶然のようで決められた必然である、

そんな意味なんですけど、この「出逢い」は「人が成すべき事」って感じの意味です、
例えば、久保先生は学界の用事で海外へ行かれた時になんとなく寄った古本屋で一冊の本に出逢いました、
その本から西洋古典文学に新しい事実が見つかって研究論文を書かれたんですけど、そのとき先生は還暦とっくに超えていました。
もう東京大学から定年退官されて新設の大学に赴任されてっていう時です、その尽きない学者の真直ぐな意志がカッコいいんですよね、笑

久保先生の「Tyche」とホーキング博士の「幸運」は似てるなって思います、

なにかが起きる、それが不運か幸運か?
その選択は自身の意志で決めること、そのとき自身の現実的能力=等身大の判断が幸運へと運命を定めていく。
そういう判断は感情論だけでは見誤る、与えられている現実への謙虚な冷静な意志が無かったら自己満足にしかならない。

「自分の能力と進路を見誤れば救える何かも壊すよ、それは命の冒涜だと僕は想う、」

Aesculapious「Mouseion」雅樹のセリフですが上に書いた現実譚から生まれた言葉です。
医者かつ教員×医学生の立場から弟と兄が対話していく「医学とは医者とは何ぞや?」のターンですけど、
平等的差別→個性能力の生かす場所と時間って話をしていますが、あれは友達の話がベースになった台詞です。

「障害を越えて医者になれば美談かもしれない、でも僕は医療の現場にそういうナルシズムは邪魔だって想ってる、ミスが赦されない世界だからね、
緻密な技術と判断力が命を支えられる、だから精神面でも肉体面でも障害者に医者の資格は無いと僕は想ってる、ナルシズムの医者なんて命の冒涜だ、」

「命に待ったは出来ない、その一瞬にしか援けられないよ。でも医者になるまで時間は懸る、治療しても予後のフォローが必要な症例もある。
そのときフォローする責任を最初から放棄することは命へ無責任すぎる、傲慢だよ?治療は一瞬の勝負だけど何十年続くものでもあるよ、」

もし障害者や余命短い学生から医者になりたいと言われたら、なんて答える?
そう現役医学生である兄・雅人からされた問われた雅樹の答えですがヤヤ過激ですけど、笑
この激しさは雅樹の医学に対する希望と葛藤の時間から産まれた生真面目で、弛まない自律の祈りです。

「障害者は医者になれないって言うと差別だって意見もあるよ、でも、医者が命を預かることを現実的に理解するなら差別も当然だと解るはずだ、
肉体の命は現実の重みに生きてる、理想で命は救けられない、だからキレイごとだけの人は医者に成れないよ?命に言訳も待ったも出来ないからね、」

医療過誤、

そんな言葉がありますが医療においてミスは死亡事故に直結します。
些細なミスが原因で死に至る現場です、そこでは自身の持ち場を厳守する緻密さが求められます。

この「緻密であること」に精神障害や身体障害が応えることが出来るのか?

その現実を雅樹は遭難事故から向き合い続けてきました、
そうして雅樹が口にする台詞はリアルの言葉、赤緑色盲の友達の話が原点です。
ふたり呑みながら話していたコト+彼の生き方に考えた現実の等身大たちから吉村雅樹という医師は生まれています。

「医学だけが命を支えているんじゃない、医者だけで人間を救えるんじゃないから人間はね、いろんな能力が必要だから個性も違うんだよ。
医者に不向きだから無能なわけじゃない、医学だけに拘って自分の能力と進路を見誤れば救える何かも壊すよ、それは命の冒涜だと僕は想う、」

「命の期限が短いからこそ、今このとき活かせる事をしてほしいよ?」

こんな台詞たちのベースをくれた友達は、きっと赤緑色盲じゃなかったら名医になったろなって思います。
けれど現実は赤緑色盲の障害が等身大の彼です、その等身大を真直ぐ向きあった果に彼は医者を諦めて教師になりました。
こういうの挫折だと安直に同情するヤツは阿呆です、彼が障害と向きあい泣いて諦めた経験はきっと教師として得難い資質だから、

そうやって考えると彼が高校時代に赤緑色盲を知ったことは彼の「Tyche」かもしれません、
辛いけれど悔しいけれど、だからこそ人に向きあえる彼の等身大は彼の生徒達には幸運だから、笑

偽善(4)・・ブログトーナメント



ドラマの話になったついでに去年と今期で面白いなってヤツは、
泣くなはらちゃん、隠蔽捜査、Dr.DMATの3話あたり以降、銀弐貫、死神くん、
個人的趣味だけどルーズベルトゲームは企業パワーゲーム×野球がベースなんで好きです、笑
弱くても勝てますは野球っていうよりヒューマンドラマですけど先週の話は今書いた「Tyche」と絡むなって観ました、
MOZUは録画を貯めてあります、映画っぽいつくりだと聞いたので一挙ぶっ通しで観ようかなと、笑

なんてカンジですけど挙げたの以外にも観ているし好きなのに書き忘れもあると思います、
わりと忘れっぽいトコもあるので、笑

いま第76話「霜雪6」校了しました、このあと雑談ぽいやつかなと、
明日はAesculapiousの続き+不定期連載の予定です、

深夜に取り急ぎ、




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第76話 霜雪act.6-side story「陽はまた昇る」

2014-05-22 12:10:58 | 陽はまた昇るside story
testimonial 証、罪と継承



第76話 霜雪act.6-side story「陽はまた昇る」

声は、扉の向こうでしか聞こえない。

見つめる画面のファイル名は無音で、けれど事実の在処を示す。
このファイルを開けば自分の推定が正しいと知らされる、そして岐路ひとつ選ぶ。
選ぶ、というよりもう選んでしまったかもしれない、そんな諦観と可笑しさに英二は微笑んだ。

「…ふ、」

笑い短く零れたデスク、重厚な机上にノートパソコンがこちらへ開く。
羅列するファイルたちはアルファベットと数字を組まれて名付けられ記される。
この選ばれた単語と数字の組み合わせは意味すこし考えたなら開封しなくても中身を示す。

“ Fantome 1943 ”

ファイルのひとつ、この名前は畸形連鎖の起点。
この名前を隠したかった、消したかった壊したかった、そう願った人がいる。
その人が愛する家の合鍵は今この懐で体温に馴染む、そして彼の家の書斎には願いが名残る。

―だから本を壊したんですね、馨さん?

Gaston Leroux『Le Fantome de l'Opera』

フランス文学の名著は馨の父親、晉の蔵書だった。
父親の遺蔵書を馨は大切にしていただろう、けれどページの大半を大きく切りとってしまった。
そうして残されたページには出てこない単語、そして切りとられたページには画面の単語が綴られていた。

“ Fantome ”

亡霊、有名無実の存在、過去の幻影、追憶、妄想 

そんな意味のある単語は何を示すのか?それはもう解っている。
この単語を被された二人のファイルはもう見てしまった、そして今その起点を開く。

起点、それは原罪の記録でもある?

そう解かってしまうから開くことが哀しい。
だって記録を読んでしまったら自分はまた秘密ひとつ、大切な人に隠しこむことになる。

―ごめんな周太、

独り微笑んで感染防止グローブはめた指キーボードふれる。
ファイルを開くには数字10桁の要求に応えなくてはいけない、さっきのIDで承認される。
承認されたなら自分は証拠ごと大嫌いな立場を掴むだろう、この現実ごと「2」を押しかけて止めた。

“ 2151194540 ”

同じ数字を今また入力すればファイルは確実に開かれる。
けれど同じ数列で入れるよりも今、あの男のIDで入れてやれば面白い?

「ふ…、」

独りまた笑い零れて扉を見る。
閉じられた空間は廊下の声まだ話す、時間は予定通りあるだろう。
そんな想定に微笑んで両手軽く組ますと脳は11月の記憶と数列を追いかけ始めた。

『私は1945年に入省だ、上に3人もいたことは気に障るがな。だからIDは215119454となっている、英二なら規則性が解かるだろう?』

鷲田克憲 Katsunori Wasita 215119454

このIDにある法則性と祖父の経歴、この2つで求める数列9桁は導き出せる。
けれどパスワード最後10桁目は法則性と経歴情報だけでは解らない、しかも可変性を持っている。

『最後の一桁は任意数字だ、変更も各自のタイミングだが最低でも月一回は入れ替える。選択も変更も本人次第の不規則性でセキュリティを保っている、』

可変性の任意数字はタイミング無制限で選択できる、それは規則性が無い。
けれど「自己都合」ならば各自の法則性は必ずある、その判断基準を考えればいい。

“ 2151194540 ”

この数列は9桁が不変、それなら9桁は解くことが出来る。
それを祖父も解いたから「解かるだろう?」と笑っていた、その解に英二は微笑んだ。

―名前と経歴が規則だ、21と5と1、1945と4、

Katsunori Wasita 1945年入省、上に3人いた。

この情報から数字は2桁、1桁と1桁、4桁、1桁を作る。
解いてしまえば単純な公式であり同じ数値は成り立ち難い。
これに最後一桁「自己都合」を決めているのは祖父の気質だ。

『原点の数字だからだ、あの戦争で最も愚かだった記憶だよ、これの次に腹立たしい4を交互に入れ替えている、変更日も同じ理由で2つだ、』

記憶に残っている数字と日付を2つ選んで祖父は使っている。
それなら、あの男なら数字10桁と変更日に何を選びたがるだろう?

『観碕征治は1942年3月東京帝国大学法学部卒、1942年4月に内務省に入り警保局へ配属されている。高等文官試験は首席合格だ、』

祖父が与えた情報データは9桁を教えてくれる。
最後の一桁はデータだけでは解けない、けれど自分は観碕を知っている。

―1942年の首席なら592119421だ、でもラストの数字は観碕なら、

Seiji Kanzaki 観碕征治 

1942年の首席だった男は最後一桁に何を選ぶ?
可変のタイミングには何を遣いたがるだろう?

選択と可変に観碕なら何を「好む」のか、その解答に英二は微笑んだ。

―観碕なら変えない、全て、

可変性がある、でも観碕なら変えない。
これまで見た観碕の軌跡は「不変」にある、それが50年の束縛も生んだ。
半世紀も拘り続けて離さない、そんな執着心はきっと「変える」など好まないだろう?

あの男ならこの数字しか遣いたがらない、そのプライド見つめて感染防止グローブの指は10桁うちこんだ。

“ 5921194211 ”

『私のIDとパスは全てを開ける、但しミス1回でアウトだ、ガードが閉じられ追跡される。機密に近い者ほどガードも権限も強い、内務省の者は特にな、』

自分のIDを間違うような無能者はいない。
そんな前提で定められた集団が創りあげた壁を推定で破ろうとしている。

―もし間違ったら蒔田さんにも迷惑かかるだろうな、このパソコンに追跡されて、

このIDは何なんだ、この画面は俺も知らないぞ?

そう言った蒔田の眼差しは途惑っても揺れていなかった。
たぶん嘘を吐いていない貌、それなら「機密に近い立場」からは遠いのだろう。
そんな男のパソコンからIDとパスワードを破られる想定は多分していない、そう測るまま英二はそっと微笑んだ。

「…勝負だ?」

かちり、

エンターキーに感染防止グローブの指そっと捺しこます。
この痕跡が万が一の時も蒔田を護るだろう、その痕に微笑んだ前ファイルは開かれた。

「ふ…、」

笑いかけたパソコン画面、開かれた証拠に貌ひとつ見てしまう。
あのプライド高い男が知ったなら?そんな推定にただ可笑しい。

―自分のIDで破るやつなんて居ないって想ってる、気づいても隠すだろうな、

『あれは警保局で全てを知っている男だ、それがどういう意味か英二なら解かるだろう?』

そんなふうに教えてくれた祖父自身、あの男と同類でもあると知っている。
だから祖父が自分に告げた意志は多分あの男にそのまま当て嵌まるだろう?

『機密に近く権限が強い分だけ勝手に使われたなら恥も大きくなる、それが周囲にバレ無くても自尊心が許さんだろう、』

観碕のIDとパスワードでファイルが破られる、それが五十年の執着に絡まるプライドをどんな貌に壊すだろう?

その貌を見たい、けれど見ることは難しいだろう。
それが残念だと想っている自分に笑って小さなデジタルカメラ袖から出し、シャッター押した。

かちり、

かすかなシャッター音にパソコン画面は撮られてゆく。
敢えて背景も入れながらデータを映す、その同時にUSBメモリー挿しこんだ。

―普通なら引っ掛るだろうけど観碕のIDなら、

ファイル管理者本人のIDで開封した、それならデータ取得もフリーだろう?
この推定に操作したままデータ保存されてゆく、そんな向こう廊下の話し声は終わらない。
けれど制限時間はもう迫っている、その想定に左腕の文字盤を眺めながら贈り主へ微笑んだ。

「…ごめんな?」

ごめんな周太?

そう心だけ呼びかけて今と去年の落差を見てしまう。
この腕時計を贈ってくれた一年前は約束をしていた、あの約束を今年は出来ない。

―去年のクリスマスは幸せだったな、今まで一番、

幸せだった、今年も約束したかった。
本当は毎年ずっと一緒に過ごしたい、そう去年に願って約束した。
それでも今年は離れていることが来年も先も約束させてくれる、その可能性を信じていたい。

「よし…」

データ落したUSBとデジタルカメラ仕舞ってファイルを閉じてゆく。
閉めるIDも選ぶ方は決まっている、その数列に微笑んでパソコンの蓋を閉じた。

―あとは脱出だな、

この部屋をどう出るのか?

算段めぐらせながら感染防止グローブを外して肘で冷蔵庫を開く。
置かれた袋入りの缶コーヒー6本を素手でとる、そしてまた肘で扉閉じた。
これなら指紋の痕跡が残らない、そうしてクライミンググローブ嵌めると角の窓に微笑んだ。

「…いけるかな、」

アイガー北壁ヘックマイアールートは高低差1,781mある。
そして庁舎は最後部の高さ83.5m、そこから地上まで降りても二十分の一に満たない。
この高度に考えた通りに経路ひとつ開錠してある、そこに降りるくらいは自分なら可能だろう。

―やっぱり取っ掛かり少ないな、でもワンフロアなら、

見下ろす窓は通りから死角、壁面も星霜の経年に小さなクラックを作っている。
なによりこんな所から降りる者など普通はいない、その予想外が人目も惹かないだろう。
それでも失敗すれば代償は大きすぎる、けれど自分には登攀技術と、それから運もあるだろう?

―蒔田さんも予想外だろな、こんなことは、

誰もが予想していない、だからやる価値はある。
そう決めてきた通り窓を開くと腕にコンビニ袋ひっかけ窓枠を掴み、その手首のクライマーウォッチに微笑んだ。

「ごめんな、」

きっと知られたら怒られる?そんな想い笑って英二はスーツ翻し、窓の外へ出た。



(to be continued)

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚99

2014-05-22 01:15:04 | 雑談寓話
雨のち夕方から晴れた日でした、
写真は卯の花、空木・ウツギとも言いますけど山で咲いていました。
この雑談ぽいのも楽しんでもらえたら嬉しいですが、バナー押して下さった方に感謝こめて、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚99

連休中日の夕刻@桜木町改札で同僚御曹司クンと待ち合わせて、
エスニックではなくダイニングバーに行ったらまだ空いていて個室に座れた、
夏の17時はまだ明るい、夕景も夜景も早かったけど窓は見晴らし良くて御曹司クンが笑った、

「おー眺め良いなーココ、しかもカップルシートっぽいし、照笑」

なんてカンジにご機嫌で、
ご機嫌貌についイジメたくなってSってみた、笑

「取り調べや密談向きってカンジだけどね?笑」
「う、なにそのハードボイルドっぽい設定、俺なんか悪いことした??凹」
「ふうん?ソンナへこむなんてナンカ心当たりでもあるワケ?笑」
「っ、またからかったろもーーほんとイジワルだSだっ、拗」

とか話しながらもオーダー決めて、
とりあえずの生中グラスが喉に美味しかった、

あーなんか生き返るな?笑

なんて思いながら体調けっこう良くなっていて、
他愛ない話しながら運ばれてきたモン食べ始めたら訊かれた、

「あのさー、付き合ってるヒト大丈夫だった?」

そのこと気にしてくれちゃうんだ?
こんな気遣いしてくれることナンダカ可笑しくて、笑いながら答えた、

「今日終わったと思うよ?自慢の道具にしたかったダケってコトむこうも気づいたろうし、笑」

って言ったら御曹司クン停止した、

「…は?」

目が大きくなってコッチ見てる、
びっくりした、そんな顔が面白くて笑った、

「ズイブンびっくりしてるね、どした?笑」
「え…だって終わったって今言ったけど、え、あ?」

混乱してる、そういうトーン途惑ってグラス置いて、
ポケットから携帯電話を出して開いて見て訊いてきた、

「今日のメール、寝坊してたら電話が来て終わったとこって、別れたって意味だったってことかよ?」

いまごろ気が付いたんだ?笑
まあ二通りの意味でこっちも書いてる、それ解ってもらって笑った、

「だよ?付合うの終了と電話終了って意味、笑」
「えー…、ちょ、え?」

どうしよう?ってカンジの貌になってグラスに口付けて、
呑みこんでも大きいままの目でコッチ見て御曹司クンは言った、

「なあ、別れた直後に俺を呼びだすってナンで?田中さんとかじゃなくってナンで俺なわけ?」

ホントなんでだろね?笑

なんて我ながら不思議にも思ってた、
だけど今この時間が面白くてイジメたくなったからSってみた、

「ちょうどメール着たから?笑」
「えーそれだけの理由?ナンカ俺って便利されてるじゃん、拗」
「便利っていうよりも懐っこい犬っぽいね、呼んだら来るし、笑」
「犬かよーー確かに俺って犬っぽい言われるけどさーーでもヒドイってば、拗×笑」

ヒドイ言いながら拗ねながら、でも御曹司クン笑ってくれた、
いつもながらの拗ね笑いはなんか安心するな想えて、で、続けた、

「ひどいなら帰る?笑」
「…頼んだモンまだ食ってねえし残すのモッタイナイから帰らねえ、拗」
「ふうん、残さず食べるなんて偉いね?笑」
「う、今度はコドモ扱いかよー拗」

ナンテ感じに会話しながら箸動かして、
で、御曹司クンちょっと考える顔して訊いてきた、

「なあ、その付合ってた人ってさ、いつから付合ってた?…クリスマスの前からとか?」

なんか核心な質問だよね?


こんな感じだけどトリアエズUPします、
不定期連載の校正して、また昼ごろ第76話の続き掲載する予定です、

取り急ぎ、




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