萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚134

2014-06-26 01:05:06 | 雑談寓話
ちょっと博物館に行きたい気分です、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚134

イキナリ異動になった11月の週明け、
引継ぎ一日で済ませて終電ギリで帰る車内、同僚御曹司クンからメールが着た、

From:御曹司クン
本文:明日の朝まじ泣きそう、泣いても気にしないで(顔文字泣顔)
   でもプロジェクト終わったら戻る可能性あるらしいな、だけどやっぱり凹むよ、
   いま帰りの電車だけど寝る前とか電話したくなるかも、もし寝てなかったら5分でも出てくれない?

この返事なんて返そっかな?
そんな思案にイイ機会かもしれないとも思った、

異動=別室になるから離れるイイ機会

そう思ってメール返信なしもテだと思った、
このまま音信不通にしていく方がお互い結局は幸せになる?
そんな現実は当然だった、だって御曹司クン「結婚義務」なんて言うくらいだから。
そんなわけで考えながら帰宅して風呂入って、ベッド転がったら携帯やっぱり着信した。

泣きそうって書いてあったな?

鳴ってるコール音にそんなこと想い出して、

職場面前で泣かれる<電話で泣かれる

って方程式だなって思ったから電話出た、

「おつかれ、なに?笑」
「なに?じゃねーよー…っぅ、」

いきなりもう泣きだすんだ?笑
こんな感情豊かな相手になんか可笑しくてつい笑った、

「なにイキナリ泣いてるワケ?もしかして呑んでる?笑」
「缶ビール持ってるいま…呑まないとナンカ無理、」

なんてホント凹んだ返事が来て、
こんなに凹むことが不思議で訊いてみた、

「なにソンナ荒れてるワケ?変なヤツ、笑」
「だって異動じゃん…っぅ……もう毎日いつも顔見られるか解らねえじゃん、」

とか行ってくる合間もなんだか泣いているみたいで、
缶ビール啜ってるのか涙飲んでるのか解らない相手に笑ってやった、

「ナンダカ大袈裟だね、別の部屋でも同じ職場だろが?笑」
「そうだけど、でも…いつも顔見られるの嬉しかったっつーの」

泣きながら言ってくるトーンがちょっと絡み節に傾きだして、
で、やっぱりだけど電話向うは泣きだした、

「仕事もうヤダーって煮詰まってもさあ…ぅっ、おまえ見るとがんばれたんだよ、あの席からよく見えたしさー…っ、も、明日からどうしよ」

なんだか困ったこと言ってくるな?
そんな感想そのまま言ってやった、

「そんな見てるってストーカーちっくだね、犯罪卒業のイイ機会なんじゃない?笑」
「ぅっ…はんざいとか言うなばかー…ほんとおまえSだイジワルだ、でもっ…」

なんてカンジにしゃくりあげて泣いてくれて、
たぶん子供みたいに泣いてるんだろう顔が見えるみたいで、さっき考えてたことに罪悪感すこし痛んだ、

異動=別室になる=離れるイイ機会

そんなこと思ってたけどコンナ泣かれると解らなくなる、
こんなふうに泣かれたら鬱陶しい、でもそれだけじゃない、それでも笑ってSった、

「そんな泣いて鬱陶しいね?ホントおまえガキだなー、笑」

ほんと子供みたいだ?

子供じみて社会人だと想えない、こんなやつメンドクサイ鬱陶しい、
こういうタイプは例えば付き合うってなれば無理、束縛されそうで却下する、
だけど御曹司クンの電話を勝手に切らなかったのは、結局のとこ「付き合う」が違う意味だから。


とりあえずココで一旦切ります、続きあるんですが反応次第でラストにします、
Eventually Comes True「May.2012 act.17 清風」校了、Aesculapius+Favoniusは読み直し中です。
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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚133

2014-06-25 00:43:11 | 雑談寓話
野生の鈴蘭@八島湿原です、ちょっとした群落に咲いていました。



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚133

11月、自分が異動になったのは週明けイキナリだった。

朝イキナリ課長が人事に呼ばれて戻ってきて決定事項を告げられた、
そんな月曜+年末繁忙期イキナリの異動はアレコレめんどくさい+人手不足必須になる、
で、元からいるトコの直属上司=昇進したて課長は頭抱えこんでブスッタレに怒っていた、笑

「マジありえねえこの異動なんだよ堀田サン(仮名)が居ない隙に勝手に引き抜きやがったクソジジイ、俺が最年少課長で発言力弱いのイイことに勝手しやがったくっそ、怒」

クソジジイ=重役 
なんだけどホントは変なあだ名がついている、笑
ソノあだ名でブツクサ怒りながら課長は言ってくれた、

「この人事異動ちょっと無茶過ぎんだよ、どうせアッチの人足りなくてだろ?堀田サン戻ってきたら戻せって掛け合う、」

人手が足りない、ってのは本当だろう。
職場の人員人数はたくさんいる、けれど知識×スキルは誰にもあるわけじゃない。
いわゆる資格系の知識複数+パソコンスキルを併せ持つのは限られていて、その辺の事情を隣の課長が教えてくれた、

「新しいプロジェクトが来てな、それで各部署から急遽集めてるんだ。俺のとこからも中田(仮名)が抜かれた、ホント時期考えろって思うがな?」

こっちも困ってる、そんな口調に課長は訊いてくれた、

「こんな時期に新規って有得ないです、でもソレ終わったら戻してもらえるんですか?」
「たぶんな、でも継続で来られたらワカラン、仕事くるのは良いことだが有難迷惑って言葉もあるからなあ?」

っていう事情で怒っている人間は今回どうも多いらしい。
そんな無茶ぶり異動に上司はため息吐いて、仕方なしに指示した。

「引継ぎは今日1日だ、とりあえず俺と山口(仮名)で穴埋めしとくから引継事項まとめてくれ、」

ってワケで週明けイキナリ引継ぎすることになり、
データのファイル整理とスケジュール+引継書アレコレやって机ざっと片づけて、
そんな合間に同僚御曹司クンがやって来た、

「なあ、マジで異動なわけ?」

まだ信じられない、そんな貌で訊いてくれる。
で、こっちこそな気分ありのまま言ってやった、

「明日からは別の部屋だから、笑」

嫌でもナンデも辞令には逆らえない、
そういう当り前に笑ったら御曹司クン凹みながら言った、

「そっか、だったら俺も一緒に異動したいなー…」

それはサスガに困るだろう?
そう内心ツッコんだ隣から山口サン=引継ぎ相手が怒った、

「ちょっと無茶なこと言わないで下さい、このひと抜けるんで大変なのにアナタまで居なくなったらココどうなると思ってます?怒」

ちょっと忙しくてマジ切れるから?って貌で言われて、
御曹司クン何か言いたげに凹んだまま席に戻って、その後ろ姿に山口さんが訊いてきた、

「すごい凹んでますよね、あのひと。私ちょっと言い過ぎました?」
「仕方ないよね、笑」

ホント仕方ないだろう?

そんな感想と笑って引継ぎ一日で済ませて、
翌朝の引っ越し準備を終えて終電ギリで帰る車内、やっぱりメールが着た、

From:御曹司クン
本文:明日の朝まじ泣きそう、泣いても気にしないで(顔文字泣顔)
   でもプロジェクト終わったら戻る可能性あるらしいな、だけどやっぱり凹むよ、
   いま帰りの電車だけど寝る前とか電話したくなるかも、もし寝てなかったら5分でも出てくれない?

この返事なんて返そう?


とりあえずココで一旦切ります、続きあるんですが反応次第でラストにします、
第77話「結氷1」校了しました、不定期連載「Eventually Comes True May.2012 act.17 清風」加筆ちょっとします。
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山岳点景:一本の樹@八島湿原

2014-06-24 22:40:10 | 写真:山岳点景
水無月、晴れ間



山岳点景:一本の樹@八島湿原

土曜に見た木です、向かって右方向へ傾いています。
どの木も同じ方向なんですよね、いつも風が同じ向きかなと。

私の好きな風景 36ブログトーナメント



第77話「結氷1」校了しました、
不定期連載「Eventually Comes True May.2012 act.17 ―清風」もうすこし加筆します、

合間に取り急ぎ、




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第77話 結氷 act.1-side story「陽はまた昇る」

2014-06-24 08:30:06 | 陽はまた昇るside story
zero point 零の原初



第77話 結氷 act.1-side story「陽はまた昇る」

大気が凍る、雪は積もったろう。

夜明けの直前は最も冷える、それが冬ならば水も雪も氷化する。
大気中の水分すら凍てついて輝く時もある、それは何度の現象だったろう?

―マイナス10度だったかな、ダイヤモンドダスト…見たいな、

眠りの底を考えながら未見の世界を追ってしまう、けれど現実また想い出す。
いま低温の気配が頬なでる、この場所で冷えこむのなら奥多摩は雪深く寒い。

―応援要請があるかもしれない、遭難か除雪か…雪が積もった、

凍結と積雪に都心部は麻痺する、そして奥多摩は巡回と除雪に備えるだろう。
そんな冷感に呼ばれて披かれた視界は蒼く昏い、いま冬至に向かい日出は遅くなってゆく。
それでも時刻は変わらず朝になる、だから腕伸ばし掴んだクライマーウォッチに英二は微笑んだ。

「…5時、」

刻限に起きあがったベッドの窓はカーテン透かして明るい。
たぶん雪明りだろう、その明るみ懐かしくて立ち上がりカーテン開いた。

「…雪だな、周太?」

名前そっと呼んだ先、昏く白い。
四角い空から白が舞う、まだ降り止まない雪に隊舎も大地も白くなる。
その照らす街燈に雪面の反射きらめかす、もう凍てつかす硬化に外気温も見える。

また雪山の季が来た。

「心配してくれるのかな、今年も…」

ひとりごと零れて去年の雪が懐かしい、そして触れたくなる。
初めての雪山シーズンだった昨冬、あの懐かしい空気また欲しくて英二は窓開き笑った。

「新雪だな、」

まっさらな白、まだ明けない夜にも白銀あわく輝かす。
今ここはアスファルトとコンクリートだらけで森は無い、それでも冬の大気は凛と張る。
こんな朝は冷水を浴びる間も惜しんで山へ駈けていた、そして見下ろした銀色の世界の天辺で熱いマグカップ啜りこんだ。

ただ雪山が愉しかった、低温も滑落も怖いと知りながら白い山が嬉しかった、そんな単純な時間は宝物なのだと今ここで解かる。

「…ここでも出来るかな?」

そっと独り微笑んで窓ひそやかに閉める。
かたん、施錠してもカーテン明けたままの空は昏く微かに蒼い。
まだ夜明けは遠くて、けれど手早く着替えて英二は登山ジャケット羽織った。




今日は雪、この白銀に痕跡は消えてゆく。

山であればトレースが消える、夏道も埋もれてしまう。
そして道迷いから滑落事故や低体温症は起きる、その現場に去年の冬いく度も駈けた。
白銀まばゆい峻厳は育った街からは遠すぎて自由になれたと嬉しくて、だから好きなのかもしれない。

「馨さんも同じでしたか…自由になれるから、」

呼びかけて仰いだ空はただ白い。
グレーあわい雲から雪は降る、ただ静かな時が屋上に微睡ます。
この空を馨も愛していた、そう綴られた紺青色の日記帳を記憶に追ってしまう。

Ô saisons, ô châteaux !
Quelle âme est sans défauts ?

J'ai fait la magique etude
Du bonheur, qu'aucun n'élude.

季よ、城よ、
欠けること無き精神があるのか?

僕が魔術研究する本題は
命運 これは誰にも避けられない。

Jean Nicolas Arthur Rimbaud「Ô saisons, ô châteaux」

フランスの詩へ母国語の自訳を添えながら日記はラテン語で綴られる。
あの一文を書いた馨は幸せの時にいた、それは最後まで変わらない想いだったろう。
そんな日記の想いへと雪山の記憶は懐かしくて、あの3月の雪の俤に英二は微笑んだ。

「俺も懲りないな、周太?」

独り笑った屋上はただ雪が降る。
見晴るかす空は白く煙らせながら微かに明るむ、けれど雲は厚い。
こんな12月の雪は珍しいだろう、それが土曜日であることは幸運だろうか?

―予報では8時に晴れる、そうしたら入山者があるかもしれない、

新雪まばゆい青空の山は美しい。
その世界を自分も知っている、だから登りたい気持ちは否定し難い。
それでも現実の危険は多くて心配にもなる、けれど今日はそれすら幸運かもしれない?

J'ai fait la magique etude Du bonheur, qu'aucun n'élude.
僕が魔術研究する本題は 命運 これは誰にも避けられない。

あの一節は自分を映す、そう想えて離れない。
あの言葉通りに自分は今日また幸運を掴むだろうか?

「…運は味方するかな?」

そっと微笑んで足元、携帯用コンロの火を止める。
ゆるやかな湯気のコッヘルとってマグカップに注ぐ、ふわり芳香ほろ苦く甘い。
こんなふうに淹れることも去年は日常だった、けれど今は久しぶりの雪と香の向こう重たい扉鳴った。

がたん、

誰か来た、そんな物音に雪踏む音が鳴る。
さくさく軽やかな足音すぐ近づいて低い声が呼んだ。

「宮田?こんな時間に何やってるんだ、」
「おはようございます、黒木さん。こんな時間だからやるんですよ?」

笑いかけながら紙コップひとつ支度する。
こんな予想通りに長身が傍ら屈みこみ、シャープな瞳すこし笑った。

「モーニングコーヒーか、洒落たことするな、」
「習慣だったんですよ、青梅署の吉村先生と毎朝、」

答えて、少し前の記憶また懐かしい。
この習慣の相手と昨日は会えた、相変わらずの穏かな笑顔に嬉しかった。

『秋はゆっくり話せなくて残念でした、また帰っておいで?宮田くんのコーヒーを妻も楽しみにしてるから、』

秋、本当は剣道会の稽古の為に泊めてもらう約束だった。
けれど遭難救助の手伝いで行けなくて、それでも嫌な顔ひとつしない笑顔が嬉しかった。
あの笑顔と出会って自分はずいぶん変わったろう?そんな想いごとインスタントコーヒー淹れて笑いかけた。

「黒木さん、一杯つきあってください、」
「お、すまんな、」

少し笑って紙コップ受けとってくれる貌が3ヶ月前より柔らかい。
こんな変化に微笑んでコーヒー啜る、その唇ふれるチタン製マグカップの感触もすっかり馴染んだ。
啜りこむ芳香にまじらす雪の香も懐かしい、そんな郷愁すら想う今は何もかも変わったようで、けれど変わらないテノールが笑った。

「ふたりっきりモーニングコーヒーなんざズルいねえ?俺もまぜてよね、」

からり笑って背後、がっしり抱きついてくれる。
いつの間に来たのだろう?相変わらずの相手に英二は笑った。

「おはよう光一、来ると思ってたけど不意打ちだな?」
「俺も英二は来てると思ったね、ハイ、」

テノール笑いながら肩越しマグカップ出してくる。
受けとって、インスタントコーヒ淹れる向かいは姿勢すこし正した。

「おはようございます、国村さん。お早いですね?」
「おはよ黒木、俺は雪降ったら早いからね、」

からり笑って応えながら隣へしゃがみこむ。
そんな青と白の登山ジャケット姿に山の時間は映りこんで、懐かしいまま笑いかけた。

「国村さんは降りたての雪が好きなんです、青梅署の時は訓練と巡回を兼ねて朝一に登っていました、」

起きろっ新雪だ!

そう言われて叩き起こされていた時が懐かしい。
そんな朝と同じに今も雪は降る、けれど少し変わった今にパートナーが笑った。

「最初はいつも俺が叩き起こしてたね、でも宮田の方が早く起きるようになっちまったよ、今日みたいにさ?」
「寝込みを襲われるのは困りますから、」

笑って応えた隣、底抜けに明るい瞳も笑っている。
いま言った言葉も単純に笑って明るい、そんな容子は去年の冬が戻ってくる。

―アイガー以来かもしれないな、光一のこんな貌は、

アイガーの夜に自分は壊した、そう時経つごと気づかされる。

あの夏あの場所で自分が何をしたのか、光一を周太を何に泣かせたのか、そして何を失ったのか?
そんな全てを夏の自分は解らなかった、ただ自分勝手に欲しいだけ掴みとり悦んで気づこうとしなかった。
その果てに壊してしまった事を今なら解かる、だから昨夜も苛立って八つ当たりして、それでも山っ子は笑ってくれる。

「宮田のコーヒー久しぶりだね、雪の中でなお美味いけどさ、山ならモット良いね?」

ほら、去年の冬が笑ってくれる。
ただ雪が楽しくて山が幸せだった、あの時に笑ってくれた瞳も声も今ここにいる。
こんな変わらないことがただ嬉しくて、だからこそ昨日に決めた想いと笑いかけた。

「また山でも淹れますよ、訓練もありますし、」
「だね、でも海外遠征は難しくなっちまったねえ?代りにチャンスもらえるヤツにはラッキーだけどさ、」

テノール闊達に言いながら少しだけ残念がっている。
その想い解かるから申し訳なくて素直に頭下げた。

「すみません、俺の研修とか色々入ってしまって、」
「謝ること無いよ、昇進はヨロコバシイからね?でも、今日のアレは喜ばしいかって微妙だけどさ、」

笑いながら答えてくれる言葉に、つい微笑んでしまう。
今日の「アレ」こそ自分には望むこと、そんな微笑マグカップ隠した先で堅実な貌が尋ねた。

「国村さん、今日の宮田は観碕さんの手伝いですが、もし救助要請が来たら宮田も呼びだして構いませんか?」

今日、救助要請があるかもしれない?

そんな予測に振り向いた先、北西の空は白い。
それでも雲間は明るみだす、その晴れ予測にこそ案じられる空を山っ子は読んだ。

「モチロンだね、疑似好天っぽいから覚悟しときな?」



(to be continued)

【引用詩文:Jean Nicolas Arthur Rimbaud「Ô saisons, ô châteaux」より抜粋】

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚132

2014-06-24 01:20:04 | 雑談寓話
描いてるのは冬だったりすると時差がなんか面白いです、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚132

夏が終わって秋になると職場は忙しくなりだした。
また年末の繁忙期が来る、そんな季節柄になんとなく慌しくなる。

で、上司が倒れた、

「過労で半月ほど静養だってさ、ってワケで俺が課長になったらしい、」

なんて先輩から言われて、
尚更に忙しくなった先輩のサポートやら増えて、終電帰宅が増えてった、
そんな職場でも同僚御曹司クンは相変わらずメールやら昼ゴハンやらと続いていた、

From:御曹司クン
本文:おつかれー今日も終電だよ(顔文字泣顔)
   寝過ごしたら帰られなくなる、おまえも終電だろ?

Re :終電一本前だったよ、おやすみ、


From:御曹司クン
本文:今日はあんまり喋れなかったな(顔文字泣顔)明日は昼一緒したいな、

Re :課長と昼も楽しかったよ、笑

Re2:あのひとが課長ってなんかまだ馴染めない、でも良い意味で(顔文字笑顔)

Re3:おまえが上司になるより100倍馴染める、おやすみ、

Re4:そんなヒドイこと言うなよー俺の立場知ってるクセにヒドイ(顔文字泣顔)
   泣きながら寝てやる(顔文字怒顔)おやすみ、


なんてカンジのメール交わしながら11月、自分が異動になった、



とりあえずココで一旦切ります、続きあるんですが反応次第でラストにします、
Aesculapius「Saturnus13」校了しました、光一と雅樹@山上の社のシーンです。
Favonius「少年時譚18」読み直し校正します、第77話「結氷1」冒頭UPしました、
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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚131

2014-06-23 01:27:00 | 雑談寓話
ダウントン・アビーとルーズヴェルト・ゲームが最終回でした、どっちも好きなんですよね、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚131

「あのさ、この写真、一枚だけ俺にくれない?」

そう言って同僚御曹司クンが選んだのは、道の写真だった。

黄金に染まり始めた田圃の真ん中まっすぐ走る道、山と空。
もう暮れかけた斜めの光線、金色ふくんだような空気。
それだけが写った一枚は自分も気に入っていた。

「この景色すごい良いよなー…俺にくれない?大事にするから、」

どうしよっかな?
ちょっと考えて、まあいいかって思って言った。

「いいよ、笑」
「ほんと?やった、嬉しー大事にするなっ、」

ってワケであげた写真は御曹司クンのデスクに飾られた、

「お、良い写真だなーどうしたんだ?」
「アイツにもらったんですよ、笑顔」
「へえ、仲良いなー、笑」
「はいっ、笑顔」

なんて会話が聞えてしまったかなって思った、笑
で、定時になって花サンと飲み行った席、アルバム見せてたら言われた。

「ね、御曹司サンの机の写真ってトモさんのでしょ?笑」

やっぱ気づかれちゃうんだな?笑
こんな相変わらず勘良い友達に正直に笑った、

「解かる?笑」
「それは解かるでしょー御曹司サンすごい嬉しそうにしてるし、」

確かに嬉しそうだった、
だからちょっと困るな思ってたら笑われた、

「ホント御曹司サンに好かれてるよねー嫉妬とかすごそう、笑」

確かにそれは問題だ?
なんて思いながら升酒かナンカ呑みながら言ってみた、

「だったら花サン嫉妬されるんじゃない?笑」
「うーん、山とか一緒してるって知られたらそうかも?」
「だね、笑」
「もしかして話しちゃった?」
「山の話とかヨクするよっては言ったかも?笑」

ってカンジに話して呑んで、そしたら教えてくれた。

「ね、旅先から御曹司サンに写メールしてたでしょ?あれね、すごい嬉しそうに見せてくれたんだよ?」

そんなことになってたんだ?
こんな留守中の出来事に訊いてみた、

「花サンにわざわざ見せに来たワケ?笑」
「うん、合間の休憩に自販機のトコでよく会うの、そのとき見せてくれて、」

頷いて話してくれたことに、あれ?って思ったから訊いてみた、

「休憩がよく一緒になるんだ?笑」
「そうなの、タイミングが同じ感覚のヒトみたいだね?笑」

なんて返事に時おりの会話を思い出して、納得して、
で、ちょっと困ったことになる可能性を思った、

御曹司クンは花サンと仲良くしようとしている、それは悪いことじゃない、だけど付合おうってなったら?

そのとき御曹司クンは正直にカミングアウト出来るだろうか?
隠すって選択肢もあるかもしれない、でもソレしたら御曹司クンはホントの信頼関係を築けない。
なにより隠したところで花サンのことだから気づくだろう、そのとき彼女は受けとめきれるんだろか?

なんだか困ったことになりそう?そんなこと考えてたら花サンは笑った、

「なんかね、休憩で会う度にトモさんの話するんだよ?きっとトモさんの話したいから私に話しかけてくるんだろうね、笑」

それはソレで困ったことだよね?


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第76話「霜雪8」校了しました、Aesculapius「Saturnus13」加筆まだ倍くらいします。
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Short Scene Talk 初夏某日4―Side Story act.19

2014-06-22 23:00:00 | short scene talk SS
未来点景@或る初夏の日4
side story第76話+XX日後




Short Scene Talk 初夏某日4―Side Story act.19

「ん…(写真ちゃんと撮れてるね、良かった)」
「周太、風呂の掃除してきたよ?(笑顔)(手伝い久しぶりだな喜んでよ周太それで俺のこともっと好きになって風呂だし期待)」
「あ、英二そんなことしてきてくれたの?疲れてるのに…ありがとう、(久しぶりの休暇なのにお手伝いしてくれるなんて英二ったら)」
「周太こそ忙しいのに、いつも家事ありがとな?(笑顔)(いつ帰って来てもイイよな周太ってほんと良い嫁さんだよな萌×デレ)」
「ん…あの、えいじこそいつもおしごとおつかれさまです(照)(こういうのなんか照れちゃう)」
「ね、周太、こういう会話って夫婦っぽいな?(デレ笑顔)(こういうの幸せだなこのまま―R18妄想中略―風呂きれいにしたし)」
「え…照(そんなこといわれるともっとてれちゃうのに照困)」
「周太、この間の演習の写真か?(笑顔)(可愛いな照れてる周太すこし話してハードル下げてその後きっと萌×期待謀)」
「うん、たくさんあるから整理しようと思って…(興味持ってくれるの嬉しいなでも見られるのちょっと恥ずかしいな照)」
「きれいな場所だね、周太。巧く撮れてる(笑顔)(上手だよな周太ってなんでも褒め甲斐あるよな褒めてハードル下げて風呂に―妄想略)」
「…ひしゃたいがきれいだからきれいにとれるだけだから、照(褒めてくれるの嬉しいでも気恥ずかしくて僕ちょっと照)」
「周太が巧いんだよ、植物のこと大好きだから尚更に巧く撮れるんだろうな(笑顔)(ファインダー越し一生懸命に見つめるんだろなってなんかちょっと妬ける)」


英二と周太@自宅の近未来ワンシーンです、
でも(仮)なので小説だと変更あるかもしれません、笑
ふたり一緒のシーンがココンとこ無いのでちょっと書いてみました。

第76話「霜雪8」校了しました、Aesculapious「Saturnus13」加筆校正まだします。
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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚130

2014-06-22 00:56:15 | 雑談寓話
こんな↓とこ歩いてきたので眠いです、でもバナー押して貰ったしちょっと書きます、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚130

で、オーダー済ませたPM2:30過ぎの定食屋@休暇明け、
小さいけど分厚いアルバム1冊、同僚御曹司クンに渡してやった、

「ソレ今回の写真、見てイイよ?笑」
「え、」

え、良いの?ってカンジの貌がこっち見て、
すぐ嬉しそうに笑ってくれた。

「嬉しー見せてもらうなっ、」

言葉通り嬉しそうな顔で受けとって、
表紙を眺めてまた嬉しそうに訊いてきた、

「なあ、見せてくれるのってさ、おまえの歩いてるとこ見たいって俺が言ったから?」

だったら写メしてよ?おまえの歩いてるとこ俺も見たい。

そんなふう御曹司クンは言った、
コッチが夏季休暇で一週間休むって直前そう言っていた、
だから持ってきたんだけど、やっぱりイジメたくなって笑ってSった、

「単に自慢だよ?こんなイイトコ行って良いだろーってさ、笑」
「あーまたイジワル言うーほんとSだよな、拗×笑」

なんて拗ねて笑いながら表紙開いてくれて、御曹司クンの目が大きくなった、

「わー…ほんと良いところだな、すげーきれー…」

開いてくれた一頁目、山と空と尾花だった気がする。
陽に透けるススキの穂と午後の空、たぶんソンナ感じだった写真に教えてあげた、

「小烏瀬川ってトコだよ、水が綺麗で反射も良いんだよね、笑」
「きれいな川かーいいなー…これって寺?」
「だよ、河童の話がある、笑」
「かっぱ?って皿の水がどうたら言うやつ?」
「だよ、そこの狛犬は頭が皿みたいになってるんだよね、」
「へー面白いな、あ、これ祭やってんの?」
「そう、そこの奉納舞が面白いんだよね、動きがすごいよ?」
「ほんとだ、この写真の動きすごくね?あ、このオジイサンすごい良い貌で写ってる、」

なんてカンジの話してるうち膳が来て、
いったんアルバム置いて食べながら御曹司クンが訊いてきた、

「なー枚数すごい撮ってるよな?撮り方もなんか慣れてるけどカメラマン希望とか?」

まあ普通そう思うかもね?
そんな偶にある質問にありのまま答えた、

「資料用で撮ってるダケだよ、笑」
「資料って、なんの?」

すぐ訊いてくれるアタリ興味があるんだろうか?
でも答えるのもナントナク恥ずかしい気もして質問返した、笑

「なんだと思う?笑」
「う、質問返しかよーじゃあ食ってまた見る、」

なんて言って御曹司クンさっさと食事を済ませて、
またアルバム開くと訊いてきた、

「なあ、この寺ってさっきのと違うよな?」

言ってくれる通りさっきと違う、
建ってる町の場所も違う、そんな写真に笑って答えた、

「違うね、笑」
「やっぱそうだよな、どういう寺?」
「たぶん城砦としても作ったかなってカンジ?笑」
「う、そのヒントじゃ俺には難しいってば、もっと解りやすく、」

ってカンジの問答しながらアルバムはページ繰られていって、
全部のページを見終えると御曹司クンは訊いてきた、

「あのさ、この写真、一枚だけ俺にくれない?」



とりあえずココで一旦切ります、続きあるんですが反応次第でラストにします、
Aesculapius「Saturnus12」+Savant「Precipice2」校了です、第76話「霜雪8」加筆まだします。
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深夜に取り急ぎ、




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第76話 霜雪act.8-side story「陽はまた昇る」

2014-06-21 23:30:00 | 陽はまた昇るside story
under my breath 聲の沈黙



第76話 霜雪act.8-side story「陽はまた昇る」

今、君の声が聴きたい、けれど出てくれないのは何故?

「なんで…周太、」

名前そっと唇こぼれて吐息、ふっと白く融けてゆく。
凛と凍てついた空気に頬冷たい、当てる携帯電話も凍えてゆく。
視界ゆるやかに白が舞う、そのまま街路樹の影に積もって蒼くなる。
コール音ただ聴く足元さらさら雪ひたす、もうアスファルト白く染まらせ夜が滲む。

そんな道に想いだす、今日、都心は初雪だ。

「初雪か…、」

ひとりごと零れて、かちり、受話口の向こう切り替わる。
そして流れた留守番電話のガイダンスに英二は微笑んだ。

「周太、去年の初雪を憶えてる?…幸せだったよ、」

あの初雪がいちばん幸福の時かもしれない。

そんな想いに心臓がちり咬みつかれる、あの夜と今の落差が疼く。
あの初雪に約束いくつも重ねて想い交わした、けれど約束は今も憶えてくれている?

「…おやすみ周太、」

そっと留守番電話に微笑んで通話を切る。
切って、そうして繋がらなかった現実こぼれた吐息が白い。

「周太…もう要らないのか、俺は…」

こぼれた声が心臓また咬みつく、その痛みすら今愛おしい。
いま名前を呼んで鼓動ごと痛む、この痛覚に想い離れられないと確かめられる。
確かめて、唯それだけでも繋がれるのなら嬉しくて、嬉しい分だけ囚われる自覚が可笑しい。

「は…ほんと俺ってダメだな、」

本当に自分はダメだ?そんな自覚あらためて可笑しい。
こんな今を一昨年の自分は愚かだと笑うだろう、けれど本当は羨むだろう。
それほど求めたい相手になってしまった、それなのに声すら聴けない現実に雪踏む音ひとつ笑った。

「ほんとダメ男って貌になっちゃってるね、本日の主役のクセにさ?宮田巡査部長殿、」

澄んだテノールに振り向いた先、街燈の雪に笑ってくれる。
小雪舞わす黒髪に明るい瞳こちら見、可笑しそうに尋ねた。

「ホントしょぼくれた顔だねえ、また奥サンにフラれちゃった?」

かつり、

肚ひっかかって喉が詰まる、こんな感覚に途惑いだす。
こんな質問など珍しくない、いつもの揄いだ、そう解かるのに不機嫌な声が出た。

「またフラれたら面白いか?」

こんな声、自分から出るんだ?

そう思うほど低く抑えた声に驚かされる。
もうこんなに弱点になってしまった、そんな子供じみた感覚に雪白の顔が微笑んだ。

「なにソンナ拗ねてるワケ?馬鹿だねえ、」

拗ねている馬鹿だ、本当に自分はそうだろう。
そんなこと言われなくても分かっている、自覚あるからこそ抉られる。
こんな自分にまた苛立つ、その苛立ち積もり続けてしまった時間が口吐いた。

「2ヶ月、まともに話してない、」

会話した、そう想えたのはいつだったろう?
あの声に笑ってほしい、頷いてほしい、そんな願いにまた苛立ち声になる。

「電話に出ないことが増えてるんだよ、出てくれても話せない空気が強くなってさ?それが捨てられたって感じるんだよ、」

捨てられた、そう自分で言ってまた抉られる。
こんな自傷行為に笑いたくなって英二は口もと歪めた。

「捨てられたって俺は文句なんか言えない、光一がいちばん知ってるだろ?」

きっと傷つける、そう解っている。
それでも言ってしまった台詞に無垢の瞳が微笑んだ。

「朝、ナンテ言ったっけ?」

問いかけが街燈の雪を透かし言葉に見つめられる。
朝の自分が何を言ったのか?その記憶に喉もと締められるまま澄んだ声が続けた。

「俺はプライドが高いって解ってんだろ、アイツへの復讐と周太を幸せにする事がオマエの満足だ、ザイルパートナーとして信じるなら忘れろ、
周太も俺が救けるって信じろ、俺だけでアイツに克たないと意味がないってオマエ言ったね、あれから一日も経ってないってオマエ解ってるワケ?」

一日も経っていない、

そんな事実まっすぐ穿たれる、その時間に引っ叩かれる。
十二時間も経ってない?その現実に透ける声が悪戯っ子に笑った。

「また例のジイサン来るってさ、アイツ何のご用件だろうねえ?」

例のジイサン、アイツ、

そんな呼び方するのはこの男くらいだろう?
こんな言葉ひとつ囚われない自由は眩しくて、いま妬ましいまま英二は微笑んだ。

「黒木さんから連絡ですか?」
「明日の予定確認してくれたね、今ごろジイサンに返事してくれてるんじゃない?明日オイデクダサイってさ、」

テノール謳うような答えに見つめ返す。
街燈きらめく白に雪白の貌たじろがない、その眼差しに問いかけた。

「観碕は何の用だって言ってきた?」

用件なんて本当は解かっている、きっと確かめに来るのだろう?

―監視カメラを見たんだな、IDとパスワードも、

今日あの場所で「誰」が何をしたのか?
それを確かめに来るのだろう、その推定通りに上司は答えた。

「いつもと同じだよ、宮田巡査部長をサポートにご指名でね?」

さらり返された答えに「今日」の反応が見える。
もう神崎は動きだす、そう見つめるままテノールの声は続けた。

「蒔田さんにもナンカしら連絡あったんじゃない?俺はナンも解らないけどさ、」

解らない、そう言いながら知っている。
たぶん今この酒席でも蒔田を観察していたのだろう?
そんな言葉に見つめ返した額、ばちり白い指に弾かれた。

「拗ねてる暇ナンテ無いだろが?言った分だけ責任キッチリ取りな、明日もその先もね?」

暇なんて無い、責任をとれ。
そう言われた額じくり疼いて、けれど明日の現実に微笑んだ。

「八つ当たりしてごめん、明日は慎重に相手するよ、」
「きっちり宜しくね?」

からり笑ってスーツ姿が踵を返す。
ダークスーツの肩すこし雪染める、その背中が振り向き笑った。

「今もキッチリしなね?おまえの昇進祝いしてくれてんだからさ、顔も媚もキッチリ売っときな、奥サンの為にもね?」

こんな言い方は皮肉っぽいはず、けれど明るく澱まない。
そんな雪白の笑顔は雪の街燈に温かくて、ふっと解けた意固地に英二は笑った。

「ありがとう光一、ごめんな?」

本当にごめん、そう想っているずっと。

この相手には幾度を謝っても赦されない、そう本当は想っている。
本当は追いかけたくて憧れ止まない、それでも選ぶ唯ひとつの想いに自分は全て見つめている。
見つめるまま今すぐ伝えたい、けれど繋がらない電話に苛立って、そんな苛立ちごと諦められない本音にテノールが笑った。

「俺に謝ってる暇あったら席に戻りな?上司たちが祝ってくれてんのに中座しっぱなしなんてダメ男過ぎちゃうだろ、周太にも叱られるんじゃない?」

確かに叱られそうだ?
そんな納得すら鼓動また軋みながら微笑んだ。

「戻るよ、電話もう繋がらないだろうし、」
「ソンナ声聴きたいんならアレの音声はどうなワケ?」

雪のなか笑って訊いてくれる。
その笑顔にありのまま答えた。

「今は何も聴こえない、一旦帰宅したみたいだけど置いて出掛けたんじゃないか?家にいれば物音なにか聴こえるし、」

置いていかれた、なんて自分で言って哀しくなる。
こんな些細にすら落込む本音に朗らかなトーン笑ってくれた。

「お出かけしちゃった先が気になるんだね?」
「たぶん先輩の家だよ、同じ寮らしいから。だから気になってる、」

配属先の男の部屋にいる、そう解っている。
だからこそ妬かれる想いにザイルパートナーが笑った。

「奥サンの貞操観念はソウトウ潔癖だよ?だからオマエみたいな心配は要らないね、」

俺みたいな心配って?
そう聴きかけて、けれど答え解かるから笑った。

「確かに俺は俗人だよ、でも周太だって天使すぎるけどな?」
「おのろけだねえ、」

笑って流してくれる横顔は明朗なまま温かい。
そんな貌も一年前とは違う、そして自分も変ってしまった今に思案また廻らせる。
明日は「例のジイサン」と対峙する、蒔田の「連絡」も正体もう解っている、そして起きていく連鎖反応は自分が統べるだろう。

だって周太、君が俺を救ってくれたから。



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山岳点景:一万年の花

2014-06-21 23:00:00 | 写真:山岳点景
These waters, rolling from their mountain-springs



山岳点景:一万年の花

八島湿原@長野県に行ってきました、
天然記念物に指定される植生の豊かな湿原です。



レンゲツツジの朱色あざやかですが綿菅の花も今が盛り、
風ゆれる白い花穂と緑は涼やかで、初夏だなってカンジです。



この湿原は大きな湖に堆積物が降り積って出来ました。
その時間は一万年、そんな悠久に草木は育ち花は咲いています。



九輪草の群落に逢えました、
メインルートから少し逸れたポイントで古くから神域の場所です。
緑に紅色は映えて惹かれます、時季とポイントの偶然が合えば見られる花園です。

写真がいっぱいのブログトーナメント



そんなワケで加筆校正ほか遅れています、笑い
Savant「夏嶺の色2」校了しました、Aesculapiusはこれから読み直します。
それ終わったら第76話「霜雪8」久しぶりの英二ターンを加筆する予定です、

取り急ぎ、



【引用詩文:William Wordsworth「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey」】


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