「先従隗始」の授業 2
隗 曰
「古 之 君 有 以 千 金 使 涓 人 求 千 里 馬 者。
買 死 馬 骨 五 百 金 而 返。
君 怒。
涓 人 曰『死 馬 且 買 之。況 生 者 乎。馬 今 至 矣。』
不 期 年 千 里 馬 至 者 三。
今 王 必 欲 致 士 先 従 隗 始。
況 賢 於 隗 者 豈 遠 千 里 哉。」
於 是 昭 王 為 隗 改 築 宮 師 事 之。
於 是 士 争 趨 燕。
Q「古之君有以千金使涓人求千里馬者」とあるが、誰が誰にどうしたのか。
A「古之君」が「涓人」に「千里馬」を「千金」で「求」めさせた。
「有」
A 有レB。 … AにB有り。→AにはBがある。
「者」
~者「~もの・~こと」… ~もの・~こと〈体言化〉
~者、「~は」… ~は・~というものは〈主題の提示〉
使(二)A V(一)。 … AをしてVしむ。→AにVさせる。
以レA V … Aを以てVす→AでVする。
川 東 之 生 徒 有(下)好(二)波 瑠(一)者(上)。 … 川東の生徒に波瑠を好む者あり。
以(二)千 金(一)使(三)弟 買(二)波 瑠 之 写 真 集(一)。
… 千金を以て弟をして波瑠の写真集を買はしむ。
川 東 之 生 徒 有(下)以(二)千 金(一)使(三)弟 買(二)波 瑠 之 写 真 集 者(上)。
… 川東の生徒に千金を以て弟をして波瑠の写真集を買はしむる者有り。
Q「君怒」とあるが、なぜか。
A 一日に千里を走る名馬を買い求めさせた涓人が、五百金も使って死んだ馬の骨を買ってもどってきたから。
〈抑揚形〉
A 且 ―― 、況 B 乎。 … Aすら且つ ~ 、況んやBをや。
→ Aでさえ~(x)だ、ましたBはなおさら(x)だ。
(例)新 庄 且 活 躍、況 松 井 乎。(新庄すら且つ活躍す、況んや松井をや)
Q A、Bにあたる語は何か。
A A … 新庄 B … 松井
Q 松井選手はどうだ(x)と言いたいのか。
A 言うまでもなく活躍するということ。
新 庄 且 活 躍、況 松 井 乎。
∥
松 井 必 活 躍。
死 馬 且 買 之。況 生 者 乎。(死馬すら且つ之を買ふ。況んや生ける者をや)
Q A、Bにあたる語は何か。
A A … 死馬 B … 生者
Q 「生者」をどうする(x)と言いたいのか。
A 言うまでもなく高く買うということ。
死 馬 且 買 之、況 生 者 乎。
∥
生 者 必 買 之(と世間に伝わる)
↓
(その結果)名馬は自然に集まるでしょう
∥
馬今至矣
Q「今王必欲致士、先従隗始」の「始」とは、具体的にどうすることか。二字熟語を2つ抜き出して答えよ。
A 師事 厚幣
先従隗始 … まず、この私(隗)を厚遇してほしい
Q 抑揚形の基本形に直した次の文の空欄には何が入るか。
郭 隗(=A)且 厚 遇 之、況〈 B 〉乎。
A 賢於隗者
先 従 隗 始
∥
郭 隗 且 厚 遇 之、況 賢 於 隗 者 乎。
∥
賢 於 隗 者 必 厚 遇 之(と世間に伝わる)
↓
(その結果)賢者は自然に集まるでしょう
∥
賢 於 隗 者 豈 遠 千 里 哉
↓
賢 於 隗 者 不 遠 千 里、而 争 趨 燕
豈 V 哉。 … 豈にVせんや→ どうしてVしようか、いや決してVしない。
※ 豈 V 哉 = 不レV! 豈 不レV 哉 = V!
Q 「千里馬」「死馬骨」は、それぞれ何をたとえたのか。
A 千里馬 … 賢於隗者 死馬骨 … 郭隗
〈 前置詞 〉 S・「前」レ ~・V・O
自レ~・従レ~「~よリ」… ~より・~から
以レ~「~ヲもつテ」… ~によって・~を用いて・~で・~を
与レ~「~と」… ~と
為レ~「~ノためニ」… ~のために
対レ~「~ニたいシ」 … ~に
Q 「士争趨燕」とあるが、なぜか。
A 郭隗より優れていると自負する賢者たちは、自分ならもっと燕に厚遇されるはずだと思ったから。
Q「先従隗始」は、現在ではどういう意味か。
A 言い出した者から実行しなさい。
(現代語訳)
燕の人々は太子の平を立てて君主とした。これを昭王といった。(昭王は)戦死者を弔い、生存者を見舞い、へりくだった言葉遣いをし、多くの礼物を用意して、賢者を招聘しようとした。(しかし賢者が集まらなかったので)昭王は郭隗に問うて言う、「斉はわが国の混乱につけこんで、燕を攻め破った。私は燕が小国で、(斉に)報復するには力が十分でないことをよく承知している。(そこで)ぜひとも賢者を味方に得て、その人物と共に政治を謀り、先代の王の恥をすすぐことが、私の願いである。先生、それにふさわしい人物を推薦していただきたい。私自身その人物を師としてお仕えしたい。」と言った。
(郭)隗は言う、「昔、ある国の君主で、涓人に千金を持たせて、一日に千里を走る名馬を買いに行かせた者がおりました。(ところ涓人は)死んだ馬の骨を五百金で買って帰って来ました。君主は怒りました。涓人は言いました、『死んだ馬の骨でさえ買ったのです。まして生きている馬だったらなおさら高く買うに違いない(と世間の人々は思う)でしょう。千里の馬は、すぐにやって来ます』と。一年もたたないうちに、千里の馬が三頭もやって来ました。今、王が、ぜひとも賢者を招き寄せたいとお考えならば、まず、この隗からお始めください。まして私より賢い人は、どうして千里の道を遠いと思いましょうか。(いや、千里の道も遠しとせずにやって来るでしょう)」と。
そこで昭王は、隗のために新たに邸宅を造って郭隗に師事した。すると(それを聞いた)賢者たちは先を争うように燕に駆けつけた。