今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

後味悪い講演

2013年08月24日 | お仕事
多治見市で講演をしてきた。
夏の前に、”日本一暑い”多治見の暑気払いのため、
「恐い」体験をするイベントの1つとして、
「恐怖」を心理学的に解読する講演が計画された。

その講師として、私に白羽の矢が当たった理由は、
ネットで公開している拙稿「恐怖の現象学的心理学」が読まれたため。

こういってはなんだが、既存の恐怖研究では、
恐怖は”危険に対する反応”という生物学的視点の枠内に留まっているため、
夏の怪談で、恐さが楽しまれる現実を説明できない。
多治見市の担当者によれば、この問題に心理学的に言及しているのは、
ネットでは拙稿くらいしかないらしい。

なので、単なる恐怖反応の説明で終わらずに、
暑気払いとしての娯楽化された恐怖を説明することと相成った。

ところが、
残念なことに、今月に多治見は「暑さ日本一」の座からすべり落ちた。
多治見市民にとって、「暑さ」に対する自負は一気に冷めてしまったようだ。
そういうこともあってか、聴講の申込者は少なかった。

拙稿は一応学術論文なので、そのままを講演原稿にするわけにはいかない。
それに、せっかくの機会なので、危険でない恐怖、楽しまれる恐怖について、
より前進させた論究をしたい。
というわけで、講演で示すプレゼン原稿の作成はかなり試行錯誤した。

オープンキャンパスの模擬授業のように、何度も繰りかえした講演なら、
構成も話し方も一定の完成度で示せる。

ところが、今回のような初めての内容だと、直前まで試行錯誤し続けるので、
構成にも、話し方にも、未完成感が残り、いつも後味が悪い。
今回も、そうだった。

でもそのおかげで、恐怖についての考察を更に深める方向が見えたので、
それをもとに新たな論文「恐怖の現象学的心理学2」に着手することにした。
それが完成したら、より構成のしっかりした講演ができそうだ。
次回は満足する出来にしたい。