大学センター試験で大学が立ち入り禁止になる2日間は、後期授業も終了する頃なので、学生にとっては格好の連休となる。
今でも男女込みでの毎冬のスキー旅行は、学生たちにとって冬の重要なワクワクイベントであるようだ(スキーというよりスノボだろうが)。
私のいた大学は首都圏の外れにあったので、車の保有率が高く、またバスツアーの発着点からは遠いので、車に分乗して行ったものだ。
でも車だと夜通しの運転やチェーンの着脱など運転手に負荷がかかるので、 全員が楽しくしかも効率的に行くならバスツアーが正解といえる。
しかも学生にとっては値段は安いほどありがたい。
その分強行軍でも、体力的には我慢できる年代だ。
もともと首都圏からのスキーは夜行がデフォだった。
19歳の1年生にとっては大学生になって初の、そして21,22歳の4年生にとっては学生時代最後の楽しい思い出となるはずだった。
犠牲になった彼らと同じ学生を教え子にもつ身として、他人事ではない(実際、自分のゼミ生が被害にあった教授は現地に飛んでいる)。
それと同時に、 運転手側になると、定年後の生活の問題がオーバーラップする。
深夜のしかも慣れない大型バスの運転を入社1ヶ月でまかされる身。
格安料金をめぐって、そのツアーを企画する(だけの)旅行会社と、バスの運行(だけを)手掛けるバス会社との関係。
まずはこの分業が安全運行の責任を分散させる。
そして、運転手不足による需給関係の逼迫が、労働環境の改善につながるどころか、さらに悪化させている。
実際、私が利用する宿にも往復のバスがついたプランがあるが、その分の追加料金が異様に安い(鉄道や自家用車で行くのがバカらしくなるほど)。
それは、バス会社が得られる利益が少ないことを意味するのではないか。
そういう状況の乗物に、われわれは命を預けているのであり、それが代金に反映されている。
そして碓氷バイパス。
予定通り上信越道を通っていたら、今回のような悲劇は起きなかったろう。
つまり事故の直接の原因はこの場所にある。
入山峠から軽井沢方向への下りは、それまでの急勾配の上りにくらべると、たいしたことはない(少なくとも普通車では)。
だが、外灯がまったくなく、しかも上ってきてすぐ下りになるので、道に慣れない運転手にとっては、下りになっていることに気づかなかったのか。
道が下りになっているかどうかは、まずは視覚情報で判断するものだが、その手がかりがほとんどない状況だった。
ただ、だまっていても車は加速するので、遅くなってもやがて気づくはず。
ブレーキ痕がなかったというのは、運転手の心身状態の異状を示唆しているようで気になる(その場合なら、正規ルートでも事故は起きたかも)。
ただし、被害の最も直接的な要因は、シートベルトの有無であることは確かなはずだ。
つまり命を守る最も重要なすべは乗客に与えられていた。