1日3食というのは、人類にとって近代以降の単なる”慣習”でしかない。
それ以前は、2食が普通だっという。
すなわち、流通経済によって商品としての食料がいつでも入手できるようになり、生活が”通勤”的に定刻化した生活スタイルが3食化を導いた。
ところが身体運動が極端に減った現代人にとっては、1日に3回(以後、3回食)だと”過多”になってしまうのは、理屈で判るはず。
実際、医師の間にも、1日2食(以後、2回食)を推奨し、もちろん本人も実践している人が増えてきている。
私自身、昔10㎏の減量をした後は、ずっと2回食で通し、それ以後リバウンドはしない(そもそもの10kgの増量が3回食のせいだった)。
健康を語る医師の本を読んでいて、いまだに「1日3食しっかりとりましょう」と3回食について何の疑念もいだかず信じきっている文に接するとがっかりする。
なぜ専門家なのに2回食を否定するのか不思議だったが、ある医師の健康本でその否定の論理がわかった。
少なくとも3回食派の人は2回食を習慣として実践していないから、2回食の”悪影響”を体験した結果ではない。
どうやら、「力士は体重を増やすためにあえて2回食にしている」、という言い伝えが論拠になっているようだ。
すなわち3回食より2回食の方が太るというのだ。
この奇妙な理屈を信じ込む論拠は何か。
まず、食事回数が減ったことで、身体が飢餓と感じ、吸収率が上昇するという理屈。
これがもし事実なら、われわれは人類の食糧事情を改善するために全員2回食にすべきだ。
2回食こそが身体にとっても最適で、不要な殺生を減らし、食料分配を最適化する誠に正義な理屈になる。
ただ、残念ながら、仮に吸収率が上昇しても、それはほんの一時的で、身体が2回食に慣れれ(常態化すれ)ば、吸収率は平常に戻るだろう。
人間の身体ってそんなものだ。
次に、2回食にすると空腹感が強くなり、結果的には余計に食べてしまうという理屈。
これが力士の話の論拠として使われている。
では本当にそうなるのか。
それは3回食を信じきっていた頃の私自身を振り返れば理解できる。
その頃の私は、たとえば仕事や交通事情で昼食を摂り損ねた場合、それがとても深刻な欠損と感じて、
午後に必死になってその欠損を取り戻そうとする。
不幸にもそれがかなわなかった場合、 夕食でなんとかして昼食の欠損分も補おうとする。
そういう強迫観念こそがこの理屈を支えている。
すなわち、2回食で太る理由があるとすれば、この3回食固有の強迫観念にほかならない。
そもそも世の慣習に反して2回食をあえて選択した人は、一日当りの摂取量を2/3に減らすことを目的にしているのだから、
すなわち上の強迫観念から自由になっているのだから、1回減った分を余計に取り戻すという3回食派の人の行動様式を取るわけがないのだ。
ここが誤解のポイントだ。
むしろ、実際に2回食に慣れると、日常が空腹感とともに在るのでそれに慣れてしまい、非日常的な”満腹”を追究する気持ちが無くなる。
非満腹が常態化すると、俗に言う”胃が小さくなる”ようで、胃の膨満感に敏感になり、少々の量でも”腹”的に満足できるようになる。
だから1回の食事量はかえって減りこそすれ、増えることは決してない。
2回食を実践している人は、実際にはこのような行動様式なのだが、
それが3回食のままでいる人には理解できていないのだ。