今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

ニューロフィードバックによる瞑想訓練

2020年08月02日 | 心理学

Museというニューロフィードバック装置を使って、瞑想をしている。

言い換えると、ただ漫然と瞑想しているだけだと、自分の状態が本当に瞑想レベルに達しているのか、自己満足で瞑想した気になっているのかが素人にはわからない。
そこで、昔はバイオフィードバックと言われていた、脳波を使って状態をフィードバックする装置の1つ、Museをネットで購入した。

私自身、瞑想(坐禅)は学生時代からやっていて、
心理学の研究世界に入ってからは、バイオフィードバックに興味をもち、
たまたま非常勤先(当時は常勤職でなかった)の大学の心理学の先生が、パソコン(NECのPC9801!)を使ったバイオフィードバック装置を購入したので(日本製の商品名は失念)、思いっきりそれを使わせてもらった。

当時は、α波ブームで、とにかく脳波をα波にすればいいということで、α波の発信源である後頭部にセンサーをつけて、閉眼してα波がでると、カッコーの声がするものだった(結果にβ波などの出現比率が集計される)。
これを使って、まずは任意にα波を出すことをマスターした。

その後、今の大学に移り、同時にMacユーザーになっていた私は、 IBVAというMac専用の脳波装置を買った。
これは無線でパソコンにデータを飛ばして、脳波を音として再生(脳波音楽!)することが可能で、
またδ(デルタ)波からβ波まで、三次元でリアルタイム表示できるものだ(こういう優れた表示は、当時はMacでしか実現できなかった)。
ただ、センサーが前額部なので、α波優位状態は出にくくなってしまう。
その後オプションで、後頭部のセンサーや左右両脳を別個に取るセンサーも購入した。

これらは当時としては画期的に安価で気軽な脳波装置なのだが(それまでは脳波計は高額な医療機器)、
パソコンの前に座って、頭を締めつけるヘッドバンドを装着しなくては測定できないので、毎日の自分の瞑想訓練に使う気にはなれなかった。

またその後しばらくは、個人的に、瞑想にも脳波にも関心がうすれていった。

21世紀になって、ふたたび脳波が簡単に取れる装置が発売され、たとえば、MindWaveという装置は、自分の脳波をコントロールして、目の前の機器を脳波で動かすことができ、心理学の授業でデモンストレーションに使った。
この頃になると、脳波センサーもヘッドホン型に、またスマホアプリになるので、場所を選ばないで使えるようになる。
ただ、IBVAもMindWaveもアメリカ製。

そんな中、私が気に入ったのはMuseという装置。
これは前額部だけでなく側頭部にも、しかもそれぞれ左右の脳別にセンサーがある。
装置は耳掛け式で、簡単で違和感もない。
さらにトレーニング内容がきめ細かい。
一番すごいのは、従来はα波のような特定の脳波の優位性だけをフィードバックする単純なものだったが、
この装置は、仏僧などの深い瞑想状態のデータをもとに研究した結果にもとづき、複数の脳波と呼吸の複合パターンをフィードバックの対象としていること。

実は、仏僧による、すなわち瞑想の熟達者による日本の脳波研究で、瞑想状態は単純なα波優位ではなく、たとえば前額部からはθ(シータ)波が出ていることが以前からわかっていた。

さらに最近では、β波(通常のシステム2状態)より周波数が高い、γ(ガンマ)波が発見され、しかもそれは別の瞑想状態で頻発することがわかった。
β波は通常の思考中の脳波なので、γ波はそれより脳を使っている状態として、精神的ストレスの指標と推定されていた。

つまり、瞑想状態は、特定の脳波が優位という単純なものではなく、θ波からγ波までの複合的状態の1パターンなわけである。
それに加えて、呼吸がとても静かになり、おおげさに言えば停止状態に近づく(これは気功訓練でも指摘されている)。

以上の最新の研究成果にもとづく、複雑なアルゴリズムによるフィードバック装置をアメリカから購入して(日本のAmazonでは不可。3万円弱)、iOSの専用アプリもダウンロードした。

瞑想は、習慣づかないとなかなか続かないものだが、気功訓練(練気)から瞑想にも接近して、続けるようになれた。

Museでは、心(脳)の状態を、「アクティブ」(活動)、「ニュートラル」(安静)、「カーム」(瞑想)の3種類に分けている。
以前だったら、活動=β波優位と安静=α波優位の二分割だったろう。

そして、カームになると得点が加算され、また一定時間以上カームが続くと、鳥の声が鳴ってフォードバックされる。

その音声フィードバックのおかげで、鳥が鳴いている時の心の状態を維持すればいいのだ(瞑想は閉眼が基本なので、フィードバックには音声が必要)。

このMuseを使って瞑想を続けた結果、今では、セッション中は、鳥が鳴きぱなしになり、トレーニングプログラムの最後までクリアした。

さらに、開眼(阿字観)でもカーム状態を維持できることがわかった。

というわけで、一応客観的な基準での”瞑想マスター”として、瞑想についても記事にしていきたい。

ちなみに、現在は、Museのバージョンアップ版、Muse2、睡眠用のMuseSが発売されている。→Museのサイト(英語)