うちの近くの大きな通りに「ユズリハ」の並木があります。珍しい並木です。今は寒くて、さすがに葉を縮めて元気がない。そのユズリハ、正月飾りに用いる地方があります。20センチほどもある細長い葉を1枚、注連飾り(しめかざり)にそえるのである。
なぜ、この葉を使うのかというと、この木の特性が関係している。ユズリハは常緑樹でありながら、春先に新芽が出てくると、古い葉が落ちることから、「譲葉」とも書きます。つまり、新しいものが生まれ育ってくるまで、待ち続け、時期がきたら潔く譲ることから、年末年始、世代の断絶を忌避する願いごととしてこの葉を使用するのである。
日本に限らず、植物の特性に関係付けて祈りごとをするのは世界共通です。クリスマスのリースに使用するヒイラギ(日本のヒイラギとは違うらしい)、とかモミの木などはその代表。我が国では、便所のナンテン、お墓のシキミ、神社のサカキ、節分のヒイラギやトベラなど。そのほか、たくさんあるようです。人間と植物の関係は底深いものなのですが、今ではそんな風習はまったくといっていいほど衰退しましたが。【彬】