峰野裕二郎ブログ

私の在り方を問う

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おねえさん

2021年10月17日 | 移住
昨日、私たち夫婦が暮らす地区で秋祭りを行った。
普通、「秋祭りが行われた」と言うところだろうが、規模の小さい私たちの地区のような自治会では、ほとんどの事柄が「自分ごと」だ。

それに異を唱える声を聞いたことがない。また、文句や愚痴をこぼす人もいないようだ。

作業中、その合間、みんな笑顔で、常に冗談が飛び交っている。私たち新参者にも、誰かれなく声を掛けてくれる。
とにかく、空気が穏やかで明るい。

今年から、神事を執り行う「当屋」の番を、地区を2つに分けて交互に行っている。今年、私たちは、その当屋に当たっていた。

この日、準備のため、当屋は午前8時に神社に集合となっていた。
その20分ほど前、女房どのと一緒に軽トラで家を出た。女性陣は、いったん集会所に集まることになっていると言うので、女房どのを集会所前で降ろし、神社に向かった。

神社に着き、軽トラから降りると、地区で一番若いご夫婦の奥さんであるSさんから「おねえさん、集会所に行かれました?」と声を掛けられた。
「おねえさん」というのは、どうやら女房どのを指しているようだ。
「ええ、いったん集会所に集まると言ってましたよ」と答えると、やってしまったという顔で「やっぱり集会所でしたか」と、彼女は笑顔で集会所の方に歩いて行った。

帰宅後、女房どのにそのことを話すと、彼女より年長である私たちのことをSさんは「おねえさん」「おにいさん」と呼んでくれているという。
女房どのは、彼女を「Sちゃん」と呼ぶ。そして、Sちゃんが可愛らしいと言う。

私には弟と妹がいる。彼らは私を「あにき」と呼ぶ。したがって「おにいさん」なんて、今まで誰にも1度も呼ばれたことはなかった。(追記:弟の妻と妹の夫は、私を「おにいさん」と呼んでくれるのを忘れていた)
「おにいさん」、なんて響のお良い言葉だろう。

午後4時半に当屋は再び神社に集合。近隣の神社から宮司を招き、午後5時から神事を執り行った。

その後、当屋以外のみなさんが三々五々神社に集まって来られた。
その中のお1人、Rさんが最後の準備に勤しんでいる私を呼び止められた。

「〇〇をお読みになられましたか」とおっしゃる。どうやら本のタイトルらしい。
「いや、読んでいません」と答えると、背広のポケットからコピーされた数枚の紙を取り出し、「これ、その冒頭の部分です。読んでみてください」と、文庫本をコピーした数枚の紙を差し出された。

Rさんにお会いすると、何故だか、時々、文学の話を振ってこられる。
何故、文学の話を振ってこられるのかは分からないが、少なくとも私に親愛の情を寄せてくださっているのは間違いなさそうだ。
「読ませていただきます」と、その折りたたまれたコピー用紙を受け取った。

皆さんがお揃いになった後、宮司からお祓いを受け、この日は解散となった。

この地区で良かった。しみじみ、そう思っている。
コメント
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