不思議な将棋ワールドを再び。
きょうは、和服の話。
情報通信技術の飛躍的な進歩のおかげで、将棋界独特の面白さに触れる機会が格段に増えた。
一昨日まで行われていた第34期竜王戦七番勝負第2局目、竜王戦中継サイトの中に「中継ブログ」というコーナーがある。
対局場所の様子から始まり、対局前日の検分の様子(タイトル戦独特のもので慣例になっているが、これもまた面白い話がある)、前夜祭の様子、対局開始の様子、午前のおやつの紹介、昼食の紹介、午後のおやつの紹介、控室の様子、封じ手の紹介などなどから局面の解説まで、写真と文章で細かくルポされる。
タイトル戦の番勝負では、対局者はもちろん立会人も和服を着用するのが慣わしとなっている。
ところが、最近、掟破りに出る棋士が現れた。現タイトルホルダー・29歳の永瀬拓矢王座だ。対局の相手が和服でも普通にスーツ姿で通している。
将棋盤を挟んで和服姿の人間とスーツ姿の人間が向かい合う絵面は強烈だ。和服姿の棋士が滑稽にさえ映る。
かつて、そのような例がなかったわけではないようだが、私の知る限り、近年では藤井三冠がタイトルに初めて挑戦した番勝負の最初の対局時くらいなものだ。
当時、彼は17歳で和服を着て将棋を指すにはいろいろと不安があったのだと思う。第2局目からは和服を着用している。
棋士にはユニークな人が少なくないが、永瀬王座もその1人だ。
対局に際してスポーツドリンクを20本持ち込むとか、おやつにとタイトル戦で大量23.5本のバナナを注文したなどのエピソードに事欠かない。
和服を着ない理由について「和服でなくても気合は入るものだと思っています。和服は技量が足りないと脱げてしまいますが、スーツはそういったこともありません」と語っているとのこと。
ところで、今回の竜王戦の立会人は関西の重鎮・淡路仁成九段。
その淡路九段、中継ブログの写真では、対局場に現れるときは和服姿だが、将棋ファンを前にしての大盤解説会場ではスーツ姿だ。
やはり、普段着付けていない和服は何かと大変なのか。
しかし、そうしてまで和服を着用するのには、多くの棋士にとって、そこに何かがあるのだろう。