原題:西幹道 英題:THE WESTERN TRUNK LINE
’07年東京国際映画祭審査員特別賞作。
文革後の地方都市・西幹道が舞台。
大都会・北京から隣へ越してきた眩しいほどの少女と彼女への思慕と憧憬の思いを募らせる齢の離れた兄弟を巡る物語。
荒廃から復興しはじめた工場の様子、貨物列車で通う通勤・通学の人々、唯一の娯楽の演芸舞台を見入る老若男女、壊れたトランジスタ・ラジオから聴こえるモスクワ放送。62年生まれのリー・チーシアンが描いた彼が16歳の時の中国の姿である。
煙突から出る灰色の煙、乾いた大地、枯れ木の並木。冬の映像が美しい。
この撮影は、監督とは北京電映大学時代の同級生ワン・ユー。
ともに相談し「人物を捉えるには、客観的に風景を見て、ロングショットがいいだろうという話になった。美しいシーンを撮ろうと思って撮ったわけではない」という。
母親が激しい小言とともに息子の頭を掌で叩くシーンが出てくる。昔の日本でもそうだった。実に懐かしい思いがするが、今の日本で、観る人はどう受け取るだろうか。
兄弟の兄が、少女の後を追うシーンが幾度となくある。胸の慕いを表しているのだろうが、いまでは殆どストーカー。工場から銅線を盗むシーンも戴けない。これらは観る人に違和感を覚えさせることだろう。
ちなみに1978年は文革で破壊された教育制度が、小平によって再開された年で、駐日本国大使からこのほど台湾弁公室主任に転出した王毅氏は、この年北京第二外語学院に入学している。復興1期性だ。
ユーロスペース2 80点