原題:IN THE VALLEY OF ELAH
好きな俳優トミー・リー・ジョーンズの映画となれば見逃すわけにはいかない。ベテラン女優スーザン・サランドンとの夫婦役。以前『依頼人』で共演した二人。ともに抑制した演技で息もぴったり。
イラクから帰還し、行方不明になった息子を探す退役軍人の父。捜査の進展につれて、息子の素顔や戦争の狂気が明らかになってくる。
監督はアカデミー賞受賞の「ミリオンダラー・ベイビー」や「父親達の星条旗」のシナリオのポール・ハギス。声高に反戦を発しはしない。戦争の正当性をフォーカスするのではなく、その戦争によって引き起こされる現実に目を向ける。
当初、このハンク・ディアフィールド役はクリント・イーストウッドだったが、クリント自身が適役はT.L.ジョ-ンズといったと言う。文字通り彼のための映画だ。
初老のおじさん俳優は、日本でコーヒーのCMで親しまれている。ケビン・コスナーやブラッド・ピッドならともかく、よく起用したものだと思ったが、大成功だ。BOSSのスタッフの炯眼と判断に脱帽である。ファンとしては気分がいい。
もっとも『ノーカントリー』『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』など近年の話題作に出ずっぱり。アメリカでもファンが多いコンスタンスに稼げる役者なのだろう。
シャリーズ・セロン気に入った。役どころもあるが、控えめだが芯があって知的でスレンダー。
差別の職場にありながら、世間の追い風を受けてその差別を声高に叫んでもいいのに、やらない。耐えながら少しづつ状況を変えるしたたかさも持つ。日本的なんだ。いいねえ。
最後に、このタイトルは戴けない。これでは、一兵士がつかんだ軍の秘密を告発するストーリーと誰もが思うでしょ。
ブログ主ならこうつける。『父、 ハンク・ディアフィールド』
トミー・リーとスーザンとブログ主は同じ齢だった。今回初めて知った。参ったあ!!
95点。