今話題のアルバムである。
レコード・デビュー前は、クラブでジャズも歌っていた八代亜紀。いわゆる歌謡曲歌手の中では、フィーリング、節回し、発声など、最もジャズに近かろうということは容易に想像できる。
よく考えた選曲、コンボ、ストリングスと多彩な演奏形態を試みるなど、新境地への意気込みが伝わってくる。業界紙や一般紙誌へのプロモーション記事も多い。
が、必ずしも成功とは言えないのでは無かろうか。
高音で裏返る彼女の声帯は演歌には合っても、果たしてジャズにはどうか。小刻みのヴァイブレーションも、不向きなような気がする。
1、フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
2、クライ・ミー・ア・リヴァー
3、ジャニー・ギター
4、五木の子守唄~いそしぎ
5、サマー・タイム
6、枯葉
7、スウェイ
8、私は泣いています
9、ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー
10、再会
11、ただそれだけのこと
12、虹の彼方に
バッキングはとてもいい演奏をしている。ギターの布川(「サマー・タイム」)、サックスの岡などは特に。彼らによってジャズらしくなっているといったら失礼か。
丁度今、美空ひばりの歌うジャズがテレビCMで流れているが、一聴、キャリアの差は歴然。その領域に到達するためには、小ホールやライブで、どんどん歌ったらいい。
昨今、邦人のビッグ・ネームのジャズ歌手はいない。ジャズはジャリには似合わない。大人の音楽。耳が肥えている団塊やその後に続く世代のために日本を代表するジャズ歌手に変貌して欲しい。