著者 佐々木 譲
出版 光文社文庫
549頁
定価 950円
抽斗の整理中、思いがけずに図書券が出てきた。計3000円分。
近年、本はアマゾンで廉価の中古本を求めている。本屋で選ぶのが苦痛になってきたのと、ハードカヴァーは高いのがその理由。しかし、図書券は本屋まで行かねばならない。そこで、前日、新聞広告で見た佐々木嬢のこの本。コピーが巧みだったのか、著者の新分野の意欲作と思い込み、久しぶりの新刊定価購入に至った。
ところが、実は、講談社が99年にハードカヴァー03年に文庫で出していた。池上冬樹の解説で知る。
これまで読んできた、第二次大戦物や警察小説とは異なった世界ではあるが、佐々木節は快調。テンポがよく人物描写も判り易い。配置もぬかりない。何より会話シーンは映画を観ているようだ。
とりわけ、商社マンのなれの果てのガラス工場社長・安積啓二郎とガラス工芸家・野見山透子、二人の描写は、読む者(私だけかしら)に、憧憬と羨望を抱かせて止まない。この部分、息を詰めて読んでいたと言ったら言い過ぎか。