著者 佐々木譲
出版 新潮文庫
※ 画像はgoogle photoから。なので今の新刊ではありません。悪しからず。
警察物というと、警察組織に居られなくなった一匹狼の捜査員の権力との格闘や、巨悪に迫った捜査が、巨大な手によって絡めとられてしまう理不尽の告発とか、内通者一味との非情な暴力の応酬などが多いのではないか。
この作品は、それらと趣を異にしている。犯人を追う一線の刑事の生態が細かく描かれている。
警視庁捜査一課と所轄蒲田署の刑事。ともに二人組。どちらもベテランと新人の組み合わせだ。証言集め、アリバイの確認、時系列の調整、捜査報告と情報交換、地道な地どり。
捜査の進展とは、この足で稼ぐ労作業とその蓄積の上に閃く感を辿ることというのがよく分かる。
500頁以降の展開と予想外の犯人には意外だった。佐々木譲らしくないと言ったら失礼か。