著 者 歌田 年
出版社 宝島社
315頁
2019年第18回『このミステリーがすごい!』大賞受賞。
紙の業界で普通に働く一市民が、彼が持つ紙の蘊蓄から事件に首を突っ込みはじめ、捜査当局をリードする活躍を描いた異色の探偵小説。登場人物のキャラクターの造形がユニーク。
タイトルの故からでしょう、この本自体が相当入れ込んだ作り方をされている。
表紙の見返しにこの本に使用している用紙の説明書きがある。本の構成とその名称が描かれており、読者には目が鱗。これが実にいい。
1頁から320頁に至る本文には4種類の用紙が使われている。"アルトクリームマックス 四六版 52.5kg"、"メヌエットライトC 四六版 55kg、・・・という具合の紹介があり、「風合いをお楽しみください」とある。その区別など、さすっても透かしても素人には区別はつかない。
相当の本好きでも本の成り立ちには、ほとんど関心がない。こうして改めて教えられること自体がかなりのミステリアス。なるほどと合点。
CDディスクが挟まれている、頁を括ると中の絵が立ち上がってくる、景品が付いている、袋とじがある、など本にも種々の創意工夫がある。この本もそうした営業的な視点もあろうが、なかなか味のある趣向である。
著者は、プラモデルについても知識に精通しておりオタクレベルと推察する。或いは車もかな。
物語の結末に神奈川県の平塚市が登場する。ブログ主が22歳まで過ごした地である。記憶に残る一冊になった。
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